前回の記事では、農協出荷するような農業ではどのくらいの収入になるかについて書きました。
みなさんがどう感じたかは分かりませんが、時給に換算して1000円~1500円程度の農産物が多いという、農業の現実がこの程度だったわけです。
アルバイトするよりもちょっといいかな程度の時給で、天候に左右されて価格変動に左右されて、やたらと不安定な仕事をやってられますか?
というある意味残念な結果が出ています。
さて、それでは日本の耕地面積の1%にも満たない規模でありながら、世間的にはわりと注目されている有機農業は、収入という面でどのような数字になっているんでしょうか。
・・・と期待をあおっておきながらすみません。
ちゃんとしたデータを農水省は持っていませんでした。
ですが、「有機農業をはじめよう」というサイトを運営している有機農業参入促進協議会が発行している冊子のなかに、有機農業実施農家へのアンケート結果が載っていたのでそこから引用してご紹介します。
農業粗収益の平均 632万円
有機農業実施面積の平均 2.4ha
家族 2.2人
家族労働以外の労働力平均 2.0人
注)調査農家数122件、有機農業実施年数は1~33年で平均9.5年
有機農業実施年数が1~33年となっていることから、新規就農者の経営規模がばらばらだと予想できますので、あまり平均をとることに意味はないかもしれません。
ひとつひとつの事例を見たほうが参考になるかもしれません。
ですが、それをふまえたうえで数字をよく見ていきます。
参考にならないかもしれないと思いつつも見ていきます。
農業粗収益というのは販売収入+ 家計消費+ 雑収入といった売り上げ等の合計です。
そこから経費を引かれたものが収入になってくるので、いわゆる農業所得は多く見積もってもせいぜい500万円程度です。
(これでもかなり多く見積もっています)
その所得を得るために、家族2.2人+家族以外2.0人 = 4.2人の労働が使われています。
4.2人すべてがフルタイムではありません。
家族2.2人がすべて労働力だとは記載されていませんでしたし、家族以外労働も研修生がいたりパートタイムがいたりします。
はっきりとは言い切れませんが、とりあえずここでは3.0人くらいとしておきましょう。
ということで500万円の収入(所得)を得るために3.0人が働いている。
ひとりあたり約167万円・・・。
働き手を2.0人で計算してもひとりあたり250万円。
えっ?
労働時間が載っていなかったので時給計算はできませんが、一年間せっせと働いて一人当たり167万円って・・・。
それが営農平均9.5年の数字ですか?
とまあ、これらの数字が10年前後営農して生き残ってきたツワモノのデータです。
企業生存率は農業では当てはまらない
でも書いたように、兼業農家で細々と稼いでいくような生き残り方がなければ、また事業を引き継ぐような高いアドバンテージがなければ、ふつうなら10年経てば1割くらいしか生き残ってないのが通常の生存率です。
それなのに、10年経って生き残っている農家から得たデータは、とんでもない数字になっていました。
個別の農家ごとのデータが載っている資料もすこしありましたが、大規模法人クラスにならないかぎりは一人当たり150~200万円くらいの所得でした。
まったくやる気が起きない現実がそこにはあります。
目次
有機農業で稼げない理由
どうしてこのような数字になってしまうのか。
ということについて真面目にお答えしていきます。
こうすれば稼げるようになる!という話ではありませんが、どうして収入が伸びないのかが分かれば稼げるようになる可能性があるということです。
今回の記事はここからが本題です。
どうぞ最後までご覧ください。
そもそも。
人それぞれでしょうけど一体いくらくらい収入があったら普通に生活できるんでしょうか。
サラリーマン並の収入ってどれくらいの金額を言うんでしょうか?
そのへんが曖昧ですけど、いわゆる普通の衣食住があって、外食をしてみたり、たまには車を買ったり、家を買ったり、勤労者ならできるであろう生活レベルを維持するくらいの収入ってことにしましょう。
サラリーマンの平均年収は公開されていますが、最近はだいたい400万円程度です。
それだけの収入を農業で稼ぐ、というのは・・・まあ大変ですね。
さきほどの数字を見ればサラリーマンに肩を並べる難しさがわかると思います。
なぜ有機農業で稼げないのか。
その答えははっきりしています。
栽培技術が足りない
充分な売り先を確保できない
コスト意識のない労働
この3点です。
ようするに生産力、販売力、経営力ということです。
当たり前すぎて書くまでもないと思ったんですが、他産業では当たり前のこのことが、農業になるとできていないことがけっこう多いです。
このブログでは上記3点について、とくに販売力と経営力について力を入れて記事を書いています。
ぜひほかの記事も読んでみてください。
生産力については参考になる書籍がたくさん出ていますし、レベルの高い栽培技術者が数多くいらっしゃいますのでわざわざここで書く必要もないでしょう。
育てるだけではなく、売るだけではなく、経営を含めて総合的にレベルを上げていける農家が、長く高いレベルで生き残っていけます。
有機農業にそびえる2つの壁
ところで。
有機農業界には収入(年収)に関して2つの壁があると言われています。
いや、言われているかどうかわかりませんが噂に便りで聞いたことがあります。
ひとつめは100万円の壁。
栽培技術の不足や売り先の確保がままならないと100万円を売り上げることも難しいです。
しっかりした先進農家で研修をしていれば、その真似をするだけでもなんとなく農産物は育っていくものですが、ひとつひとつの栽培の基本をおさえていないと結果がついてきません。
また、サラリーマンをしていたのであれば自分で自分の商品を売るという経験がなかったりして、なかなか売り先を探すために営業をかけていくという行動が起こせません。
でもまあ、とりあえずがむしゃらに、
なんでもいいから作ってやる!売ってやる!
という気概だけでも乗り越えられるのが、この100万の壁です。
この金額を越えるようになると技術も売り先も安定の兆しが見えてくるはず。
ふたつめが300万円の壁。
技術も売り先も安定しているのに売上が思うように伸びない、という状況でぶちあたる壁です。
この壁をこえると生活がずいぶんと楽になるんですが意外に高い壁。
栽培技術の向上、労働コスト意識、取引先の選定、適正な取引単価設定、経営の効率化など、利益を上げていくためにやるべきことをしっかりと定めて進んでいく必要が出てきます。
せっせと作って売るだけじゃ300万円には届きません。
有機農業においてここを超えられるかどうかが、生き残っていけるかどうかのカギになるはずです。
それは実際の統計数字で示されています。
これら2つの壁を越えてしまえばあとは自分がどんな規模でやりたいのかだけだと思います。
バリバリ稼ぎまくって高級車を買うこともできます。
週休5日の農業で生活していくこともできます。
働きたいだけ働いて、稼ぎたいだけ稼ぐ。
仕事と生活とのバランスをとって、生きたいように生きる。
そのような農業も、やり方次第では可能です。
夢のある農業。
ひとにぎりの人に与えられた楽園ですが、決して不可能ではありませんよ。
ぜひやってみてください。
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・