販売農家の差別化戦略 付加価値ってなんだ?

新規就農をするときに気をつけるべきこととして
生産だけではなく販売もしっかりと考える
ことを過去の記事で挙げています。
農業も同じ!生産力があっても販売力がなければ半人前
集客が商売の基本なのは農家でも同じ

そして。
販売ではどんな人に売っていきたいのかを明確にして、その人に向けての生産をしていく必要があることも書いてきました。
新規就農すると決めて最初に考えるべき重要なこと
新規就農でまず最初に考えること~ターゲットの絞り込み

今回は。
自分が大切に育てた農作物を買ってもらうのに必要なことについて書いていきます。
商品の良さとは、ただひたすらイイものを作るために栽培に力を入れる。
そんな単純なものではないことが分かると思います。
ぜひ最後までご覧ください。

 

付加価値をつけて商品力を高める

農産物、つまり商品が売れていくためには、それなりの理由があります。
たとえば安さ。
品質が良かろうが悪かろうが関係なく、とにかく安ければ売れます。
たとえば安全性。
消費者が農薬を毛嫌いする傾向はいまだ強いので、農薬を使っていないことをウリにすると売れやすいのは確かです。
たとえば品質。
とにかく多くの人に評価されるような高い品質のものであれば、それは売れて当然です。

この3点については、たいていの農家はしっかりと把握していますし、意識したうえで生産・販売をしている農家もいらっしゃいます。
でも。
じつはこのほかにも、農産物が売れていくためのポイントがあるんです。
意識している農家がいないとは言いませんが、全体としてみればほんの一握りの農家しか意識していない、と私は感じます。
農家よりも、農家から農産物を仕入れて売っている販売業者、彼らは意識していることが多いです。
そのポイントは付加価値です。

 

栽培での付加価値では新規就農者は勝てない

付加価値

付加価値という言葉はありきたりなものですし、さきほど挙げた安全性なども付加価値のひとつと言えます。
でもここで言いたいのは商品そのものの特徴を指す付加価値ではなく、商品の価値を高めるためにあとから付けられたもの、ぶっちゃけて言えば商品を良く見せるために付けられた付属物のようなものを指しています。
たとえ商品そのものが普通の評価しか得られないものだったとしても、高く評価されて高価格で取引することができる。
そういう付加価値のことを指します。


単純に考えて。
同じような商品が並んでいれば、価格でしか比較することができません。
有機栽培の野菜がずらりと並んでいれば、有機であることの価値はないに等しく、価格で勝負しなければならなくなります。
つまり。
無農薬だ!有機だ!というのは付加価値でもなんでもなくて、
他では買えない、うちでしか買えないよ~
という特徴がなければ、なかなか買ってもらうことは難しいのが現状です。
無農薬だから、有機栽培だから、というアドバンテージは、もはやないと思っているくらいが丁度いいのかもしれません。

 

付加価値をつける。
というと、栽培に力を入れて高品質のものを作ろうとするのがふつうの農家です。
イイものを作れば売れると思っていますから、当然の流れですよね。
でも。
みんなやっている、みんな栽培に力を入れて高品質を狙っているということは、生半可な努力では商品に差がつかないんです。
味で勝負するとか、高品質を売りにするとか。
その土俵には横綱級の農家がひしめいています。
そんな土俵の上で、新規就農者が勝てると思いますか?

