農法にこだわるのではなく情報発信に徹する

前回の記事では、消費者目線に立たなければ農法は意味がないということについて書きました。
とにかく情報発信が重要だという話です。

消費者目線に立たなければ農法は意味がない

新規就農者にかぎらず、●●農法に固執している農家というのは、
自然栽培の理念に共感して
とか
自然農法を世の中に広めたい
といった栽培を中心にした考え方を持っています。
でも。
農業を仕事にするのはなぜかといえば、
それでお金を稼ぎたい
農業で家族を養っていきたい
と思っているからですよね?
お金が絡まなければ、それは農であって農業ではないんです。

農と農業はまったくの別物 趣味と仕事の決定的な差

ということは。
栽培だけではなく販売のことも考えなければならないということです。
だからこそ。
売りたいから農法のネームバリューを利用する。
自分の思想に●●農法が近いから、その名前を使っている。

こういうのはあって当然の販売戦略だと思います。

私の考え方としては。
販売において農法を主張するのは消費者にとってプラスです。
欲しい農産物を探すための入口になるから。

栽培において農法を主張するのは生産者にとってマイナスです。
栽培に制約をかけて可能性をつぶしているから。
技術のばらつきがあることを考えれば消費者にとってもマイナスです。

このあたりの考え方について、今回はくわしく書いていきます。

 

差別化できなければ駆逐される

結局のところ、ひとことでまとめてしまえば
情報発信が重要
だということです。
どんな人が育てていて。
どんな考え方を持っていて。
どんな肥料や資材を使っていて。
どれくらい経験があるか。

農法は、消費者に知ってもらうためのきっかけにすぎません。
そこから販売に繋げていくためには、自分をさらけ出して自分を知ってもらうための努力が必要になります。


他と違うのはどこか。
お客様が自分のところから買わなければならない理由はなにか。
これを常に考えます。
他の農家と違いがなければ、他で買えばいいだけの話だからです。

ここでしか買えないものを作る。
つまりは差別化。

そういう戦略のもとで営農していかないと、強力で優秀な農家が現れたときにまっさきに駆逐されてしまいます。

シャッター通り2
大型商業施設が建つことによって、駅前商店街がすたれていくのが良い例です。
安さや便利さで勝負したら小さな商店は勝てないんです。
駅前という立地にアグラをかいていた商店は、ほかでは買えない独自の商品を持っていなければ生き残れないという当たり前の戦略を無視したために、どんどんつぶれていきました。

差別化できていないせいで駆逐される。
あなたはそんな未来を望みますか?

 

競争が激しい飲食業界をみればよくわかる

農法を主張するだけでは、差別化戦略としては片手間です。
なぜなら、自然農法や自然栽培を主張して生産・販売している農家は世の中にたくさんいるからです。
彼らとも差別化できなければ駆逐されてしまう可能性は大いにあります。

レストラン店内

たとえば。
休日にランチを食べに行こうと考えているとします。
そのとき、どこに食べに行こうか調べますよね。
雑誌を見てみたり、インターネットで検索してみたり。

ジャンルや地域、価格帯などからお店を絞っていったとして。
目的に合わせて選択肢を絞ったとしても、まだ候補がいくつもあります。
この数軒は希望通りのお店だけどどこにしようか・・・。
こういうこと、よくありますよね。

そこから先は。
食べログのような世間の評価を参考にしたり、お店のホームページをチェックしてみたり、エイヤァッと直感で決めたり。
希望のなかから絞り込んでいきます。


このときに。
希望にマッチしているにもかかわらず選ばれないということは、お店にとって大きな痛手です。
多くの見込み客を逃していることになるからです。

 

農法という土俵で戦うと熟練農業者が敵になる

農法による主張もこれと同じことが言えます。
自然農法の野菜を求めている人に、自然農法の野菜を売る。
これは、先ほどの飲食店の例でいうと
目的に合わせて選択肢を絞ったけれども、まだ候補がいくつもある。
という状態です。
自然農法野菜を売っている農家はたくさんいます。
そのなかから自分が選ばれるにはどうしたらいいのか。
そこを考えなければならないんです。

もし。
自然農法の理念に忠実に、教えられるがままに実践して、それなりのものができたとします。
でもそれは。
新規就農間もないころの出来としてはいいというだけで、熟練者はもっといいものをつくってくる可能性が高いです。
自然農法という同じ規格のなかで、熟練農業者に勝てますか?


そして。
競争に勝てず、売れなければ価格で勝負するしかなくなります。
せっかくこだわって栽培しているのに価格を下げるのは大きな損失です。
経営的に行き詰まるかもしれません。


農法の枠にこだわっていると、こんな悲劇が待っている可能性があります。
自然農法の農産物が欲しい消費者と、自然農法を実践し提供していく生産者。
需要と供給の関係があることを忘れないでください。

 

情報発信しかない

じゃあどうするべきでしょうか。
その答えは何度も書いているので分かるはずです。

積極的に情報発信して、自分を知ってもらう努力をして。
あなたから買いたい。

と思ってもらえることが大事だということです。

結局のところ、それが差別化になります。
農法にこだわるのはなく個性を主張する。
ということです。

参考になれば幸いです。

 

 

これから農業を始めようとしている方へ

農業をやってみたいけど一歩を踏み出す勇気が出ない。安定した収入を得られるか分からない不安。作物をうまく育てられるんだろうか、作ったものが適正価格で売れるんだろうか、そんな悩みを抱えていませんか?
分からないことを相談したり、仲間同士で励まし合ったり、これまでなかった農業のカタチを生み出したり。
これから新規就農したいと考えている人にぴったりの農業コミュニティがあります。

詳しくはこちら

多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?

たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。

このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。

それは・・・

有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?

有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。

「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」

と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、

有機農業はちゃんと稼げる

ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。

ただし、条件があります。
それは・・・

つづきはこちら

 

関連記事

  1. 【大解剖】有機&多品目栽培の野菜セット農家って何?有望なの?稼げるの?

  2. 新規就農のマーケティングフロー

  3. 安全神話に頼り切った農家は綱渡りをしているようなもの

  4. 多品目栽培は定食屋をイメージすると気持ちがラク

  5. 土壌分析は必要なのか?多品目栽培の特殊な事情

  6. 農産物の直接販売ではマーケティングを意識しよう