新規就農のための研修先選びはその後の成功に直結する

農業を始めたいと思ったときに考えるべきことのひとつに研修先があります。
これまでまったく別の分野で仕事をしてきた人が、農業という異業種で仕事をしていこうとするときに
学校に通ったり農家へ研修に入ったり、どこかで栽培技術を学んでからスタートしたい
と考えるのは自然なことですし必要なことです。
ラーメン屋をやりたいと思っている人が、自分で試行錯誤しながら地道に独学でラーメンづくりの勉強をして開業するのと、繁盛しているラーメン屋で実際に働きながら技術を学んでから開業するのとでは、独立してからのスタートダッシュも違えばその後の事業展開にも大きな差がでてくると思います。
このことは農業の世界においても同じことがいえます。
実際に営農している農家のもとで研修を受け、その農家がなぜうまくいっているのか、どんな失敗をしながら乗り越えてきたのか、どういったところに気をつけていけば経営的に安定するのか、などを学びとることができれば、実際に自分が就農したときに役立てることができます。
同じ失敗をしないことで一年でも早く経営を軌道に乗せることができます。

ではどのような研修先がよいのか。
ということを考えるにあたって2つの選択肢が考えられます。

クレイアート農家
ひとつは農家への研修
実際に営農している農家から直接技術を学びとることができます。
基本的な栽培技術を学ぶこともできますし、販売に関するノウハウも盗めるかもしれません。
栽培そのものではなく圃場全体を管理していく技術も学べます。
それまでに経験してきた失敗例を聞いておくことで同じ過ちをせずにすむ可能性が高まります。
ただし欠点もあり、その農家が採用している農法に凝り固まってしまう傾向が強いです。
言い方を変えれば視野が狭くなる
トラクターを使っていたらそれが絶対に必要だと思いこんだり、堆肥は欠かせないと思ったり、草を生やすことは悪だと思ったり。
その農家は、たくさんある農法や栽培技術を知った上で自分にあったやり方を選んで採用しているので、同じやり方が他人にとって最適とは限らないのですが、研修生にとっては目の前でうまくいっている方法が最上だと思ってしまうのはしょうがないのかもしれません。
こういうことを知った上で「自分にとって最適な農法・技術は?」ということを常に意識するなら農家研修は意味のあるものになると思います。

クレイアート授業風景
もうひとつのルートは学校に通う
全国を見渡せば、農業系の学校や研修施設はたくさんありますし、有機農法に限定してもよりどりみどりとはいかないけど選択肢はあります。
私が研修を受けた自然農法国際研究開発センターもこちらです。
小手先の栽培技術だけではなく、もっと基本的な有機農法の理念から教えてくれるため、大きな視野で農業をとらえることができます。
そのため農家研修とは違い、栽培に関しては思い込みによって技術を限定してしまうことが少ないように感じます。
山の頂上が見えているからそこに辿り着くルートは自分で探すことができる、というと分かりますか?
基本をみっちり叩き込まれるので応用力がつくということです。
なぜ耕すのか、なぜ堆肥が必要なのか、なぜ無農薬で育てることができるのか、という根本的な疑問への答えを学ぶことができるので、自分がおかれた状況に応じて使う肥料を変えたり耕し方を変えたりすることができるようになります。
ただしこちらも欠点が。
栽培は、野菜の生育が健全であるために全力を尽くします。
コスト意識が圧倒的に欠けています。
労働をコストとして意識することが少ないため、栽培上最適だと思われることを惜しげもなく労働・資材を投下して遂行します。
農家の技術というのは商品を販売して利益を出してはじめて成り立つものなので、商売のことを考えていない栽培技術に用はありません。
丁寧に手間暇をかけて栽培された野菜は元気にすくすく育つけれど、そこにかかったコストを考えるとその栽培方法は採用できないことが多いんです。
なるべく手をかけずに育てる、最小限の資材で栽培する、ということを考えるのが農家です。
学校系で学ぶときは、このことを常に意識していれば有意義な時間になると思います。

ということで。
どちらも短所長所がありますが、短所を補うように意識を高めていけばどちらで研修を受けても大丈夫でしょう。
農家で研修を受けるのであれば、その農家の農法に傾倒しすぎないように、なにを目標にして生産しているのか、どこを目指して野菜を育てているのかを常に頭に入れながら学ぶ。
学校系で学ぶのであれば、その草取りにかかっている労働時間が本当にコストとして適切なのか、もっと効率的に作業できないだろうかと常に考えながら栽培に向き合う。
というように意識ひとつで学べることは格段に増えます。

しっかりと石橋を叩いてから盤石の態勢で新規就農したいという方は、農家と学校の両方に通ったらいいと思います。

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