最初に決めるのは年収をいくら欲しいのか、という目標

 

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新規就農するときに、どんな作物を育てたいのかをまず決めると思います。
でも。
私はよく「そうじゃなくて、まず決めるのは見込み客だ」と言っていますが、どんな人に向けて売っていくのかを決めなければ本来はどんなものを作っていのか分からないはずです。

自分が作りたいものじゃなく、顧客が望んでいるもの

この意識がなければ、たとえイイものが出来たとしても売れません。
こってりしたラーメンを食べたい人に、かつおだしが効いたあっさり醤油ラーメンを売り込んでも「いらない」と言われるだけ。
そのこってりラーメンが超絶美味しいとしても、です。
家族7人がゆったりと乗れるミニバンが欲しいと思っている人に、2人乗りのスポーツカーはどうですか?と勧めても、「家族みんなが乗れない車はいらない」と言われるだけ。
そのスポーツカーがすごく優れた性能を持っていたとしても、です。

農産物にも性能があります。
それは安さであったり、見た目であったり、栄養価だったり、味だったり、安全性だったり。
顧客が農産物にたいしてどんな性能を最も求めているのかを考えて、そのニーズにマッチした農産物を提供していく。
これが商売を意識するということであり、自己満足に終わらない農家のあり方だと思います。

大事なことは、
自分が作りたいものじゃなく、顧客が望んでいるもの
だと言った理由がお分かり頂けるでしょうか。

今回は。
一歩進んで、自分はどんな農家になりたいのか。
どんな規模で、どんな働き方をして、どれくらいの収入を得たいのか。
それらを計画していく手法について書いていきます。
稼げるならどんどん稼ぎたい、ブラックだと言われようがガンガン働いてたっぷり儲けたい、という方には響かない記事ですが、

時間とお金を自分でコントロールしたい

必要な収入を得ながら余暇を楽しんだり家族サービスもしていきたい

と考えている方には参考になると思います。

 

単一作物は基本データがあるから時給がベース

トマト農家になりたい。
レタスだけをとにかくドカンと育てたい。
そういった単一品目農家であれば、農林水産省の統計データが参考になります。

品目別の経営データが載っているからです。

品目別経営収支統計

品目別経営統計

(調査は平成19年で終了)
調査母数がそれなりにあり、おそらく対象を無作為に抽出していることから、平均的な数字が出ていると思われます。
その数字を参考にすれば、トマト農家になったら栽培面積がどのくらい必要で、年収がいくらくらいになるのか、目安がわかります。

たとえばトマト。
家族農業労働1時間当たり農業所得が1057円となっています。
これはようするに時給1057円ということです。
1000時間働けば
1000時間×時給1057円=105.7万円
となり年収約100万円を得ることができます。
サラリーマン並みに2000時間働けば年収約200万円です。

このときに必要な栽培面積は、10aあたりの農業所得から求めることができます。
トマトの場合は78.2万円。
200万円÷78.2万円=2.558
10aの2.558倍、つまり約26aが必要だと分かります。

大玉トマト農家になってサラリーマン並みの2000時間働けば、
年収200万円を得ることができて、栽培面積は約26a

ということです。

トマトで年収500万円欲しいと思えば、
5000時間働いて、栽培面積は64aが必要・・・。
一人じゃ無理ですね。

 

別の記事で書いていますが、単一作物で時給を高めたいと思ったら、規模拡大がもっとも有効な手段になります。

小規模農家と大規模農家 戦略も顧客も生き方も違う

大規模化すればするほど、一般的に時給も高くなる傾向にあるようです。
逆に言えば、規模拡大して時給が高まらないと欲しい年収には届かない可能性が高い。
ということです。

 

年収を決めてしまうと改善策が見えてくる

目標を定める

現実の農家から得られる統計データでは、あまりにもさみしい数字で納得できる結果が得られません。
とはいえ。
大規模にやらないとちゃんとした収入が得られない、というのも悲しい話です。
欲しいだけ稼いで農業を楽しむ姿勢を新規就農者には持ってほしいと思います。

