少量多品種有機栽培農家に共通している「変人」という資質

農業の世界には、ひとくちに農家といっても様々な人たちがいます。
年齢、性別、栽培方法、販売先、地域、規模・・・。
そんななかでも
無農薬で米や野菜を生産している有機農家
は新規就農者にとって興味をそそられる農家だと思います。
新規就農を希望する人の9割以上が有機農業に興味があるというアンケート調査があるくらいですから。

今回は。
私がやっているような、たくさんの種類の野菜を育ててそれを家庭や飲食店に向けてお届けしている、いわゆる
野菜の詰め合わせセットをご家庭に直接お届けします!
という農家を取り上げます。
らでぃっしゅぼーやとかオイシックスのような食品宅配会社と契約して、なにか特定の野菜を大きな面積でドドーンと育てている有機栽培農家ではありません。
有機農家のなかでも、大きな家庭菜園だと言われる多品目栽培をしている農家について、
彼らはどのような人間なのか、
どんな性格でどんな思考をもっているのか、
大きな傾向がありますのでお伝えしていきたいと思います。

 

一般的な農家とは

新しく農業を始める人は大きく分けると3つ。
ひとつは実家がもともと農家で、それを引き継ぐもしくは後継者として働くというパターン。
もうひとつは農業法人などの会社や団体に就職するというパターン。
3つめが実家が農家でない人たちが新しく参入するというパターンです。

実家が農家だという人たちは。
自分の親がやっている農業を学んで、それをベースに自分も同じようなスタイルでやっていくことが多いようです。
なかには自分独自の路線を走りたいといって親がやっていることと全く違うような農業をやっている人もいますが、多くは親の事業を継承するような形が多いですね。
いずれにしても2代目、3代目と言われる農家になります。
このように事業を引き継いでいくときには、あたりまえですが元々持っている倉庫とか農業機械とか、その他もろもろの資材も引き継いでいくことになります。
これらは金額になおせばウン百万円、ウン千万円するような価値を持っている大切な財産です。
それを使って農業をやるんですから、事業としては有利ですよね。

レストラン店内

たとえば。
なにかお店を始めたいと思ったときに、立地のいいところに親が所有している土地があってそれを活用できるとしたら、それはもう大変なアドバンテージです。
すでに親がやっているお店を引き継ぐとなれば、さらに大きなアドバンテージ。
まったくゼロからスタートする人と比べれば、開業資金が何千万も違ってくるという話ですから。
さらに普通ならかかってくる毎月の家賃もかからない。
そんな有利な条件で始められるということは。
販売する商品(たとえば料理とか)に上乗せされるコストだって少なくなるんだから、安くて美味しい料理店として評判になったりもするわけです。

農業でも同じことが言えます。
親の地盤を引き継ぐということは、その後の事業をかなり有利に展開することができるんです。

 


一般的ではない新規参入者とは

一方、実家が農家ではなくて全くのゼロから農業を始めようとする人もいます。
こういう人たちを新規参入者と呼びます。
もともと農業は世襲制の強い業界なので、実家が農家ではない人が新しく農業の世界に飛び込むというのはじつはけっこうハードルが高くて珍しいことなんです。
でも全くいないわけじゃありません。

新規就農者の推移

統計で出ているんですが、

農業を新しく始める人のうちの3%くらいが新規参入者です。

平成23年の数字だと2100人。
1年で58000人が新しく農業を始めるなかで、農家じゃない人が農家として独立するのはたったの2100人しかいないんです。

親が農地を持っているわけではなく、倉庫や農業機械を持っているわけでもない。
農業は儲からない、衰退産業だと言われ続けているなかで、それでも農業の世界に飛び込んでいく人たちが1年間に2100人。

野菜詰め合わせボックスなどを配送する有機栽培農家の多くは、ここから生まれます。
圧倒的に不利な新規参入者という立場で、有機栽培農家の多くが誕生しています。

食に対する不安をなんとか少しでも減らしたい。
日本の農業を変えたい。
農薬を使わない安全な農産物をもっと世の中に広めていきたい。
もっと美味しい野菜を食べたい。
日本の農地を守りたい。

想いは様々ですが、既存の農家にはない強い想いを抱いて有機農業に飛び込んできます。
後継ぎ農業ではなく、不利な条件で戦わなくてはならない。
借りられる農地は、既存の農家が借りないような条件が悪い農地。
無農薬でちゃんとした農作物を育てるのはハードルが高い。
いろんな不安や問題を抱えながら、それでも有機農業にこだわっています。


私自身がそうですし、これまで出会ってきた有機農業者や就農希望者をみても、そのほとんどはもともと農業の世界にいた人たちではありません。
別の仕事をしていた、別の業界にいた人が、あえて有機農業をやっているんです。

生計を立てられるか分からないのになぜ?

有機農業のどこにそんな魅力がある?

きつい、きたない、かっこわるいの3K農業だよ?

周りのいろんな意見や疑問や批判を無視して、確固たる決意で有機農業をやっています。
想いは農家によってそれぞれ違いますが、厳しい逆風をものともせずに突き進んでいる人たちです。


ようするになにが言いたいかというと。
彼らは
変人
なんです。
ふつうの人ならやらないようなことをやって、それを快感だと思っている変人。
他人がなんと言おうと関係ない、我が道を突き進む変人。
変態といっても間違いではありません。

もちろん。
見た目はふつうです(ふつうじゃない人もいますが)。
話してみてもふつうです(ふつうじゃない人もいますが)。
でも。
彼らによって育てられた農作物は、ふつうじゃありません(ふつうの農作物もありますが)。
そこには変人たちの強い想いが込められているからです。
強い想いが形になったものが、彼らの農作物だからです。

 

あなたがもし、
無農薬でやってみたい!
有機農家になって米や野菜を育ててみたい!
と考えているのであれば。

自分は変人だろうか?

と自身に問いかけてみてください。
それは有機農家の資質なのかもしれませんよ。

 

 

 

 

多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?

たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。

このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。

それは・・・

有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?

有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。

「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」

と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、

有機農業はちゃんと稼げる

ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。

ただし、条件があります。
それは・・・

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