 

ストーリーという付加価値

そもそも。
付加価値とは、商品のクオリティだけを指しているのではありません。
購入者からみて、ほかでは買えない特徴を備えている価値の高い商品であればいいんです。

たとえば。
ある農家が以下のようなストーリーを語ったとしたらどう感じるでしょうか。

★★★★★★★★★★

インタビュー

私がサラリーマンだった頃の話です。
食の安全はすごく気にしていましたし、健康に対する意識も人一倍持っています。
そんな考え方ですので、自分の子どもにはいいものを食べさせてあげたいと思いましたし、そのために有機野菜を取り寄せて食べさせたりしていました。
でも・・・。
子どもが野菜嫌いで、まったく野菜を食べてくれなかったんです。
トマトも、ジャガイモも、キャベツも。
ほとんどの野菜を、子どもは口にしてくれませんでした。
いや、正確に言えば
「口に入れてくれるけど、美味しくないと言って残す」
ということです。
有機野菜を食べさせているのになぜ?って思いましたよ。
有機野菜って美味しいんじゃないの?って憤りましたよ。

子どもが美味しいと言って食べてくれる野菜、それが私の望みでした。

そこで私がとった行動は。
家庭菜園で野菜を育てること。
市民農園で小さな区画を借りて、野菜の栽培を始めました。
望みはたったひとつ。
子どもが食べてくれる美味しい野菜を育てたい。
それだけです。
始めてからは必死に勉強しました。
無農薬で育てればそれだけで無条件に野菜が美味しくなる、というわけではないこと。
大根ひとつとってみても、品種によって美味しさに違いがあること。
植物の栄養である肥料、その加減によって野菜の味に大きく影響してくること。
などなど。
勉強して得た知識をもとに、菜園での栽培をとおして、野菜と真正面から向き合って、野菜を元気に育てるにはどうしたらいいのか、野菜が美味しくなるにはどうしたらいいのか、とにかく必死でした。
自分の子どもに野菜を食べてほしい。
その一心で野菜を育て続けました。


そして収穫のとき。
菜園に子どもを連れていき、その場で野菜をもぎとってもらいました。
そして口に・・・。

子どもの笑顔

そのときの子どもの笑顔が忘れられません。
ひとくちだけじゃなく、まるごと全部食べてくれたんです。
しかも笑顔で。
美味しいと言いながら。


この体験を、たくさんの人たちに味わってほしい。
野菜嫌いの子どもに、野菜が好きになってほしい。
そんな想いが大きくなり、家庭菜園から抜け出し、本格的に農業を始めて農家になりました。
そうして始まった農園。
たくさんの子どもたちが野菜を好きになる手助けができればと思います。
ぜひ一度ご賞味いただければ幸いです。

★★★★★★★★★★

というストーリーとともに野菜が売られていたらどうでしょう?
野菜嫌いの子どもがいる家庭の主婦は、ちょっと買ってみようかなと心が動きませんか?


このように。
ただ農産物の品質だけで売っていくのではなく、商品の価値を高める工夫をしてみることが大切です。
商品に、ストーリーという付加価値をのせて売る。
ということです。

 

高級感を演出するという付加価値

別の例として。
見た目、包装を工夫するという方法もあります。
たとえば。
それなりに美味しいと評判のトマトがあったとして、それがよくある透明のビニール袋に入れられた状態で売られていたらどうでしょうか。
ごくふつうに「あー、300円ね。」という反応になります。
ところが。
同じトマトが、桐箱にふわふわの綿を敷き詰めて、そこに大切に入れられていたら・・・。
それはものすごい高級感があるように映るので、
「こ、これは・・・1000円くらいか?」
という反応に変わります。
商品である農産物そのものではなく、見た目や包装を工夫するだけで価値が変わる。
付加価値をつけられるという例です。

 

新規就農者こそ付加価値を考えるべき

商品の価値を決めるのは、農産物の見た目や味だけではありません。
栽培にものすごく力を入れてがんばって作物を育てたところで、それは他の農家もやっていること。
どんぐりの背比べですし、差別化にはなりません。
商品そのものをレベルアップする栽培ではなく、それ以外の付加価値をどのようにつけていくのか。

このあたりをしっかり考えてみてください。

参考になれば幸いです。

 

 

多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?

たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。

このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。

それは・・・

有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?

有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。

「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」

と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、

有機農業はちゃんと稼げる

ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。

ただし、条件があります。
それは・・・

つづきはこちら

 

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