開業資金、貯めてますか?
というのは農地を借りようとして行政に行ってよく聞かれる質問ですが、あえて聞かれるまでもなく開業資金は必要です。
ようするに貯金はあるのかという話ですが、新しく事業を立ち上げようとしているのに貯金がないのは無謀以外のなにものでもありません。
インターネットビジネスを始めるならまだしも、たいていの新規事業では開業資金は大なり小なりかかります。
農業も同じこと。
新規就農しようと思ったらお金がかかるんです。
今回は。
スタート時に揃えていく資材について書いていきます。
初期の開業資金はおもに資材を購入するためのものですが、資材の選びかたにはちょっとしたコツがあるんです。
これを知らないと、買ったけど使わなかった・・・という悲惨な資材が倉庫にあふれることになります。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
農業生産には多くの資材が使われている
(画像参照:ホームセンタームサシ)
農業をやるには様々な道具が必要です。
身一つで出来るようなものではなく、多くの資材を駆使しながら効率よく生産していくことで農業としての利益を上げていきます。
農業で道具というと、クワなどの農具やトラクターなどの耕作機械を思い浮かべる方が多いと思いますが、商売として農業をやっていくにはそれ以外にも多くの資材が必要です
・耕すため、畝を立てるための機械 トラクターや耕運機、管理機
・草を刈るための機械 刈払機
・肥料や農薬を散布するための機械 動力噴霧器、肥料散布機
・農具全般 クワやスコップ、鎌など
・作物を支えるための支柱
・防草や保温・保湿を目的とするビニール資材 ビニールマルチ
・ビニールトンネルのための資材 ビニール、アーチ支柱、紐、杭など
・防虫や保温のためのネット類
・農業といえばコレ 軽トラック
・肥料類
・収穫したものを入れるカゴ、コンテナ
・出荷に関わる資材 ダンボール、規格袋、シール類など
規模の大小に関わらず、農業をやるには多種類の道具・資材が必要です。
上記のものをすべて揃えなければ農業ができないというわけじゃありませんが、効率よく生産・販売をしていくにはある程度は揃えておくべきだと思います。
そして。
経営規模が大きくなればなるほど、たくさんの資材が必要になり、機械が大型化していきます。
それらを収納しておく倉庫もどんどん大きくなります。
新規就農して新しく事業を興すということは、かかえるものが増えていくということを覚えておいてください。
たくさんの資材を使って生産活動が行われるという事実を知ってください。
とはいえ。
最初からすべて完璧に揃えられる人は多くありません。
お金がないとか、置き場所がないとか。
理由はさまざまですが必要に応じて、欲しいと感じたものからすこしずつ揃えていけばいいと思います。
様々な要因によって必要な資材は異なる
ではここで。
新規就農で資材を揃えていくにあたって考えなければならないことがあります。
ひとくちに資材を揃えるといっても、どれを選んだらいいのかって迷いませんか?
支柱ひとつとっても、太さや長さには種類があります。
太さ8mm、11mm、16mm、20mm
長さ90cm、120cm、150cm、180cm、210cm
耕耘機ひとつとっても、耕耘幅や馬力にはたくさんのバリエーションがあります。
それらのなかから自分に合ったものを、どのように選んでいったらいいのか。
今はそこまで考えられなくても新規就農するために準備を進めていくと必ずぶちあたる問題です。
結論を言ってしまえば
経験しなければ分からない
という身も蓋もない悲しい答えになります。
とにかくやってみなければ分かりません。
どれかひとつを実際に使ってみてそれが合っているのか変えたほうがいいのか、そこでようやく判断できるものなんです。
なぜやってみないと分からないのか。
というと、単純に誰かの真似をすればいいというものではなく自分が抱えている状況・条件によって使用すべき資材が変わってくるからです。
下記に3点ほど例を挙げてみます。
■環境によって資材が変わる
農業は土地に根付いた産業です。
土地を利用して、そこにある土を利用して作物を育てます。
その土がもともと持っている性質が変われば、栽培の仕方が変わってくることは容易に想像できますよね。
たとえば陶磁器の産地として知られる愛知県瀬戸市もしくは岐阜県多治見市などは、陶磁器の原料で使われる良質な粘土がとれるからこそ大産地になっているわけで、そのあたりで農業をやろうと思えば粘土質土壌での耕作は避けられません。
一方。
関東平野は火山灰土が降り積もって堆積した土壌であり、火山灰土は水はけがおそろしくよくサラサラしています。
粘土質土壌と火山灰土。
この両者では耕作の仕方がまったく異なってくるんです。
耕すときの機械の馬力は、粘土質で重い土なら大きな馬力を必要としますが、さらさらとした軽い土なら小さな馬力でもじゅうぶんに耕すことが可能です。
水はけが悪いということは大雨が降るとたまりやすいということですから、高い畝を立てておかないと雨のたびに作物が浸水してしまいます。
粘土質土壌では高畝を立てられる畝成型機が必要でしょうし、火山灰土であれば畝と通路がほとんど同じ高さの平畝を成型できる農機が必要でしょう。
また。
中山間地と呼ばれるような、山に囲まれて谷間に段々の小さい面積の農地を抱えている地域では、トラクターはむしろ使いにくいかもしれません。
小回りがきく手押しの耕耘機で耕したほうが効率がいい可能性があります。
