行政が勧める「夫婦で農業」は必須ではない

農業を始めたいと思ったら必ず行かなければならないのが行政機関。
農地を借りるときや就農支援資金などの融資を受けるときには相談に行く必要があります。
就農希望地を管轄する農林公社や農林水産公社のようなところに回されることもあるでしょう。
けっこうたらい回しにされることは覚悟しておいてください。
縦割り行政の悪いところです。
そうやってたらい回しにされながら、各所で必ずといっていいほど聞かれる質問があります。

結婚はしていますか?

もしくはその予定はありますか?

というような質問です。
これはべつにあなたの私生活について興味があるわけではありません。
彼らにとってあなたは単なる一市民、市民サービスを受けにきたお客様です。
聞きたいのは、一緒に働いてくれる無償労働がありますか、ということだけ。

クレイアート農家
農業は夫婦が協力するのが基本です。
こう考えているんです。
農作業を二人でやったら効率がいいし速いですよね。
二人でやらないとうまくできないことも多いですよね。
というようなことを口にされます。
そして、口には出しませんが
夫婦二人で汗水たらしてがんばらないと生活できるような稼ぎにはなりませんよ。
農業で生計を立てていくには夫婦でやらないとムリですよ。
というような空気を醸し出します。

たしかにそういう側面もあると思います。
行政の方はそういった農家をたくさん知っているので、農業は夫婦でやるもんだ発言が当たり前にされているのでしょう。
農林水産省の統計資料なども、だいたいが農業者単位ではなく農家単位で統計がとられているので明らかに家族農業がベースにあります。

でもこれっておかしくありませんか?
仮に主軸となる農業者が夫だとして、妻の労働をタダだと考えているということですよね。
ひとりでやれる面積には限りがあるし労働時間には限界があるから、夫婦で力を合わせて働けばそれなりに生産量が上がって売り上げも確保できるだろう、という考えです。
えっ?
妻の労働ってタダですか?
本当にそんなふうに考えていいんですか?

 

家族労働はタダだという考え方

実際はタダです。
経理上は毎月●万円を支給します、ということになっていたとしても実際に支払ったお金が家族内でまわっているだけです。
本当に妻が給料として受け取って懐に入れてしまわないかぎりは、タダで働いているのと同じことです。
だから生産量を上げるために夫婦で働けば、ひとりで働いたよりも確実に収入をあげることができます。
そういう考え方。
これっておかしいですよね。
まあ夫婦で仲良く働くのはいいことですし、経理上は給料を支払ったことにしてしまうのも労働の対価を妻がどう使おうが勝手なので問題ありません。
でも、タダの労働力だからという考えで働かせるのはよくないです。
つまり考え方がおかしい。
タダの労働力を使わなければ成り立たない農業って、そんなのは経営的におかしいです。
夫婦の労働をしっかりと二人分の労働として計上し、その労働時間に見合うだけが対価が得られるように収益を上げていく。
それが健全な農業経営です。
最初からタダの労働をあてにした経営をしているから効率が上がらない、ということにもなりかねない危険な考え方です。

お互いの同意のもとで夫婦でやっていきたいのであれば、それは素晴らしいことです。
夫婦で力を合わせて農産物を育てていくのは楽しいと思います。
ですが生活の糧として二人で働くのであれば、二人分の稼ぎが出るように仕事をしていくべきです。
お互いが一人前の労働力として協力していくべきです。
だって農業以外の他の仕事をすれば、家業を手伝うよりもアルバイトのほうが稼げたよなんてことが普通にあり得ますから。
時給にして1000円にも満たない農業をやっているくらいならアルバイトのほうがよほど生活の糧になります。
そうならないために、夫婦でやりたいなら労働をタダだと考えないで経営努力をしましょう。

 

行政のおせっかいはサラリと流す

そもそも、夫婦で農業をやらなければならない理由はありません。
二人でやったら効率のよい作業があることは事実ですが、そんな作業は本当に限られます。
機械を導入するなりちょっと工夫するなり改善できることがほとんどです。
基本的には一人で農作業をしていても不便を感じることはありません。
不便を感じるのであれば、そこは改善するべき点だと考えて軌道修正していくだけです。
二人でやったほうが速いというのは家族労働をタダだと考えている典型的な意見ですので、行政でもし「夫婦でやるのが基本です」と言われたら

家族労働はタダではありません
ひとりでもやれるように作業を組み立てていきます

と言ってやりましょう。

 

結婚をしていなければ農業を始められないわけではありません。
結婚の予定がなければ農業ができないわけではありません。
家族の同意や協力はもちろん必要なものですが、それは一緒に働いてもらうというものではなく心理的に支えてもらうという性質のものです。
ひとり身であっても農業はできます。
起業して不安定な経営をすることを考えればむしろ一人のほうがいいくらいです。

重要なのは家族労働はタダではないという考え方。
考え方だけです。
夫婦でやりたいならやればいいし、ひとりでやりたいなら一人でできるように作業を組み立てればいい。
夫婦でやらなければ農家じゃない、という風潮は無視していきましょう。

 

 

多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?

たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。

このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。

それは・・・

有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?

有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。

「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」

と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、

有機農業はちゃんと稼げる

ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。

ただし、条件があります。
それは・・・

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