農業収入を決定づける3つの式を理解しよう。小さな農家は頭を使わないと生き残れない。

農業収入ってどのように決まるか知っていますか?
野菜を売って、それを買ってもらうから売り上げになる。
たくさん買ってもらえば、それだけ多くの売り上げにつながる。
そりゃそうです。
間違っていません。

でも、
そんな認識しかないまま農業を始めてしまうと、確実に失敗して離農の道をたどることになります。
スーパーや直売所でよく目にする安売り競争に巻き込まれて、たいした収入にならないとボヤくことになります。
働いても働いても楽にならないなぁ、石川啄木はうまいこと言いおったなぁ・・・と悲観することになります。

農業の未来は、決して悲観するようなものではありません。
明るい農業の道はちゃんとあります。
それは、働いた分だけしっかりとそれに見合った収入が得られる農業。
農家はやりがいを感じ、お客さんは買って食べて満足する。
好循環で回っていく農業です。

その実現のためには、まず農業収入に関わる3つの式を理解する必要があります。
この式を知っているか知らないかで、収入が大きく変わってくる。
そんな可能性すらある大切な式です。

ぜひ最後までご覧いただき、経営に役立ててみてください。

第一の式 経営

農業収入の3つの式は、それぞれ注目するところが違います。
1つめの式は経営。
あえて言うまでもなく、この式はごく一般的に知られているものです。
農業に限らず、事業を行っていれば必ず知っていなければならない式ですし、これを知らないまま経営する人はいないんじゃないかというくらいの基本の式です。

収入(売上) = 顧客単価 × 人数 × 回数

という式です。
顧客単価については、飲食店などでよく聞かれるのですぐに理解できると思います。
客単価が500円しかないわ・・・
単価1000円くらいは欲しいよね。
など。
購入してくれたお客様がいくら支払ってくれたかという金額です。

次に人数。
顧客単価に人数をかければ、売り上げが出せます。
これはお客様が何人買ってくれたかという数字です。
顧客単価×人数は、誰でもわかる当たり前の式ですし、ここから今月の売り上げはいくらになった、という結果を導くことも可能です。
農業では、JAなどに出荷すると顧客という概念が分かりにくいかもしれませんので、人数を個数と言い換えてもいいと思います。

例えば、
大根を1本100円で売ったとして、それを10万人の人に買ってもらったとすると売り上げは

100円 × 10万人 = 1000万円

になるわけです。
10万本売ったと言ったほうが分かりやすいかもしれませんね。

ではここで。
たとえば大根の販売でお客様と定期契約を結んでいたとしたらどうでしょう?
月に一回、大根をお届けする定期便。
この場合、勝ってくれるお客様は10万人ではありません。
同じ10万本を売るんだけど、一人当たり一年間で12本買ってくれるわけです。
つまり人数は

10万本 ÷ 12本 ≒ 8333

8333人のお客様に買ってもらえば、売り上げが約1000万円になります。

100円 × 8333人 × 12回 ≒ 1000万円

なぜ式の中に回数を考慮するのか?

ここで考えてほしいのが、10万人の人に買ってもらうとか1万人の人に買ってもらう、その大変さです。
もちろんJA出荷などまとめて大量に引き取ってもらえる取引をするのであれば人数を気にする必要はありませんし、商品単価が低かったり手数料でかなり中抜きされたとしても利益が出るような大規模農業をやっていればそれでいいと思います。
でも小規模農家が同じように低い商品単価で出荷して、果たして手元にどれだけ収入が残るのかを考えてみてほしいと思います。

小規模だからこそ、商品単価をできるだけ高く、少量でも売り上げをしっかり出せるようにしていく必要があって。
そのためには

収入 = 顧客単価 × 人数 × 回数

を改めて見直す必要があると思います。

つまりは。
まとまって数が出せるなら単価は低くてもいい、でも数が出せないなら単価を上げる、ということ。
そしてこのときに、人数×回数を気にするようになります。

小さな農家にとって、商品を買ってくれる人を多く集めるのは困難を伴います。
多くの人に買ってもらうためには、広く知ってもらうための広告が必要だからです。
自分自身で顧客をもつ、直販型の農家なら特にそうですが不特定多数へのアプローチには限界があります。
もちろん集客・販売を卸業者なり小売店に任せてしまうときには気にしなくてもいいんでしょうけど。

あくまでも自分で集客をする前提での話ですが、小さな農家としてどうするべきかを考えるのであれば、購入人数は限りなく少ないほうがいい。
少ない人にアプローチして、できるだけ単価を高くすることで売上につなげるということを、ちゃんと考えていく必要があります。
そういう視点で考えていくと、回数というのが非常に大事になってくるわけで。
もうすこし分かりやすく言い換えれば、リピートしてもらうということ。

