農業研修は受けるべきなのか

新規就農をしたいと考えたときに、準備としてやっておかなければならないことは数多くあります。
栽培技術の習得や資金集め、販売先の確保、農地や家を借りる、など。
どれも重要なのは間違いありません。
どれが欠けても就農できないと言ってもいいくらいです。

書籍の積み上げ
それら必須ポイントをおさえるため、就農を希望する人はせっせと情報を集めようとします。
書籍から、ネットから行政から。
書籍から学ぶのは以前から行われている情報収集のひとつですが、インターネットが発達した現在では、実際に営農している農家から発信される情報や農業支援を目的としたサイトが発信している情報などから、ものすごい膨大な情報を得ることができるようになりました。
情報を仕入れて、自分なりに解釈・理解して、あとは実践してみるだけだ。
という有能な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それが出来ると思ってしまうほど情報はあふれかえっています。

ここで考えてみたいことは。
こんなご時世で、農業研修は必要なのだろうか、という根本的なこと。
独学で学んで栽培技術や経営力を身につけ、新規就農して成功している人は実際にいます。
農業研修を受けなくても成功と呼べるような結果を残している人はいるんです。
その代表例は山下一穂氏でしょう。

じゃあ、なぜ研修する必要があるんでしょうか。
研修を受けてから就農する人と、誰からも教わらずに就農してしまう人の違いはなんでしょうか。
もし研修をしなくてもうまく営農していけるのであれば、研修で一年二年という長い時間を費やすのはもったいないですよね。
というわけで今回は、なぜ研修をする必要があるのかという根本的な問いに触れていきたいと思います。

 

自分に足りないものを補うのが農業研修

結論からいえば。
研修によってなにを学べるのかを知り、自分には必要ないと思えるなら研修しないで新規就農してしまったほうがいい。
ということです。
実践に勝る経験はありませんから。

では農業研修で学べることってなんでしょうか。

  1. 栽培技術
    耕したり畝を立てたりビニールマルチを張ったり、という基本的な耕作技術
    タネを播いて苗を育て、病虫害を回避して健全に作物を育てていく栽培管理技術
    現代農業には欠かせない農業用機械の操作
    有限な労働時間をうまく活用していくための労働管理、省力技術
     
  2. 経営ノウハウ
    営業・集客など販促に関わるノウハウ
    誰に対してどのように売るか、といったマーケティング
    経営計画・作付計画の立て方
    雇用等の労務関係
     
  3. 新規就農へのステップ
    非農家出身者が農家になるための道すじ
    農地や家を借りるときの体験談
     
  4. 生活リズム
    農家の生活を体で体験する

 

ほかにも色々ありますが、ざっと挙げてみただけでも学べることは多岐に渡ります。
たんに栽培だけできれば農家として合格だというものではありませんので、経営的な部分も含めて学ぶことができるのは農家研修のメリットだと言えます。

 

さてここで。
研修で学べることが分かった、その次に考えるべきことは
自分に足りないものは何か
研修によって自分は何を得られるのか

です。
上記で挙げたようなことは大体わかっている、というのであれば研修を受ける必要はありません。
即就農で大丈夫です。

栽培においては自分なりの考えがあって、主な栽培管理作業はだいたいわかる。
人に学んでまでやり方を変えたくない。
生産しながら、営業・集客・販売を行って利益をあげていく一連の流れは把握している。
農地を借りて家を確保して、実際に就農するまでのステップはだいたい分かっている。
一年を通して農家の暮らしをしていくのはどんな感じなのか、体力的にも精神的にも自分に向いているのか適性を理解している。

