農業を始めようと思ってすぐのころは全く意識しないのですが、農業研修を受けながら実際の就農が近づいてくるにつれて気になってくるのが
育てた農産物をいくらで売ったらいいのか
という問題です。
これまでサラリーマンとして働いてきた人からすれば、商品に自分で値段をつけて売るという行為はまったく初めての経験です。
いくらで売るのが適正なのかということは分からなくて当然です。
ですが、世の中にある商品はすべて値段がついています。
価格設定がされています。
どのように価格が決められているのか、そしてどのように価格を決めていけばいいのか、それを知ることは非常に重要です。
が、農協に卸しているとか、小売店と直接契約をしているとか、価格を決める権限が生産者にないときはそもそも考える必要はありません。
消費者に向けて直接販売していく、直売所や朝市などで自分で値段をつけながら売っていく、というときには避けては通れない道です。
ぜひ参考にしてみてください。
一般的には、商品価格を決めるときには3つの方法があります。
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かかった経費を積み上げていって、そこに利益を乗せていく
タネを買った、肥料を買った、ビニールマルチを買ったというような生産にかかる費用。
商品を発送するときに必要な包装・梱包にかかる資材代。
耕したり草を刈ったりするときに使用する機械代。
アルバイトを使って作業を進めたり家族に手伝ってもらったりした人件費など。
経営にかかわるすべての経費を計算して、そこに確保したい利益を上乗せした金額を、生産量で割ったときに出てくるのが商品価格になります。
たとえば、経営全体の経費が100万円かかったとして、欲しい利益が100万円、大根を1万本収穫できると想定するなら
(経費100万円 + 利益100万円) ÷ 1万本 = 200円
となり、大根を1本200円で販売すればいいということになります。
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競合する相手の価格を参考にして決める
自分が売りたいと思っている価格で、必ずしも商品が売れるとは限りません。
それは単純に競争相手がいるからです。
同じような品質の商品があれば、やはり同じような値段をつけなければ他社の商品ばかりが売れていくことになります。
だから、競合する相手がつけている価格をある程度参考にしながら自分の商品に値段をつけていくという手法がとられます。
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需要に基づいて適正価格を決めていく
その商品について、顧客がどのくらいの価格だったら買ってもいいと思っているのかを把握して、そこに近い形で値段をつけていくという方法です。
地域の直売所で野菜を買おうと考える人は、新鮮さはもちろんですが安さを求めてくる人が多いため、価格設定は非常に低いものになりがちです。
そういったところに出品していくためには、買ってもらうためにかなりの低い値段をつけざるをえないというわけです。
逆に、コーヒーを一杯1000円で売るような高級ホテルに直接野菜を卸すような場合であれば、商品の値段というよりは品質を重視されるので高価格設定でもとくに問題ありませんし、むしろ高く設定しないと買ってもらえない可能性すらあります。
自分が農業を始めて、商品となる農産物ができてきたときに、いったいいくらで売ったらいいのか。
このカボチャは1個いくらだったら買ってくれるんだろうか。
そういう状況に立たされたときにはまず、上記の3つの価格決めがあることを思い出して下さい。
そして自分はどのように価格を決めたらいいのかを考えてみてください。
目次
実際の現場では
一般的には、農産物に自分で値段をつけることができるときには、経費を積み上げていくという方法はあまり通用しません。
これは単純に商品価格がかなり高くなってしまうからです。
いわゆるメーカー小売価格がこれにあたると考えてもらえばいいんですが、生産者側がこの値段で売りたいと思っていても買ってくれる人がいなければ商売にはなりません。
買ってくれるであろう価格設定でなければ売れないんです。
だから、たいていはメーカー小売価格で売られることはほとんどなくて、実際に店頭でついている値段はもっと低いことが多いんです。
それは、需要に基づいた価格設定であり、競合する相手を考慮しながらつけた価格設定です。
つまり。
農業を始めます、商品の価格設定で迷っています、というのであれば世間のやり方を真似すればいいんです。
このくらいだったら売れるだろうという価格設定をする。
同じようなものを売っている農家はどんな値段をつけているのかを参考にする。
これだけです。
経費のことはあとで考えてください。
ちゃんと利益が出るように経営を改善していってください。
まずは売れることが第一です。
どこに売っていくのかという発想
直売所などで売られている商品価格は非常に低いです。
まわりに合わせていたら利益が出ないじゃないか、と思われた方。
それはそもそもの売り先が間違っていると考えたほうがいいです。
まわりに合わせて利益が出ないと思われるということは、実際に売っている農家がもうかっていないということです。
自分がそこに参入しても同じ道をたどるだけですからお勧めできません。
さきほどコーヒーを一杯1000円で売っているような高級ホテルの話をしました。
このホテルは、自身の価値(ブランド)を高めることでコーヒーの価値もあわせて高めています。
自動販売機で買えば120円なのに。
喫茶店で飲めば400円なのに。
この高級ホテルは1000円で売ることに成功しています。
同じコーヒーであっても、販売の仕方によってその値段は大きく変わってくるといういい例です。
あなたが売ろうとしている農産物の価値は、買ってくれる人が決めてくれます。
このくらいだったら売れるだろうという価格設定をする。
同じようなものを売っている農家はどんな値段をつけているのかを参考にする。
という価格の決め方をするということは、逆に考えれば
買ってくれる人によって価格設定が変わる。
おなじ商品であっても価値が変わる。
ということです。
ちゃんと利益を出したいのであれば、ちゃんと利益が出るような販売価格をつける必要があり、そのためにはちゃんとした価格で買ってくれるところに売る必要があります。
適正価格は買う人が教えてくれます。
農産物をどこに売るのか、よく考えてみてください。
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・