先ほどの式でいえば、

100円 × 8333人 × 12回 ≒ 1000万円

この12回をいかにして増やすのかを考えてみれば、倍の24回つまり月に2回買ってもらえれば

100円 × 4000人 × 24回 ≒ 1000万円

となり、4000人の顧客に買ってもらえば1000万円の売り上げになる。
毎週買ってもらえれば2000人でいいということ。

それでもまだ多いですね。
この人数のリピート顧客を作ろうと思えば、さらに多くの人へのアプローチが必要ですから。
じゃあどうするか。
顧客単価を見直せばいいということに気が付くでしょう。

顧客単価と人数と回数 すべては連動している

ここで気をつけなきゃいけないことがいくつかあります。
基本的に顧客単価と人数は、反比例しやすいです。
商品の価格を上げれば、買ってくれる人は減る。
もちろんそうですよね、かんたんに想像がつきます。
高ければやっぱり購入を躊躇する人は増えるんですよ。
逆に、安ければたくさんの人から買ってもらえます。
どの価格帯がもっとも利益を最大にできるのか、それは生産力と販売力のバランスによるので一概にこうだという答えはありません。
いまおかれている状況にあわせて、価格は常に見直すべきものだという認識は必要でしょう。

とはいえ、小さな農家が安売りをして大量に売りさばくという道は大規模農業と戦ってまともに勝てるとは思えません。
であれば高く売るためにどうしたらいいのかを考えたほうが現実的。
今回の記事では高単価・高付加価値をつけるための方法について触れませんが、、、

ごく簡単に言ってしまえば、買ってもいいなと思われるような品質のものを提供するということ。
価格に見合っているものを提供できてないと、続けて買ってくれないですから。

初回を買ってもらえるかどうかは、その自分自身の商品の見せ方一つでいくらでも買ってもらえます。
が、続けて買ってもらうためには本当に良いものじゃないと難しい。
だからこの辺りをちょっと気にしてもらえれば、収入を増やしていくためには自分は今どこに手をつけなきゃいけないかということが少しずつ見えてくると思います。

第二の式 お客様

収入を決める3つの式のうちの2つ目、これは人に注目したものです。
お客様にスポットを当てています。

お客様に注目して農業収入を考えたとき、

収入 = 影響力 × 人数

これが収入を左右します。

影響力というのは、お客様に対して影響をどれだけ与えられるかということ。
お客様の健康や、生活や、人生に与える影響の強さです。
そして、その影響を与えた人数がどれぐらいいるかということが収入につながるということ。

たとえば、
テレビに出てくるような芸能人の場合、その発言が社会に及ぼす影響は大きいものがあり、マスメディアに乗っかるため影響を与える人数は膨大なものになります。
だからギャラは非常に大きい。
年収◎億円を稼ぐようなスポーツ選手にしたって、世間に対する影響力が大きいから高収入なんです。

一方、個人向けに野菜セットを売るなんていうよくある有機農家の場合。
社会に対する影響はそれほど大きくなく(むしろ小さい)、影響を受けるのはその商品を受け取った家族だけ。
これで多くのお金を手にできるとは思えません。

つまり。
高収入を得たいと思ったら、たくさんの人たちに強く影響を与えるように仕事をしていかなければならないということです。
個別指導の塾と学習塾とを比べてみてもよくわかります。
家庭教師でマンツーマンで教えてもらうのと、学習塾に行って一対多で教えてもらうのと、
そこでの受講料や指導者の時給は違いますよね。
それは個人に与える影響力の強さと、一度に相手をする人数が違うからです。

じゃあここで。
農業の場合どうかということを考えてほしいと思います。
農業の場合には影響力の強さとはなにか。
それは、食べた人にとってどんな影響を与えるかということ、その人の健康や心の状態に対してどれだけ影響を与えるかということです。
いわゆる有機野菜と呼ばれている食品は、お客様にとってその食材が安全で安心できると思って食べているわけで。
実際の所どうかというのはちょっとここでは置いておきますが、少なくとも購入した人は安全なものだと思って買って食べてるわけで、体に与える影響ももちろんありますが心に与える影響がすごく大きいんです。
もしかしたら人生そのものを変えている可能性だってあるわけで、どこでも買える安売り農産物よりは影響力が強いといえます。
とはいえ、その影響を与える人数はたいしたことはなくて、商品を手に取った人数に限られます。
つまり有機農業をやっていて収入に直結するのは影響力の部分であり、人数についてはそれほどアドバンテージはない。

逆にどこでも買える農産物は、さきほどの有機農産物ほどの影響力はないかもしれないけど、大規模で効率よく生産することができれば購入人数が多くなります。
だから大規模農業は収入が大きくなる。
まあそういう話です。

