前回のトラクター動画では現場を知らないやつの意見だということで、現役農家の皆様からたくさんのご指導をいただきました。
その意見の多くは「30馬力で20haが目安」という基準が現実とかけはれているというもの。たしかに私はトラクターを使っていない小規模農家なので現場を知らない。それは事実です。
この「30馬力で20haが目安」という数字は、農林水産省やJA全農が出しているデータを参考にしていて、行政やJAの言っていることならある程度根拠があるだろうという見込みから採用したものです。 が、コメントからはどうも現実とかけはなれている感が拭えません。ですので、前回動画についてはコメント欄もコンテンツの一部だと思って見てもらえるとありがたいです。
という流れからの今回の動画。今回の耕うん機・管理機でも同じようなテーマで話をします。ただしここは私の経験が及ぶ領域です。馬力と耕作面積の関係などは、ある程度の根拠を持って経験からくる話をふんだんに盛り込むことができます。
もちろん経営形態が多品目栽培でかなり特殊なので、一般論に当てはめられないところもありますが、1ha前後くらいの小規模でやっている農家には参考になると思います。
先に断っておきますが、小規模農家向けと言いつつも2haを越える面積の経営では参考にならないかもしれません。そこはご了承ください。家庭菜園よりも大きいが、プロ農家としてはかなりコンパクトに営農している。そんな農家にとって参考になる話がメインになります。ではいってみましょう。
目次
動画の流れ
メーカーのカタログなどを見て耕うん機や管理機を選ぶとき、用途、種類、馬力、動力の4つを基準にすることが多いので、今回はこの4点をベースに話していきます。つまり「耕したいのか管理したいのか」で大きく2つに分けてから「ロータリーの位置はどこにあるのか?」「エンジンはなにか?」「圃場の広さに対して馬力はどのくらい必要か?」を順に考えてながら耕うん機・管理機の選び方について解説していきます。
どんな作業をするのに使うのか?
まず最初に、耕うん機と管理機は名称が違うだけで機能は変わらないのでたいした違いはないことをお伝えしておきます。あえて名称を分けているのには理由があって、まず機械にどんな作業をさせたいのかを考えるといろんなことが決まってくるんです。大きく2つのパターンに分かれます。
①とにかく耕したい
②畝立てや土寄せなどの作業機(アタッチメント)を連結することで、いろいろな作業をしたいのか
ちなみに管理機は、耕耘、畝立て、土寄せ、中耕、収穫などもできますがトラクターほど多様な使い方はできません。これを踏まえたうえで、選び方のポイントは3つ
ロータリーの位置はどこにあるのか?
爪を回転させて畑を耕運する「ロータリー」がどの位置にあるのかで、3つのタイプに分かれます。
①車軸にロータリーが直接付いている「車軸ロータリータイプ」
タイヤのかわりに、車軸にロータリーが直結されています。コンパクトだが完全に家庭菜園向けです。トラクターがリモコン操作のラジコンカーなら、これはチョロQ。小さい耕耘機が大好きな私でも、さすがにこのタイプを使うことはありません。馬力が小さい機種が多いことはもちろんマイナスですが、とにかく食い込みが浅いのでよほどふかふかする土質じゃないと厳しいですね。
②ボディの前面にロータリーがある「フロントロータリータイプ」
ロータリーの回転はけっこう危なくて、足や手を巻き込むと大惨事になるので注意が必要です。このタイプは車体よりも前にロータリーが付いているので、足が巻き込まれる危険性が少なく、畑の隅まで耕すことができるので端のあたりまで有効活用しやすい。そして何といっても方向転換や旋回がラクです。つまり、耕耘メインで使うよりも管理機として畝立てとか中耕・土寄せなどに使うならコッチがオススメです。というかこの手の管理機はハンドルが360度回ったりするので、ロータリーを前後どちらにつけるのか、という話だったりします。
③ボディの後方にロータリーを配置した「リアロータリータイプ」
耕うん機としてみれば一般的なのはこれ。トラクターと同じスタイルですね。車輪が先にありロータリーを引っ張るスタイルなので直進性に優れています。ロータリーの食い込みが良いので、深く安定的に耕せます。耕耘専用の機械にしたいならこのタイプがおススメ。
駆動する動力はなにか?
ガソリンかディーゼルかという話。ガスや電気はプロ仕様としてはまだまだ心もとないので農家向けではお勧めしにくいです。使い分けをするとすれば、
耕耘に特化させるならディーゼルエンジン
管理機ならガソリンエンジン
でしょうか。
というのも、ディーゼルはエンジンの回転が低回転域でも高トルクが得られるため耕耘作業に向いており、ガソリンエンジンよりも耕耘機に向いています。トラックなどにディーゼルエンジンが使われているのはこれが大きい。これは私自身も確かに実感としてあります。7馬力ガソリン耕うん機とディーゼル耕うん機、両方使ったことがありますが、ガソリン車できついなぁと感じるような畑でも、ディーゼル車ならスイスイと難なく走れたりします。車体が大きくて重いことも要因としてはありそうですが、トラックにディーゼル仕様が多いのは伊達ではないと思います。
耕耘機を選ぶポイントとしてロータリーにも注目してほしい。まず、ロータリーの構造としては、次の種類があります。
ロータリーを駆動するためのチェーンケースが真ん中についているセンタードライブ方式
チェーンケースがサイドについているサイドドライブ方式
さらに、耕耘刃の回転方向による区別から次の仕様にわかれます。
ごく普通に刃がついているストレート仕様。これはチェーンケースの真下を耕すことができませんので轍(わだち)のような残耕ができてしまいます。
クロス仕様(クロスカット、Vカット、フルカットなどの名称)であれば、残耕ができないようにロータリー軸の回転を工夫してあるので、耕耘することを目的に選ぶのであればクロス仕様にするべきです。
つまり、耕耘にはサイトドライブ方式かセンタードライブ方式ならクロス仕様。
管理機ではセンタードライブのストレート仕様、もしくはクロス仕様。
ということですね。
使う畑の広さはどのくらいか?