そして。
非農家が農業の世界に新規参入する場合。
新しく農地を探すときにまとまって複数の農地を借りられることは少なく、離れたところに農地が分散しやすいという傾向があります。
この場合も、トラクターよりも手押しの耕耘機のほうがよかったりします。
圃場間を移動するときにトラクターでも距離が離れすぎて大変だ~と感じることがあるので。
トラクター一台を持つよりも、耕耘機を複数台用意した方が効率がよかったりします。
というように。
土壌条件ひとつとっても機械の種類は変わってきますし、どんな地域で就農するのかによっても持つべき農機具は変わってきます。
■売り先や品目によって資材が変わる
できた作物をどこに売っていくのか。
売り先はどこなのかによっても資材は違います。
農協出荷の場合、集荷場とか選果場といったところに運ぶため自前のトラックで作物を運搬する必要があります。
オクラやしし唐、エンドウのように比較的小さくて軽い品目をつくっているのであれば軽トラックでも十分こと足りますが、キャベツや白菜など重量級の品目をつくっているのであれば軽トラックでは間に合いません。
運搬回数が少なくていいよう大きめのトラックが必要になります。
そして。
当然ですが何を栽培するのかによって使用する資材は違います。
スイカなのかトマトなのか、ジャガイモなのか。
品目によって必要な資材は全然違います。
だから。
スイカを専門に育てている農家がジャガイモ農家に転身する。
トマト農家が白菜農家に転身する。
というのは簡単なことではないんです。
ということは。
売り先や品目をしっかりと決めておかないと資材を購入することすらできないということです。
■栽培によって資材が変わる
(画像参照:JAうご公式ブログ)
環境や売り先・品目ほどではありませんが、栽培の仕方によっても資材が変わることがあります。
たとえばアーチパイプと呼ばれる、鉄パイプをアーチ状に組み合わせてつくる大きなトンネルがあるんですが、これにネットを張ってキュウリやインゲン、ゴーヤなどを育てたりすることがあります。
そのパイプ、もちろんけっこうなお値段ですしかさばるので保管場所もけっこうとられます。
栽培に欠かせない資材だから購入せざるをえないところもあります。
ところが。
キュウリには地這い栽培というものがあることを知る。
支柱を立ててネットに這わせるのではなく、地面を這わせて栽培をするという方法があることを知ったとしたら・・・。
そのような栽培だと収穫は宝さがしになるので大変だし、果実の一部に日が当らず色ムラが出てしまうという欠点はあるものの、高価なアーチパイプは不要だし設置&片付けの作業もなくなります。
しかも地面を這っているだけなので、台風で倒壊してしまって大損害!といったリスクを回避することができます。
一長一短ありますが、栽培者の販路や考え方によってはキュウリを地這いにすることも選択肢に含まれるわけです。
もしアーチパイプを使用した一般的な栽培をしていたキュウリ農家が、自分にとっては地這いに利があると感じて栽培方法を変更したら・・・。
そのアーチパイプは不要になりますよ。
似たようなことはインゲンでも言えます。
インゲンをネットに這わせるのは、その品種がつるありと呼ばれる系統だからです。
つるがあまり伸びていかない、コンパクトにまとまって実がつくつるなし系統もインゲンにはあるので、そちらを栽培するのであればネットを設置する必要がなくなります。
つるありインゲンを栽培していた農家がつるなしインゲンに変更したら、それまで使用していたパイプは不必要なものになってしまうということです。
このような例は実際の現場ではけっこう見られます。
最初からしっかりと計画していたとしても栽培方法の変更は起こりうるので、ある意味ではしょうがないところもあるんですが、高価な資材を購入するときにはじゅうぶんに検討してから決断すべきだと思います。
資材購入は石橋を叩くくらいがちょうどいい
というように。
自分にマッチした栽培方法が決まらないと、買ったものを無駄にしてしまう可能性があります。
栽培が決まるためには、まず売り先や品目が決める必要があります。
そして。
就農地が決まって借りる農地が確保できないと揃える資材の仕様が決まりません。
つまり。
就農地、ターゲットが決まらないと資材を揃えることができないわけです。
焦って早め早めで資材を買いそろえてしまって後悔しないように、本当にいま買っていいのだろうかと問いかけながら慎重に購入を進めていくことをお勧めします。
とはいえ。
考えて購入しても無駄にしてしまうことはあります。
長く農業を続けていれば、栽培方法を変えたり売り先を変えたりすることはあります。
そこまで想定して買い揃えることは難しいですが、新規就農時点で一気にひととおり揃える場合には注意して足りないということはありません。
なにしろ金銭的に苦しいのが新規就農者ですから。
少しでもロスをなくしたいなら。
農業研修すればいいと思います。
自分がやろうとしている経営形態でやっている農家で研修すれば、使用している資材は非常に参考になります。
支柱の長さや太さ、機械の馬力や耕耘幅、防虫ネットや不織布の幅や長さなど。
意識しないとあまり研修中は気にして見ていない部分ですが、将来的に就農して資材を揃えていくときに必ず直面する問題ですから、研修をしているときに注意しておくといいでしょうね。
参考なれば幸いです。
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・