20年30年先を見通した長期計画は農家に必要なのか

農業を一生の仕事にしたい。
と考えて一大決心で農業の世界に飛び込む人は多いと思います。
せっかくやるんだから死ぬまでやりたい。
大きく稼げなくてもいいから、家族を養える程度に、安定して収入があればいい。
そのように考える方もいらっしゃるでしょう。
 
でも。
もし30歳で農業を始めたとして、定年までやろうと思ったら30年あるわけです。
30年間ずっと、安定して同じ形で、農業に関われるのかどうか。
農家として長くやっていけるのかどうか。
それは誰にもわかりません。
というのも。

現代においては時代の変化が早すぎるんです。
 
 
時代の変化は早い、とにかく早い。
30年先のことなんて誰にも分かりません。
例えば、自分の30年前の事を想像してみてください。
 
携帯電話はありましたか?
テレビのデジタル放送はありましたか?
インターネットはどれくらい普及していましたか?
電気自動車は走っていましたか?
音楽を聴くのはレコードでしたかCDでしたか?
ズッキーニはスーパーに売っていましたか?
給料はどうなりましたか?
物価はどれくらい変わりましたか?
 
普通に何気なく、変化しないで暮らしているようで、私たちは時代の変化に合わせて少しずつ身の回りの環境を変化させています。
ゆっくりと変化していくから気にならないだけで、ふと何年も前を振り返ってみると変化の大きさを実感できます。
 
商売をする者にとって、この変化はプラス要素にもなりますしマイナス要素にもなります。
新しい需要が生まれたり、逆にこれまであった重要が消えたりするからです。
同じものが売れ続けるとは限らない。
ふとした時代の流れでぜんぜん売れなくなったり、急に爆発的なヒットを飛ばしたりします。
これは。
規模の大小に関わらず影響を受けます。
農家が自営業である以上、時代の変化に対応していくことは必ず求められるんです。
 
今回は。
時代の変化について、農家が予測するべき未来はどれくらい先にあるのかを考えてみます。


 
変化の事例は山のようにある

スマホナビ

郊外に大手量販店ができたことによって衰退の一途をたどってしまった駅前通り商店街。
コンビニエンスストアが広がっていったことにより酒屋が吸収、淘汰されてしまった流れ。
全国どこに行っても同じようなフードチェーン店が立ち並ぶようになった無個性化。
同じ商品を扱っていて品揃えで勝負するしかない書店業界では小さな本屋が大規模書店に潰されていく。
乱立するホームページ制作会社をよそに、無料や格安でホームページを作成できるジンドゥーやアンバウンスなどのサービスが登場。
自動車の道案内ツールとしてのカーナビは、グーグルマップの登場により「スマホでナビ」に取って代わられた。

 

大規模店が小規模店を食い潰してしまった例、業界地図が塗り替わった例は山ほどあります。

全く予想しないところから巨大企業が突然ライバルとして出現し、これまでコツコツ育てて来たビジネスを一瞬で吹き飛ばす。
そんなことが普通に起こっています。

昨年まで安泰だった自分のビジネスが、来年にはなくなっているかもしれない。
自分ではどうしようもない外圧がやってくるんです。
バブル崩壊で日本はどうなりましたか?
リーマンショックで企業はどうなりましたか?
規模の大小にかかわらず、変動に耐えられなかったところは廃業を余儀なくされます。

 

変化に対応できる強さを持つ

大きな変化がやってきたときに対応できるのは、本当に強い事業体です。
衝撃に耐えるか、身軽に方向転換するか。
それは規模の大小ではなく経営の強さに左右されます。

漁船

大規模農業であれば経営者の舵取り手腕。
時代の流れをうまく読んで方向転換できるかどうか。
大きな船舶が急旋回できないように、大規模農業は小回りが利きません。
波に打たれて沈没しないためにできることは何かを常に問われています。
 
小さな規模で農業をやろうとするなら、とにかく強くなければ波にのまれます。
そもそも体力も筋力もないので、身軽にひょいとかわす動きができるかどうか。
船舶でいえば小舟かボート。
細かく向きを変えながら波をかわす、そういう機敏な対応。
これが強さになります。
 
これまで農業界にはいくつもの大きな波が押し寄せました。

減反政策
関税撤廃&貿易自由化
インターネットの発達
大手企業の農業参入
鶏インフルエンザ、BSE
放射能
・・・
 
これからもどんな大波が押し寄せてくるのか、予測できません。
 
有機農産物の安全神話が崩壊するかもしれません。
国産農産物の安全神話が崩壊するかもしれません。
流通革命が起こって物流で有利な地域のアドバンテージがなくなるかもしれません。
米の関税が撤廃されるかもしれません。
食料危機が来るかもしれません。
石油価格が10倍に跳ね上がってしまうかもしれません。
 
どんな未来が待っているのか。
自分の仕事にどんな影響があるのか。
それは誰にもわからないんです。

景気に左右されない強い経営はもちろん必要です。
予測が出来ないんだから遠い未来を見据えた舵取りなんて不可能に近い。
だからこそ。
時代の変化に対応できるフットワークを備えるべきだし、変化をキャッチするアンテナを持つべきだと思います。

 

稲穂

たとえば。
稲作農家としてやっていたところへ、関税撤廃による輸入量の増加。
価格の暴落。
そんなときにどんな対応ができますか?
そのまま稲作を続けていくことはほとんど不可能に近いですよね。
単価が大きく下がるということは、作れば作るほど赤字になりますから。
よほどブランド力があって価格を維持できなければ、輸入品と勝負することはできません。


大規模に、生産力を武器に戦っていた稲作農家は、この変化に対応できるでしょうか。
米がだめなら小麦をやろう!
とすぐに方向転換することができるでしょうか。
 
小さな農家のほうが対応しやすい。
これは言えると思います。
ただし。
すべての小さな農家が可能だという話ではなく、変化に対応できる農家であれば小さいほうが有利だということ。
米がだめなら小麦をやろう!
はじゅうぶんにできます。
小回りが利く身軽さが小さいことの優位性ですから。

 

未来予測と未来目標は違う

20年30年先のことなんて誰にも予想できません。
書店に行けば未来予測の本がいくつも並んでいますが、本を書くような著名な方の予測であってもけっこう外れることが多いんです。

デロリアン

1989年に上映された映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』。
この映画では2015年の未来が描かれていますが、そこでは自動車が飛行しています。
スケボーも浮いてます。
現実には・・・フィクション作品とはいえ未来予測は外れていますね。
 
 
予測できない未来を見据えて、どんな農業をやっていくべきかという舵取りをすることは、農家としてあまり意味があることとは思えません。
できるのはせいぜい3年先、5年先くらいを予測することくらいじゃないでしょうか。
 
近未来を予測し、変化に対応できる強さを身につけておく。
 
大事なことは強さ、だと思います。

ただし。
未来は予測できませんが、20年30年先にどうなっていたいかという
 
目標
 
はしっかりと決めていくべきです。
自分はどこへ向かうのか、どんな未来を描きたいのか。
その目標が一年ごとに変更になってもかまいませんが、走っていく方向を定めるためには目標は絶対に必要です。
未来を見据えていなければ、足元の一歩を踏み出すことはできませんから。
 

 

 

 

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