農家の仕事は生産だけ? サラリーマン思考では農家になれない

みなさんが持っている農家のイメージはどのようなものでしょうか?
太陽が昇るのと同時に畑に出て、暗くなるまで働いている。
とにかく作物を育てることに専念している。
もしくは作物を育てて、それを収穫して出荷している。

平井耕耘
だいたいそのようなイメージでしょうか。
農家の仕事は作物を育てること、出荷すること。
このように考えていませんか?

もちろん栽培することは農家として最も大切な仕事ですし、それを出荷してお金に換えていくことは農業経営として最も大切な要素です。
でも、農家の仕事ってそれだけじゃないんです。
それ以外の仕事が意外に多いことに気付かされます。

製造(生産)・・・いわゆる栽培。
出荷(販売)・・・作物を収穫してきて、調整&出荷する行為。直売や朝市で店頭に立ったり、直接お客様へ配達に行ったりすることもあります。
営業・・・商品を買っていただくためには見込み客をつかまえる必要があります。地道な営業・販促活動やインターネットを使った集客など方法は様々です。
事務・・・栽培記録をつけたり計画を立てたり、電話対応やメール処理も立派な事務仕事です。
資材調達・・・タネやマルチ等ビニール資材、コンテナや支柱、衣類や農具などさまざまなものを購入します。
経理・・・売り上げや経費などを処理したり、経営診断や確定申告などをします。
在庫管理・・・出荷できる農産物を管理したり、購入して使用している農具や農機具を管理します。
商品開発・・・加工品を手掛けてみたり、新しい品種に挑戦してみたり。
人事・・・アルバイトや正社員を雇ったりするのはもちろん、奥様を従業員として使う場合にも人事業務が必要になります。

まだまだありますが、さっと挙げただけでもけっこういろいろなことをしなければいけないことがわかります。


組織図オリエンタルこれらをみていて気付くことは、会社組織であればそれぞれの部署があるということ。
製造にかかわる部署があり、営業部があり、事務や経理を担当する総務部があり、商品開発をする部署があり、人事部があり・・・。
それぞれの部署には、それぞれを専門に仕事をするエキスパートがいて、全体としてひとつの組織となって動いています。

農業をやるということは。
組織の歯車になることではありません。
農業法人に就職してやっていく農業は別にして、自分で独立して就農していくのであればそれは自営業であり個人事業なんです。
自分で新しく組織をつくるということです。
各部署で行われている業務を、ひとりでこなすということです。


個人事業とはいえ、起業して事業を興すということは小さな会社をつくるのと同じ。
農業をはじめるということは、自分自身が社長になるということなんです。
もしかしたら最初からスタッフを抱えるような規模でスタートされる方がおられるかもしれませんし、配偶者と一緒に農業をはじめるという方もおられるでしょう。
多少の規模の違いはありますが、独立して新規就農するほとんどの人は事業主になるんです。

そして。
おそらくほとんどの方が、研修を受けるといっても製造部門での訓練しか受けないと思います。
つまり、栽培に関することだけしか研修を受けないということ。
でも実際は、新規就農すれば営業も経理も商品開発も、資材管理もすべて一人もしくは数人でこなしていく必要に迫られます。
栽培だけできても、製造部門だけが稼働しても会社は動いていかないんです。
すべての部署が円滑に動いてこそ会社は存続できるんです。

 

大事なのは実務能力じゃなくて気持ち

じゃあ新規就農なんて無理じゃないか。
とは思わないでください。
最初は素人でいいんです。
製造しかできなかったとしても、営農していくうちにどんどんすべての部署の仕事が板についてくればいいんです。
もし自分に向いていないと思われるような部署があったとしたら、それは外注して他の人にやってもらえばいいだけの話。
たとえば。
営業を担当するホームページの作成はどうしても自分でできそうにないと思うのであれば、それはプロの業者にお金を払って任せてしまえばいいことです。
経理がどうしても無理だというなら、会計ソフトを買って処理を簡略化するとか、いっそのこと会計事務所に丸投げしてしまうとか、手段はいくらでもあります。
会社全体をまわすために、すべてを自分で完璧にこなす必要なんてありません。


大事なことは。
すべてにおいて責任を持つ、という気持ち。
すべてを把握し管理できることを気持ちいいと思えるかどうか。
会社員として働いた経験がある人であればわかると思いますが、会社の歯車としてせっせと働いているときって、その仕事の全体像とか会社全体の動きや方向性などは、その会社が大きければ大きいほど分からなくなるものです。
小さな個人事業であればそれがない。
すべてを把握することができるし、すべての結果が自分自身に降りかかってくる。
それが心地よいと思えるかどうか、面倒くさいと思ってしまうかどうか。

そこが、新規就農できるかどうか、経営としてちゃんと農業をやっていけるかどうかの大きな分かれ目になります。

 

あなたが新規就農を考えていて、サラリーマンとして働いている延長線上に農業があるなら、それは大きな勘違いであることに気がついてください。
農業をするというのは、作物を育ててそれを出荷する、ただそれだけのことではありません。
会社組織がやっていることを自分ひとりですべて管理する、そういう能力が求められる仕事なんです。
被雇用者から雇用者へ。
まったく逆の立場に立つんだということを覚えておいてください。
 

 

多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?

たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。

このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。

それは・・・

有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?

有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。

「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」

と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、

有機農業はちゃんと稼げる

ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。

ただし、条件があります。
それは・・・

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