いいものを安く手にいれたい。
とは誰もが考えることです。
同じものなら安いところから買いたいし、同じ価格ならなるべく品質がいいものを買いたいですよね。
何がいいもので何がいいものじゃないのか、その価値観は個々にゆだねられますがそこは置いといて、今回は商品の品質と価格との関係について考えてみます。
本質的なことを言えば、いいものは高いし悪いものは安い。
これが当たり前です。
これを外しているものは、厳しい表現をすれば低品質商品を高く売りつけている詐欺、もしくは逆に超お買い得品で商売として誰かが損をしているか。
高いのに粗悪品か、安いのにお得感満載か、どちらかです。
では。
詐欺でもなく商売として損をするでもなく、適正価格で数多く売っていくような健全な農業経営を長く続けていくためにはどうしたらいいのでしょうか。
もっと言うと、一円でも高く売って利益を大きくするにはどうしたらいいのでしょうか。
その答えは、高く売りたければいいものを作るしかない、です。
じゃあ栽培技術を磨いていいものつくって高く売ろう、となるのが普通の流れなんですが、ここでは一呼吸おいて商品の価値についてじっくりと考えてみたいと思います。
品質さえ良ければ高く売れる、実際にはそんなに単純なものではありませんからね。
目次
実際は需要と供給に左右される
いいものは高くて、悪いものが安い。
確かにそれはそうですが、実際には需要と供給の関係で価格が決まるという場合がほとんどです。
欲しい人が多ければ価格は上がるし、欲しい人が少なければ価格は下がる。
オークションがまさにこの原理ですし、スーパーで売られているような一般的な農産物の価格が上下することでも分かると思います。
天候不順で秋野菜が不作。
そんなニュースが流れることは日常的によくあります。
スーパーに行くといつもならレタス1個150円程度なのに、今日はなんと300円で売られている。
えっ?白菜が1個500円!
これはレタス産地、白菜産地が天候不順によって生産量を落としてしまったことによる供給不足が原因で、需要があるのに供給が追い付いていないから価格が上がったわけです。
もちろん逆もあります。
天候に恵まれてキャベツが豊作、どんどん供給できますが需要はだいたい一定なので需給バランスが崩れ、価格は下がっていきます。
ただし。
こちらは供給側が出荷調整をして値崩れを防ごうとするので近年はあまり見られません。
たまにニュースで、キャベツを出荷しないで畑の中で破棄している映像がテレビで流れることがありますが、あれがまさに値崩れを防ぐための出荷調整です。
なぜそんなもったいないことをするのかと言うと。
キャベツ生産にはある程度の経費がかかっており、これくらいの価格を維持しないと赤字になるというラインがあるので、たとえ豊作でも出荷量を制限するわけです。
また別の例で言うと。
現在では有機農産物が重要と供給のバランスを崩している可能性があります。
生産量は農業全体の1%にも満たない有機農産物ですが、消費需要というのはさすがにそこまで少なくないので販売業者や卸売業者が有機農業生産者を囲い込もうとする動きがみられます。
私のところにもその手の電話がよくあります。
「おたくの野菜を扱わせてください」
「無農薬野菜をうちで取り扱わせてくれませんか?」
みたいな業者からの電話が。
有機農産物が欲しいという需要の多さに対して、それを供給できる生産者が少ない。
だから有機農産物は引く手あまたの状況で、ある程度の高価格を維持することができています。
この先も同じ状況が続く保証はまったくありませんが、いまなら作れば売れる、しかも高く売れるオイシイ状況であることは間違いなさそうです。
小さな農家がやるべきことはビジネス思考を持つこと
商品の価値を高めるために栽培技術を磨くことはもちろん大切なことですが、それが高価格に直結するわけではありません。
商品価値を高める前に、まずは需要と供給を見る必要があります。
ほかにも様々な要素がありますが、やはり一番に考えるべきはここだろうと思います。
自分の商品はどれくらいの需要があるのか。
似たような商品がどれくらいあって、それを欲しがっている人はどれくらいいるのか。
市場として需要と供給のバランスはどうなっているのか。
こういう調査はいわゆるマーケットリサーチ、市場調査と呼ばれています。
ビジネスとして考えるなら当然やるべきリサーチなのですが、多くの農家はそこまで考えていません。
いいものを作れば売れる、いいものは高く売れる。
と思っています。
とにかく栽培にこだわり品質を高めれば、欲しい人は集まってくる。
と普通に考えています。
それが間違っているとは言いません。
高品質であることが認められれば高価格で取引されることもあるでしょう。
いいものを作るために努力することはもちろん大切なことです。
でも。
こだわりの行き着く先はしっかりと見極めるべきではないでしょうか。
美味しさを追求してものすごいこだわりを栽培に反映する。
それによってできた農産物はかなり高品質で世間的な評価も素晴らしい。
そんな商品があったとして。
じゃあ必ず売れるかといえばそんなことはなくて、かけたコストに見合った価格をつけなければ利益が出ませんから、手間や経費をかけすぎてそれが価格に乗っかれば買い手は減ります。
いくら手間ヒマかけて凄いものを作っても、それが
ニンジン一本1000円!
だったら欲しい人は限られますよね。
もちろんそこに価値を感じる人は買うでしょうけど、ニンジン一本に1000円を払う人は限りなく少なくなるのは容易に想像できます。
農業に限らず、日本では昔から技術神話というものがあって、いいものを作れば必ず売れるというような現在では通用しないような考え方があるのは確かです。
もちろんいいものは売れます。
売れるんですがそれは買ってくれる人がいて初めて成り立つことであって、欲しい人を見つけられなければ例え良いものであっても売れることはありません。
順番が違うんです。
いいものを作ってから売るのではなくて、いいものを欲しい人がいるから、そこに向けて高品質の物を作っていく。
それがビジネスとして当然の流れだと思います。
そして。
商品がどんな価値を持っていて、誰がそれを欲しがっているのか、どれくらいの需要があるのか。
それを調べるのがリサーチという作業です。
商品開発より前に進めるべきリサーチ
一般的にビジネスにおいてリサーチには3つのアプローチがあると言われています。
商品、顧客、マーケット
これを簡単にいえば
誰に何を売るか
それを欲しい人はどれくらいいるのか
ということです。
栽培にこだわって手をかけるなら、それに見合った価格をつけるべきだし、その価格で買ってくれる人がどれくらいいるのかを知らなければ商売になるのか見通しが立ちません。
そして。
こだわればこだわるほど、対象となる見込み客の数は減っていきます。
いつも言っていますが、最も最初に考えなければいけないのは顧客。
誰に対して商品を売りたいのか、ということです。
それがまず最初にあって、じゃあ次にその人たちに対してどんな商品を提供していけばいいのか、という流れが自然でしょう。
誰がどんなものを欲しいのかがわかれば、栽培をどれぐらいこだわればいいのか、どれぐらい品質を追求していけばいいのかが分かりますし、どんな価格をつけたらいいのかも自然と分かってきます。
安全性にこだわるのは構いません。
味を追求していくのは素晴らしいことだと思います。
小さな農家が小さな農家として生き残る道は、大規模化して大量生産しつづけ薄利多売で利益を上げていくそんな農業ではなく、少なくてもいいからこだわりを追求してそれに正当な値段をつけて売っていく。
そんな道だと思います。
高品質な物を作る。
それは農家として目指すべきところだとは思いますが、
そのこだわりは誰のためにやっているのか。
そのこだわりを理解してくれる人達がどれくらいいるのか。
こだわりを高価格という形で提供して、果たしてそれを認めてくれるのか。
農家自身がしっかりと考えるべきだと思います。
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・