有機肥料と化学肥料 使い分けることでさらに農業は発展する

新規就農を希望される方の多くは、有機農業に興味を持っています。
それは当然の流れ。
食の安全がゆらいだ昨今、時流もあって有機農業が強くクローズアップされています。
国策として有機農業を推進する方向で動いています。
新規就農者が有機農業を選択するというのは、ある意味必然なのかもしれません。

 

有機農業といえば簡潔に言ってしまえば、無農薬かつ無化学肥料で育てる農業のこと。
無機的なものを許さず、有機的なものだけで栽培をしていこうとするものです。
でも。
あまり農薬や化学肥料を毛嫌いするのはどうかと思うところもあります。
農薬や化学肥料は、使い方によっては農業を今よりもさらに進歩させてくれるものだからです。
だからこそ。
嫌悪感を抱く前に、しっかりと向かい合ってみる必要があります。
今回は肥料にスポットを当てて、化学肥料に対する嫌悪感を取り除いてみます。
これを最後までご覧いただければ、化学肥料=悪といったイメージを払しょくできるはずです。

 

肥料とはなんだ

まず最初に。
肥料とはなんですか?
という質問に簡潔に答えるなら
人間にとっての食べ物
という答えになります。
つまり、作物にとって肥料は命を維持するため、もしくは生長するために必要な食べ物ということになります。
じゃあここで。
有機農業では有機肥料を使う、一般的な慣行農業では化学肥料を使う。
この違いはなんでしょう。
食べ物に違いがあるんでしょうか。
その答えもやはり、人間に例えると分かりやすいんです。

 

有機肥料とは

有機肥料
(画像参照:家庭菜園での有機無農薬栽培の方法

米ぬか、油粕(あぶらかす)、魚粉、たい肥など。
有機質なものから作られています。
言い換えると、命あるものから作られた肥料ということです。

私たちがふだん口にする普通の食事。
米や野菜、果物、肉、魚など、もしくはそれらを加工したもの。
これらが作物にとっての有機肥料だと考えてください。
だから、作物に有機肥料を与えて育てるというのはごく普通の、当たり前の育て方なんです。

ちなみに。
口に入った食べ物は、胃で消化されて腸で吸収します。
しっかりと噛んで細かく砕いておかないと、胃で消化しきれないし腸で吸収しにくくなります。
ようするに、人体は食べものを直接的に吸収できるわけではなく、消化して吸収しやすい形にしてようやく体に取りこむことができるようになるということです。
これは有機肥料でも同じこと。
土に混ざった有機肥料は、そのままでは作物の根が栄養を吸うことはできません。
肥料を、土にいる微生物が分解して細かくしてようやく根が吸えるようになるんです。

 

化学肥料とは

化学肥料
(画像参照:家庭菜園での有機無農薬栽培の方法

鉱物など無機質なものから取りだしたもの、もしくは化学的に合成された肥料。
命を持たない無機質なものから作られています。

有機肥料はふつうの食べ物だと先ほど書きました。
では化学肥料はなんでしょうか?
普通じゃない食べ物ってあるんでしょうか。
分かりやすく言ってしまえば、
サプリメントもしくは点滴
といった例えが適切だと思います。
食べ物から作られているというよりは、化学的にあれこれ手を加えてつくられたものです。
その特徴は、人体が直接吸収しやすいようになっているということ。
サプリメントであれば、胃で一生懸命消化しなくても水に溶けてしまえば腸から吸収するのは簡単です。
点滴であれば、胃や腸を通すことなく血液にダイレクトに栄養を送ることができます。

化学肥料もこれに似たようなところがあります。
作物の根が直接吸える形になっているので、土にいる微生物に分解してもらう必要がありません。
化学肥料を作物のそばに撒いて、水で溶けさえすれば作物の根は栄養としてそれを吸うことができるんです。
非常に合理的な、便利な肥料だといえます。

 

両方をうまく使い分けるとすべてがうまく回る

大豆牛肉サプリ

有機肥料はふつうの食べ物。
化学肥料はサプリメントや点滴。
ここでなにか気づかれた方はおられるでしょうか。
私たち人間は、自身のおかれている状況に合わせて身体に入れるものを変えているということに。
健康なときは、ふつうの食事をしています。
日常的に食べているのは、スーパーで売られているごく一般的な食べ物です。
でも。
なんだか調子が悪いなぁ、最近なんか肌が荒れてきたような気がする、忙しすぎて疲れがたまっているようだ、など体調がすぐれないときってありますよね。
そういうときにはサプリメントを利用することがあります。
足りない栄養を補うという感じでしょうか。
また。
病気になって入院したとき。
手術をした後。
ふつうの食事をするのは大変なときってありますよね。
そんなときは点滴によって栄養をとっています。
一時的に点滴という手段で栄養補給します。

つまり。
私たちは日常生活で、健康状態によって栄養の摂り方を変えているんです。

作物だって同じこと。
状況に合わせてに使い分けると効果的なんです。
健康にすくすく育っているときは化学肥料なんていりません。
ふつうの食事、有機肥料をベースに育てていけば元気に大きくなっていきます。
でも。
調子を落とすことだってあります。
病気になることだってあります。
そんなときには化学肥料で一時的に栄養を補給してあげる。
有機肥料では吸収に時間がかかるから、弱っているときには化学肥料で助けてあげる。
そうすることで回復が早くなります。

 

有機農業も慣行農業も、もっと頭を柔らかくすべき

有機肥料と化学肥料。
その使い方はぜんぜん違います。
メインの食事はあくまでも有機肥料。
化学肥料は補助的な役割を担っています。
でも。
一般的な農業では、便利で使いやすいからといって化学肥料に頼っています。
日常の食事まで化学肥料を与えています。
有機農業では、化学肥料は使っちゃいけないと制限をかけて一切認めていません。
調子を崩そうが病気になっても、有機肥料のみに頼った農業をしています。

非常にもったいないことをしているんです。
どちらとも良い面と悪い面があります。
だからこそ、私たちが健康状態に合わせて食事を変えるように、作物も健康状態に合わせて肥料を変える必要があるんです。
でもその使い分けができていない。
それが現状です。

一般的な農業でももっと有機肥料をたくさん使っていくべきですし、有機農業でも化学肥料を毛嫌いしないで使っていくべきです。
それが作物にとって最善であることに生産者も消費者も気づかなければならないと思います。


というわけで。
肥料についてあまり気にしていなかった方にとっては知る機会になったかと思います。
もともと肥料についてある程度知っているという方にとっては、偏見をなくす機会になったかもしれません。
少しでも参考になりましたら幸いです。

 

 

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