あなたがもし、すでに農業研修を始めているなら。
	目の前にある農作物と向き合い、栽培について必死に学んでいることでしょう。
	収穫してから調整して出荷するまでの一連の流れを体で覚えようとしていることでしょう。
	ちょっと意識の高い人であれば、お金がどのように入ってどのように使われて利益を出しているのか、経営的なところを知ろうとしていることでしょう。
	農業においても生産力と販売力の両方がなければ生き残っていくのはむずかしいという話を以前にしていますが、研修中に両方を学んでおくことは就農後の生き残り戦争において非常に重要なことです。
	農業も同じ!生産力があっても販売力がなければ半人前
	ですが、これだけでは不十分です。
	研修中にどうしても学ばなければいけないことが抜けています。
	というよりも、研修する前に知っておかなければいけないことです。
	もしかしたら、あなたが選んだ研修先は間違っていたのかもしれない。
	ということになりかねない重要なことです。
	ぜひ参考にしてください。
	 
目次
	企業には販売戦略がある
	マーケティングにおいて、フロントエンドとバックエンドという考え方があります。
	自分の商品、つまり米や野菜などを多くの人に知ってもらうために売っていく低額の商品をフロントエンド、その商品を買ってくれた人たちに対してさらに売っていく高額の商品をバックエンドといいます。
	
	たとえば。
	有機野菜・無農薬野菜の宅配サービスを行っているらでぃっしゅぼーやという会社を御存知でしょうか。
	いわゆる野菜セットを販売している大手宅配業者です。
	ここは、
	おためしセット1980円(送料込み、56%OFF)
	といった商品を販売しています。
	まずは価格を下げてでも商品を手に取ってもらう、多くの人に認知してもらうという目的をもったフロントエンド商品です。
	この商品をたくさんの人に買ってもらって、試してもらって、その人たちに対して
	定期お届けサービス
	という定期的に野菜セットを購入してもらうというサービスを提供するわけです。
	定期的に買ってもらえるということは、企業にとっては安定して利益が入ってきますし、一人あたりの購入金額は長くサービスを利用してもらえればそれだけ高額になっていきます。
	いわゆるバックエンド商品です。
	まずは割引をしたお得なフロントエンド商品を売っておいて、そのなかから気にいってくれた一部の人たちに対して高額なバックエンド商品を売っていく。
	というのが、らでぃっしゅぼーやがとっているマーケティング戦略です。
	これはオイシックス(Oisix)や大地を守る会など、多くの宅配業者がやっている手法です。
	英会話教材のスピードラーニングなどもフロントエンドとバックエンドを持つ典型的な企業です。
	テレビやラジオでおなじみのスピードラーニングですが、サンプルCDを無料でプレゼントということをやっていますよね。
	無料で配るということは、商品の発送代金やCDの製造コストなどを企業が負担しているわけで、サンプルを配る行為自体は赤字なんです。
	でも、サンプルを受け取った人のなかから、本商品としての教材CDを買いたいと思ってくれる人が出てくる。
	教材CDそのものは製造コストなんてたかが知れてますから、数を売れば売るほど企業としては大きく儲けることができます。
	つまり、無料でフロントエンド商品を配って多くの人に手に取ってもらい、気にいってくれた一部の人たちに対して高額のバックエンド商品である教材CDを売っていく。
	というのがスピードラーニングを販売しているエスプリラインの戦略です。
	こういった販売戦略は、儲かっている企業が必ずといっていいほどやっている戦略です。
	この企業のバックエンド商品はなんだろうか、と考えてみることは自分の独立就農・農業経営にとっても必ずプラスになってきます。
	日頃からよく観察してみてください。
	 
	直売農家の悲劇
	
	一方、直売所で野菜などを販売している農家はどうでしょうか。
	安さを求めてやってくるお客様に対して売っていく、とにかく全員に買ってもらうための努力をしています。
	数をこなせば売り上げは上がるかもしれません。
	直売所だけでものすごい金額を稼いでいる農家もいます。
	でもおそらく、安いものを数多く売っていくような商売では労働コストがかさんでしまうので本当に儲かっているとはいえません。
	朝から晩まで休みなく働いてようやくサラリーマン並みの収入が得られる、というレベルではないでしょうか。
	これは、農家自身が低額商品であるフロントエンドしか持っていないことが大きな原因です。
	直売所で買ってくれたお客様に対して、そのあともなにか高額の商品を買ってもらう仕組みを持っているのであれば別ですが、直売所で野菜をたたき売りしているだけではいっこうに儲かることはありません。
	たとえば、
	利益率の高い加工品(味噌や漬物)も合わせて売っていく「クロスセル」
	買ってもらった商品よりももっと品質がよい贈答用商品を売っていく「アップセル」
	というような手法をとっているのであれば、もっと儲かる可能性があります。
	でも直売所だけで安い野菜だけを売っている、フロントエンド商品しか持っていないとしたら、その苦労が報われることは一生ありません。
	 
	本当に知るべきは仕組み
	あなたが農業研修を受けている農家はどうでしょうか?
	あなたが農業研修を受けようとしている農家はバックエンド商品を持っていますか?
	バックエンド商品を持っていない、つまり儲からない仕組みをつくって頑張っている農家で研修を受けたとしても、学べるのは儲からない仕組みだけです。
	しっかりとした仕組みを持っている農家で研修を受けて、その仕組みをそっくりそのまま真似をして新規就農したら・・・。
	栽培さえしっかりやって商品を作り出すことができれば、あとは勝手に利益が上がっていくということです。
	儲かる売り方、つまり仕組みさえしっかりしていれば栽培に集中できるということです。
	その仕組みを教えてくれる農家で研修を受ける、これは重要だと思いませんか?
	別の言い方をすれば、仕組みを教えてくれる農家と栽培を教えてくれる農家は別でもいいということです。
	栽培に関しては一級品だけど経営的にはお粗末、という農家はけっこう多いです。
	経営手法を別で学んでおいて、自分で儲かる仕組みづくりをしておいて、商品をつくる技術習得のためだけに研修時間を使う。
	というのは賢いやり方でしょうね。
	栽培技術レベルの高い農家はたくさんいますから。
	問題なのは、経営手法を教えてくれる農家なんてほとんどいない現状でしょうね。
	もしそのような農家を探したいであれば、手っ取り早いのは
	時給を聞いてみる
	ということです。
	売り上げから経費を差し引いた利益を労働時間で割る、つまりその農家が時給いくらで働いているのかが分かれば、どれだけ効率的に経営を行っているのかがわかります。
	バックエンド商品のような利益が出るものを扱っていなければ時給は高くなりません。
	聞いても教えてくれない、そのときは諦めて自分で判断するしかありませんが、聞いても農家自身が把握していないときは研修先としては対象外です。
	経営状態を把握していない農家なんて研修を受ける価値ないですよ。
参考になれば幸いです。
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
	このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
	そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
	このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
	と、収入は二の次だと言います。
	だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
	ただし、条件があります。
	それは・・・

