農業の参入障壁は新規就農者にどう影響するのか

新規就農するには壁があります。
金銭的な問題とか、身内の説得とか。
栽培技術とか売り先の確保とか。
農地法などの参入規制に関する壁とか。
いろいろな壁がありますよね。

これらを乗り越えることができなければ新規就農を実現することができない壁。
この壁が高ければ高いほど、新しく農業に参入できる人が少なくなる。
というのはすぐに分かると思います。
たとえば。
1000万円の貯蓄がないと始められない、という壁は農業をやりたいと考えている20代にとっては相当に高い壁です。
農地を借りたいと思って行政に相談に行っても、なかなか思うように話が進まない。
なんていう自分ではどうにもならない壁もあります。

このような壁について。
壁になっている要因を追求するとか、農地法うんぬんの話はおいておくとして、参入のしやすさ・しにくさが農業者にどのように影響しているのかについて今回は書いていきます。
これから新規就農しようと考えている人にとって、壁の高さがどのように影響してくるのか分かると思います。
ぜひ最後までご覧ください。

 


農家は参入障壁によって守られている

万里の長城
(画像参照:ホノホノ旅行記

壁とはつまり参入障壁のことです。
だれでも簡単に始められないように、参入するのを妨げているハードルのこと。
個人が農業を始めようと考えて動いてもそれほど高い壁は感じませんが、法人組織が農業をやろうとして動くと農地法などのからみで新規参入が難しいということはよくあります。
農地法を見直すなど、規制緩和をして新規参入しやすくすることで農業は活気づくという意見。
これはたしかにあります。
やる気や資本力のある企業体が参入するのを妨げてしまうことを考えれば、参入障壁があるのは問題なのかもしれません。
新しい風をどんどん入れて新陳代謝をよくしていかないと、農業が衰退していくのは目に見えていますから。
でもここで。
すでに参入してしまっている農家の立場からみると、まったく違ってみえてくるんです。

既存の農家は、参入障壁があるから守られている。
という事実は否定できません。
血の流れが悪くなると体にはよくないから、ある程度の活性は必要。
どんどん新しい企業を参入させて、どんどん活性化していくべきだ!
という意見は分かりますが、入れ替わりが激しいのは現場にいる立場の視点でみればけっこう怖いことです。

慣行農法でも有機農法でもそうなんですが、作物を育てていくためのいわゆる土づくりというのは、5年10年という長いスパンで考えなければならないものです。
農家の入れ替わりが激しいということは、前の人が使っていた農地を使う機会が増えるということです。
過剰に肥料や農薬を入れて無理な生産をして、収奪型の農業をやったあげくに土が悪くなったから撤退。
そういう農地を次の人が使う可能性が高くなるんです。
農地を使い捨てのように回してしまう、そういう企業体が増えてくる可能性は否定できません。
土地利用型の産業である農業においては、参入障壁が低すぎることは問題を招きかねないと思います。


かといって、新しく農業をやりたいと思っている人や団体を、ほとんど拒絶してしまうのは考えものです。
既存の農家は既得権益でのうのうと暮らしていくことができるようになりますから、新しいことを学ばなくなり保守傾向が強くなってしまいます。
日本という国が世界のすべてならそれでも構いませんが、あまりにも保守的だと国際競争には勝てなくなってしまいます。


参入障壁は高すぎてもダメ。
もちろん低すぎてもダメ。
ちょうどよい高さの壁が求められるのですが・・・。
どのくらいがちょうどよいか、なんて決められる人がいるんでしょうか?

参考までに、参入障壁の低い業界と高い業界を挙げてみます。

 

参入障壁の高い業界と低い業界

ノートPC
たとえば。
参入障壁が低い業界として真っ先に挙げられるのが、アフィリエイトなどに代表されるネットビジネスです。
初期投資がほぼゼロで、パソコン一台あれば始められる。
初心者でもラクラク、副業気分で誰でもかんたんにできる。
そういう宣伝文句で参入する人は増え続け、市場はどんどん広がっています。

参入するのに初期投資がかからず、収益をあげられるようになるまでに時間もかからない。
このようなビジネスモデルは参入障壁が低いと言えます。
でも。
参入してもしっかり稼げるのはほんの一握りの人だけです。
簡単に参入できてしまうので大勢が押し寄せ、供給が飽和状態になり、競争が激化して単価が下がるからです。
参入障壁が低いと、競争激化による疲弊が待っています。

処方薬
逆に参入障壁が高い業界は。
初期投資が大きくて収益化までに時間がかかります。
石油業界や製薬業界などはここに該当します。
設備投資や研究開発にコストも時間も大きくかかるため、新規参入することはほとんど難しい状況になっています。
億単位で投資が必要だったり、5年10年という長い年月をかけなければ収益に結び付かなかったりすると、新規参入のハードルは高くなります。

 

農業の参入障壁は低い

農業はどうでしょうか。
酪農のように初期投資が大きい形態もありますが、全体的にはわりと少ない投資で始められます。
時間については、これまた酪農は収益化までには長い年月がかかりますし、果樹は種類によっては比較的長い期間を必要とします。
米や野菜などは数ヶ月もあれば収益化できてしまうので、農業の中では新規参入しやすいと言えます。
農業全体をひとくくりにしてしまうと幅がありますが、全体としてみれば参入障壁は低いほうではないでしょうか。

 

参入障壁が低いから競争が激化して、農家は疲弊している。
実際はそのとおりなんですが、農業の牧歌的なイメージのせいで競争が激しいように見えていません。
農家に利益が残らないような破格の値段でスーパーの店頭に米や野菜が並ぶのは、競争が激化していることのなによりの証拠です。
需要にたいして、供給が多すぎるんです。
だから、農家の数は今よりももっと少なくていい。
と個人的には考えています。


それでも新規就農したい、農業を一生の仕事にしていきたい、と考えているのであれば。供給過剰な分野は避けることをお勧めします。
どこを避けたほうがいいかって?
それはご自身で調べてください。
農業のなかでも初期投資と時間が必要なのは・・・と考えて、そこで業界の常識を無視した独自路線を貫いていく。
農協に頼らず、生産・営業・流通・販売すべてを手掛けていく。
それくらいやれば、しっかりと稼げる農家になれるはずです。
あとはまあ、有機農産物に関しては需要に供給が追いついていない、といったところでしょうか。


このように。
農業の参入障壁はけっして高くありません。
むしろ低いので誰でも参入できますが、すでに競争が激しい分野もあり誰にでも新規就農を勧めるような状況ではないんです。
だからこそ。
新規就農するのであれば、農業の牧歌的なイメージにまどわされず計画的に、戦略的に考えて参入されることをお勧めします。
そうすれば、競争が激しいとはいえ生き残っていけるはずです。

 

 

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