小規模農業なら影響力でアプローチする。
大規模農業なら人数でアプローチ。
といえばわかりやすいでしょうか。

第三の式 自分自身

農業の収入を決める3つ目についても人に注目します。
2つ目の式との違いは、お客様ではなく農家自身に注目するという点です。

これが一番分かりにくいかなと思いますが、

収入 = 情熱 × 経済性 × ナンバーワン

こういう式になります。
情熱というのは、自分自身が農業に対してもしくはその作物を育てることに対してどれだけ
好きでいるかどうか、という話。
目の前にある仕事に情熱を傾けられるかどうか、ということが結局収入につながってくるわけです。
好きでもないことを仕事にしていると、やっぱりやる気が出ないですし仕事もダラダラしてしまいますからね。
その仕事が好きで好きでしょうがなかったら、やっぱり24時間そのことばかりを考えていますし、仕事しててもやっぱり全然動きが違ってくるものです。
それが結果として仕事の出来や効率につながり、収入にも影響を及ぼすというわけです。

次の経済性ですが、これは
世の中に求められているかどうか
という話です。

栽培をするのがものすごい好きでたまらない。
時間を忘れてのめりこんで栽培したとしても、そこでできたものが世の中に求められていなかったら意味がないわけで。
世の中に求められているものを提供するべきだという当たり前のアプローチです。
これは有機農業の世界ではよくやりがちなミスなんですが。
栽培をものすごく突き詰めている農家はいらっしゃって、そのこと自体は素晴らしいと思うんです。
耕さないとか、草をあえて生やすとか、いやいや一本だって生やさないとか、肥料をどのように考え施肥していくのかとか、土をどのように育てていくかだとか。
職人的な農家はけっこう多いですね。
ここで問題になってくるのは、その突き詰めて突き詰めて栽培したそのこだわり農産物を
買ってくれる人がいるのかという点。
そのこだわりを求めている人は本当にいるのか?はしっかりと考えるべき問題で、そこに経済性が伴わないと収入につながることはありません。
こだわってこだわって手をかけて栽培するということはそれなりにコストがかかっている
わけで、そのコストに見合うだけの価格をつけられないと採算が合わなくなりますし、労働の価値が下がるので時給に換算するとガッカリすることになりかねません。
もちろんこだわることは大事です。
けどそのこだわりは、世の中に必要とされているのかをちゃんと考えることが非常に重要だということ。

最後に、
ナンバーワンと書いてますがこれはオンリーワンと言い換えてもいいかもしれません。
たとえばスーパーに買い物に行った人が、同じ野菜がいくつか並んでいるのを目にしたとき。
どれを買おうか迷いますよね?
そこにもし自分の農産物が並んでいたとき、選んでもらうためには他よりも優れている何かがなければならないことは理解できるはずです。
そして、
安ければ買ってもらいやすいことは間違いない事実だとしても、薄利多売の道が小規模農家にとってイバラの道であることは先に説明したとおりです。
できれば安さ以外で勝負したい。
じゃあ何で勝負できるか。

美味しいという価値。
これはアリでしょう。
買ってもらえる要素の一つだと思います。
一番美味しければやっぱり買いたくなるんですよ。
ただし、美味しいかどうかは主観ですし、そもそも手にとってもらわないことには味の評価はされません。
しかも味の追求は多くの農家が力を注いでいるので差が付きにくく競争が激しい。
意外とイバラの道だと思いますよ。

見た目が優れていることをアピールしたっていい。
珍しい品種であることをアピールしてもいい。
もし、どうしても味で勝負したいなら地域を絞ればいい。
愛知県で一番甘いトウモロコシ!
豊田市で最も食味値がいいお米!
のように地域を絞ってナンバーワンをアピールすれば、購入されやすい状況を作り出せます。

大事なことは。
自分が一番を取れる場所はどこだろうかって考えていくこと。
価格競争にならないところで、まず真っ先に商品を手にとってもらうには何をアピールすればいいのか。
これができると自然とオンリーワンになっていきますし、誰かと競争することもなくなってきます。
そして、
オンリーワンになるということは、この農家から買いたい!というファンをつくることにつながるので、結果的に高くても買ってもらえるから収入にも反映されてくるということです。

というわけで。
農業収入を決める3つの式について解説しました。
この3つの式を自分自身でよく考えていただいて、収入を増やしたり売り上げを伸ばしたりしていくためにはどの式に注目していくべきか、力を注いでいくべきかということを意識するといいかと思います。

ただ漠然と売上を増やしたいとか収入増やしたいって思うよりは、もう少し自分自身の労力と
か意識というものを絞り込んでみて、着実に収入につなげてもらえればと思います。
参考にしてみてください。

多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?

たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。

このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。

それは・・・

有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?

有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。

「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」

と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、

有機農業はちゃんと稼げる

ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。

ただし、条件があります。
それは・・・

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