ようするに耕作面積に対してどれくらいの馬力が必要か?という話。前回のトラクター動画で反感を買ってしまったやつですね。細かいことを省略すれば馬力の決定は「土質☓耕耘幅」で考えるべきだと思います。
目安の数字はいろいろなサイトで書かれてますし、条件は様々なので一概には言えませんが、1馬力10aで考えたらいいと個人的には実感を込めて言いたいです。
5馬力なら50a
10馬力なら1ha
そんなにムリやろ!手押しの耕耘機で1haとかバカか!と前回同様言われそうですが、今回は経験ありだから抵抗します。ムリだと言ってるその思い込み、捨ててください!
私は5馬力の管理機ひとつで80a、しかもその管理機で耕耘と畝立て両方をこなしていた経験があります。そのときの年間労働時間は1800時間くらいで決して働きすぎてたわけじゃありません。やろうと思ったらできるんです。やろうと思えば、ですが。。。
というのは、労働時間全体から見て耕耘作業は決してウエイトが大きいわけじゃありません。一年で500時間も1000時間も耕してるわけじゃないんですよ。ほかにもあれこれと作業がある中で、耕すという作業工程があるだけ。自分が投入できる資金をどこに割り振るのかという話で、耕すということだけに資産の大部分を投下することに果たして意味があるのか、ほかに設備を購入したほうが生産性が上がる場面も考えるべきではないか。そういうことを突き詰める必要があると言いたいんです。
まあ私の場合は、多品目栽培で一畝ごとに耕耘・畝立てをするから一気に耕耘するわけじゃない、という事情もあります。もちろんトラクターなど大型機械があればラクだし仕事は速いですが、山間地で畑が分散している状況の上に、多品目栽培でひんぱんに小面積を耕作します。すべての圃場をトラクター移動するのはムリですし、1haしか耕作しないのに3台のトラクターを所有するのはバカげている。だから現在でも耕耘機だけで1haくらい耕作してます。トラクター持ってた時期もありますが故障を機に使わなくなりました。単純に小さくて取り回しがしやすい耕耘機が好きなのかもしれません。
1haもあったらトラクター必須だろ!は思い込みですよ。そう言う人に限って小さな面積でトラクター走らせたりして、コスト高で機械貧乏になってたりします。もちろんトラクターがあれば仕事は速いですよ。けど費用対効果や置かれている環境を考えてみて、計算してみて、それでも耕耘機でもいいと思えるならそうすればいいと思います。
必ずしも面積だけで判断しないでください、ということです。何が正解か、なんて意外に重要ではなくて、大事なのは考えること、周りに流されないこと、常識にとらわれないこと。本当に自分の耕作面積や経営規模で、その大きさの農業機械が必要なのかを疑ってみることがスタートになります。
ちなみにまとまって1haを越えてくればさすがにトラクターのほうがいいと思いますけど。
まとめ
耕うん機と管理機は名称が違うだけで機能は変わらないのでたいした違いはありません。選び方としては
①耕耘がメインならリアロータリー、低速トルクが強いディーゼルエンジン、ロータリーはサイドドライブ方式かセンタードライブのクロス仕様
②管理作業をするならフロントロータリー、ガソリンエンジン、ロータリーはセンタードライブ方式
この選び方は絶対ではないですが、耕したい!管理したい!という希望をかなえたいならそれに合った機械を選ぶべきです。
馬力については、ちょっと強気ですがが1馬力10aを目安に考えてもいいと思います。ちなみにメーカーについては修理・メンテナンスを任せられる農機具屋が近くにあるかどうかでほぼ決まるので、どこのメーカーがいいとか悪いとかそういう話はしません。トヨタがいいのかホンダがいいのか、いやいや日産でしょ、といった話と同じです。
機種のラインナップは山ほどあるので選ぶのは大変ですが、そういう細かい話はここで説明するよりも農機具屋に聞いたほうが早いし適切なアドバイスをもらえます。
最後に。1haというと大規模農業からみればお遊びかと思うような面積ですが、そこでがんばる農家だって必死に生きてます。なんとか結果を出そうともがいています。トラクター持ってない農家はプロじゃない、ガツンと投資してガツンと儲けろ、小さくやってんじゃねぇと息巻く人もいますが、それはたくさんある価値観のひとつにすぎません。
規模の大小で上下関係があるわけではなく、農業機械の大小で経営の優劣が決まるわけでもありません。農業は多様であるべきです。トヨタとフェラーリ、販売台数は全く違いますがお互いが棲み分けをして生き残っていますよね。スーパーの牛乳コーナーにあるのは特売100円のものから500円以上するプレミアムなものまで多様なニーズに応えるための多様なラインナップがありますよね。それを提供する農家も大小様々あっていい。
今回の耕うん機の話、オレには関係ないやと流す農家は多いと思いますが、小さな農家がたった一馬力の差でヒーヒー言ってることを知ると、また農業に対する世界の見え方、仕事への意識が変わってくるかもしれません。
私は大規模農業をすごいと思います。日本の食を支えているのはそういう農家ですし。と同時に、小規模でやっている農家も大切にされる農業であってほしいと願っています。ただ食べ物があれば満たされる、栄養だけを考える発展途上国ではなく、日本は豊かな食生活・食文化のある成熟社会なんだから、体を満たす食べ物のほかにも、心を満たす食べ物もあっていい。
そこに食い込めるのが小さな農家だろうと思います。
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・