小規模農家のヘリコプター戦略 小回りがきくメリットを活かす

新規就農する人で最初から大規模にやろうとするのは少数派だと思います。
親が大規模農業をやっていてそれを引き継ぐ、というケースでもなければいきなり資本力を背景にした大規模農業でスタートするのは難しいですよね。
おそらく。
ほとんどの新規就農者は小さく始めるでしょうし、小さく始めざるを得ないでしょうから、小さいなりのやり方を知っておくべきです。
大規模農業や大手食品宅配会社と同じことをしていても太刀打ちできませんから、大手との違いを知ったうえで小さいからこそできることをやっていく必要があります。

今回は。
大規模農業と小規模農業の違いを明確にしたうえで、小さい農家がとるべき戦略について書いていきます。

 

飛行機じゃなくヘリコプター

どこからが大規模で、どこまでが小規模かという線引きは必要でしょうけど、じつは厳密に分類すべきというものでもなくて、従業員をかかえて組織化されていれば大規模で独りもしくは家族で経営しているいわゆる自営業であれば小規模だと考えてください。

経営規模による戦略の違いは、空飛ぶ物体に例えてみると分かりやすいです。

飛行機2

飛行機は大規模農業。
多くの乗員乗客を乗せて飛ぶことができる飛行機と同じだと考えてみてください。
乗員である従業員、つまりサラリーマンは行き先を決めることができません。
目的地を設定することができるのは社長や役員です。
従業員は飛行機を順調に運航するために必要な歯車であって、運航の進路や速度、目的地を定める決定権を持っていません。
機体がしっかりしていてパイロットの腕が確かであれば、飛行機はかぎりなく安全な乗り物です。
従業員にとっては定年まで安心して乗り続けることができます。
ちょっとした雨風にも耐えるので、景気動向や国の政策いかんで危険にさらされるリスクも少なくなります。
そして。
目的地に向かって最速で移動できます。
これはつまり。
多くのモノや人を動かしていくことで、遠くて高い目標でもかなりのスピードで達成できるということです。

ただし欠点もあります。
巨体ゆえに方向転換が難しいです。
行き先を決めてしまったらひたすらそこへ向かうだけ、急旋回して目標を変えるという芸当は不可能に近い。
時代の流れを読んでしっかり舵取りしていかなければ、時代に取り残されたり間違った方向に進んでしまったりする危険性があります。
コロコロと潮流が変わりやすい現代において、旋回しにくいという性能は非常に危険な能力だと思います。

 

ヘリコプター

一方で。
家族経営のような小規模農業はヘリコプターに例えられます。
小さな機体のヘリコプターは、乗ることができる人数が限られます。
ヘリの大きさにもよりますが2人か4人か、だいたいそのくらいです。
自営業なので操縦はもちろん自分でやります。
自分で目的地を決めて、自分でそこに向かって操縦していく。
一直線に最短距離で向かうこともできますし、寄り道しながら蛇行して向かうこともできます。
すべて自由です。
そして。
運航の安全はパイロットの腕にかかっているので、就農者自身の経営能力が長く営農できるかどうかを大きく左右します。
機体が小さいので雨風に左右されやすく、景気動向や国の政策いかんで簡単に墜落してしまう危険性を持っています。
ただし。
パイロットである就農者に時代を読む力があれば、危険の少ないルートを選んで安全に運航することはもちろん可能です。
単純に飛行機だから安全、ヘリコプターだから危険というわけではありません。
ヘリコプターは急旋回が可能ですから、それを活かして急場を乗り切ることだってできます。
その動きの機敏さは、飛行機には出来ない芸当です。

 

急旋回できてどこでも着陸可能なヘリコプターの能力を活かす

ヘリコプターの最大のメリットは自分で好きなようにできること。
つまり小回りがきくことです。
小回りがきくというのは、時代の変化に対応しやすいということ。
たとえばTPPなど国の政策転換があったり農協改革で周囲の環境が一気に変わったりしたとき、、農家にとって大きく影響を受けるような変化があったとしても、対応しやすいのは大企業ではなく小さな農家です。
栽培品目を変えたり取引先を変えたり、急旋回して大きな変化に対応することができます。
飛行機と同じように飛ぶ必要はありません。
飛行機のように長距離をまっすぐ飛んでいても飛行機には勝てませんし、同じ航路を進んだら天候が悪くて先へ進めないということもありえます。
ヘリコプターの能力をちゃんと発揮できるように操縦すべきです。


さらに。
ヘリコプターは着地のときに長い滑走路を必要としないため、けっこうどこにでも着陸することができます。
着地点が限定されないということはつまり。
どんな目標を決めて飛んでもいいということ。
大企業は売り上げや利益を上げることが目標にならざるをえないところもありますが、小さな農家はそれに縛られなくてもいい。
たとえば年間1000時間だけ働く、週休4日を実現するといった働き方を目標にすることができます。
半年で1年分を稼いで、のこり半年を遊んで暮らす。
というようにあまりお金に縛られない目標を決めることだってできます。
つまり働かない、働きすぎないという選択だってできるということ。
健康のためとか、日本一を目指すとか、なんでもありです。

小さいからこそ、ヘリコプターだからこそ出来ることをやってみる。
そうすることで小さくても強い農家になることも可能になります。

 

ヘリコプターとしての自覚を持つ

とにかく大切なのは。
自分がヘリコプターだという自覚をもつことです。
大規模農家とは違う道を歩む、大手には出来ない目標を設定する、というように自分自身の立ち位置を理解したうえで、どう動くべきかを戦略として考えていけば少なくとも数年で離農することはないでしょうし、大規模農家や大手宅配会社を気にすることなく悠々と農家を続けていくことができると思います。

 

 

 

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