これらにすべて当てはまるようなら研修は必要ありません。
明日にでも新規就農することをお勧めします。

でもそうではないなら。
おそらくほとんどの人が該当しないと思いますが、不安要素が少しでもあるなら研修を受けたほうが無難です。
そして、研修先を決めるまでには。
自分に欠けているところはなにか、農業研修によって学ばなければいけないのはどんなことか、をはっきりさせる必要があります。
逆にいえば、自分に足りないものをはっきりさせると、どんな農家で研修を受けたらいいのか分かってくるということです。
栽培技術を重点的に学びたいなら、しっかりとした栽培技術を持っている農家へ。
経営的な要素が足りないと思うなら、利益をしっかりと上げている農家へ。
非農家出身で地縁がないところで就農したいなら、そのような経緯をたどってきた農家へ。
大規模化を想定しているなら、従業員をかかえて法人化している農家へ。
というように最も学びたいことを明確にすると農家選びはスムーズに進みます。


研修を受けるのに費やす時間は膨大なものです。
本当に必要かどうかをしっかりと考えて、もし必要なら行動を起こしましょう。

 

研修の是非よりも学ぶ姿勢を問う

とはいえ。
あんまり研修にこだわるのもどうかと思います。
本当に必要なのは、学び続ける姿勢だからです。
たとえば。

1.2年間の研修を受けたあと独立して、農業をはじめた1年目
2.すぐに就農して、2年間多くの失敗を重ねて迎えた3年目

まったく同じ人物が、別の2つの人生を歩んだとしたら・・・。
同じ2年という期間を過ごしてきて3年目を迎えて、結果はどうなると思いますか?

就農して自分の畑を耕作する。
研修して他人の畑を耕作する。
この両者には大きな違いがあります。
研修では他人の圃場を管理することになるせいか、現場で起きていることを主体的にとらえにくいものです。
他人の畑だから、という意識がついて回ります。
失敗したら売り上げが減って生活が・・・という心配もありません。
どこか受け身になりがちです。
でも就農してしまえばそうも言ってられません。
生活がかかっています。
失敗すれば結果がすぐに自分の身に降りかかってきます。

危機感を持って主体的に行動する2年間と、危機感なく受け身で過ごす2年間。
まったく違った2年間になります。
実践に勝る経験はなし、というのは正しい意見です。
緊張感をもって営農してきた3年目のほうが、実践的な経験値は高くなって当然です。

それじゃあ研修はいらないじゃん!
と結論を出すのはちょっと浅はかです。
研修を受けないということは、すでに10年20年と実戦経験を積んできた農家のノウハウを得ることができないということです。
その農家がやってきた失敗を知ることができないということです。
もし研修を受けていれば失敗しなくても済んだはずの致命的なミスを、独学でやったばかりに犯してしまう可能性だってあるんです。
先に営農している農家が持っている経験やノウハウは、研修によって受け取ることができる貴重なものです。
いきなり就農した人が実戦経験を積んでいる2年間で、研修した人はもしかしたら10年分の経験を得られるかもしれないんです。

その貴重な経験やノウハウ、失敗談を共有して自分の営農に活かすことができれば、研修には10年分の価値があることになります。
でも。
せっかく研修を受けても得られるものが少なければ、もしくは得るための姿勢が足りなければ、1年2年を無駄に過ごしてしまうことになりますし、それだったら研修を受けずに独立しておけばよかったじゃないかということになります。
研修ありなし
結局のところ。
研修を受けて何をどれくらい得られるのかは、それを受け取る人次第なんです。
多くのものを受け取ることができるかどうか。
そこに農業研修すべきかどうかの答えがあります。

ということは。
農業研修すれば必ず優位に農業経営ができるかというとそんなことはありませんし、農業研修しないで独立就農したからといって急成長を遂げるわけでもありません。
ストレートに言ってしまえば。
デキル人は研修しなくたって結果を残すし、デキナイ人は研修しても結果を残せません。
研修するかどうかは現在の置かれている状況で決めたらいい。
自分の現在の能力を見て決めたらいい。
研修が身になるかどうかの鍵は、研修先の農家ではなく研修生自身の学ぶ姿勢にある。
ということを覚えておいてください。

 

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