私がお勧めするのは、先に希望年収を決めてしまうという方法。

ようするに目標を決めてしまうという話。

目標を決めたところで現実に先輩農家が時給1000円で働いている事実は変わらないだろ?
と考えるのは間違っています。
一般的に農家は、自分が経営者であるという自覚もなければ、目標を決めて農業経営をしているわけでもありません。
ただ目の前にある作業をこなしているだけ、なことが多いです。
毎年同じことを繰り返しているだけ、という農家も多いです。

目標を決めるのはとても重要。
たとえば年収500万円と決めたとします。
それを一人で達成しようとするなら、自分が持っている(仮に)2500時間を使ってその収入を得なければならないわけです。
一般的な農家と同じような栽培で、同じような収穫量であれば、トマトの価格をかなり上げなければ達成は不可能です。
じゃあ栽培を工夫して収穫量を増やす必要があるな。
もしくは、栽培にかける労働時間を減らすためには何をすべきか。
と考えるようになります。

また、農協に出荷するのではなく自分で直販すれば中間マージンがなくなって利益率が高くなるんじゃないか。
と考えます。

無農薬などの付加価値をつけたら単価は上がるだろうか。
贈答用をメインに事業を組み立てたら高単価で取引できるだろうな。
魅力的なキャッチコピーなどの商品の見せ方を工夫したら高くても売れるんじゃないか。

こんなふうにアイデアがでたりします。

というように。
目標の数字を達成するために必要なことをあれこれと考えるようになります。
ただ漠然と目の前の作業をがんばってやっていても成果は大きく変わりません。
現状を理解し、足りなければ改善策を考え、それを実行してみて、結果から検証して、また改善策を考えていく。
目標達成のための改善を繰り返さなければ、いつまで経っても現状は変わりません。

まずは目標を決めること
つまりは年収を決めること。
これさえ決めてしまえばあとは勝手に進んでいきます。
自分の労働時間には限りがありますから、ブラックな働き方がいやなら多くても2500時間でしょう。
一般的なサラリーマンと肩を並べたければ2000時間。
そうすると、年収500万円で年間2000時間労働なら、時給は2500円になります。

必要な栽培面積は統計に出ているデータ「10aあたりの農業所得」をみればわかります。
経費がどれくらいかかるか、というのもデータがあります。
それらを参考にしながら、でもその数字どおりでは目標年収には絶対に届かないなぁということを理解しつつ、改善策を練っていく。

すべては年収を決めてしまうことがスタートになります。

 

多品目栽培農家のデータがない

この記事を読んでいただいている方のなかには、有機農業では一般的な

多品目栽培

をやっている、もしくはやろうとしている方もいらっしゃると思います。
いわゆる野菜セットをつくる農家です。

この場合、公表されている数字がおそらくないためまったくやったことがない人が予測を立てることすらできないのが現状です。

私自身の経験からある程度の目安をお伝えしておきますので、参考にしてもらえれば計画を立てられると思います。

野菜セットの品目・量によってまったく変わってくるのであくまでも目安ですが、
10種類詰め合わせの野菜セットを作ったとして、だいたい

10aあたり5~10件分/週のセット

を販売できると考えてください。
だから、そのセットが2000円だとすると仮に送料500円と想定して

1週間で2500円×5~10件 = 1.25~2.5万円

これを年間50週発送していくと、

1.25~2.5万円 × 50週 = 62.5~125万円

が売り上げとなります。

ここから経費を引いていくと、利益率はだいたい5~7割くらいなので仮に6割として

37.5~75万円

が多品目栽培の野菜セット農家で想定される10aあたりの農業所得になります。

 

家族農業労働1時間当たり農業所得、いわゆる時給についてですが、これは正直なんとも言えません。
他の農家がどういう働き方をしているのか分かりませんから。
ただ、私自身のことでいえば経験を積み重ねていくにつれて時給は上がっており、
5年目には時給2000円を超え、9年目には時給3000円を超えました。
栽培面積は初年度0.3ha、12年目の今でも1ha程度です。

栽培は決してうまくありませんし、けっこう多くの失敗をしているので、この数字(時給)が特別に高いわけではありません。
ある程度の参考にしていただいて、最初からは難しくてもそのうち時給3000円くらいに手が届くんだというくらいに考えておいてください。

 

 

今回のチェック

●大規模化すればするほど、一般的に時給も高くなる傾向にある

●先に希望年収を決めてしまえば、目標の数字を達成するために必要なことをあれこれと考えるようになる

 

 

 

 

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