世間の風潮、世論は有機農業にたいして好意的です。
メディアがいいように取り上げてくれることが多いため、有機農業や有機農産物にたいしてものすごくいいイメージがついています。
これは事実です。
実際、日本の農業全体の1%にも満たないシェアしかない有機農業がこれほどもてはやされるのは、メディアの洗脳があったからこそでしょう。
農薬の危険性を煽り、環境問題とからめ、現在主流の慣行農業がいろいろな問題を抱えていることをクローズアップしながら、それと対比させる形で有機農業をヨイショする。
事実とは違っていたり、小さなことを大きく見せたり、間違った表現をしていたり、いろいろとおかしなところはありますが、有機農業を推進する人たちにとっては追い風になってきたことは間違いありません。
でも。
本当は有機農業にも、問題は山のように積もっています。
有機農業がもっとシェアを伸ばしていくために越えなければならないハードルは数え切れないほどあります。
私自身はただの農業者ですし、大きなことを書けるだけの力はありませんが、問題があることくらいは現場にいればすぐにわかります。
その一端をご紹介することで、有機農業を崇拝している方々への目覚ましになれば幸いです。
(画像:ポータルサイト「有機農業をはじめよう!」より)
目次
有機農業をとりまく3つの問題
有機農業関係者にとって、メディアや世論が背中を押して応援してくれる今の状況はたいへんありがたいことです。
それに応えようとしてがんばっています。
もっと有機農業が発展してシェアを伸ばしていけるように、多くの方々が努力しています。
でも現状は。
大きな欠点をかかえた問題だらけの農業なんです。
まだまだ未熟な、慣行農業には足元にも及ばないヒヨっこなんです。
おおきくみると、有機農業には3つの欠点があります。
ちなみに。
環境に対する負荷が低いとか、栄養価が高いとか、体にいいとか、人によって意見が分かれていて議論が続いているような要素は外しています。
個人的には、環境問題や健康問題については有機農業はあまりアドバンテージはないと思っていますし。
そこで勝負するような農業であってほしくないという願いもあります。
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収穫量がひくい
有機農業のなかには非常に優秀で、ものすごい高品質なものを高い収穫量で提供できる農家もいますが、全体としてみれば収穫量が低いのは事実です。
生産性が低い農業であることは疑いようがありません。
それは。
農薬を使わないことで、虫や病気を防ぎきれず収穫量が減ってしまうから。
収穫量よりも育てやすさや味を重視した品種を使うから。
多くの品目をちょっとずつ生産する効率の悪い形態の農家が多いから。
栽培技術がまだまだ確立されておらず、それぞれの農家の技術レベルによって結果が大きく左右されてしまうから。
と、いろいろな要因が考えられます。
栽培技術そのものは、マニュアル化が進んで一定の成果をあげている慣行農業の足元にも及ばないのが現状です。 -
価格が高い
上記と関連して、収穫量が少ないから結果的に価格が高くなってしまう、ということは言えます。
高くしなければ農家が生活していけないからです。
さらに。
除草剤をさっとまけばあっというまに処理できてしまう雑草を、せっせと時間をかけて取っていくなど、労働生産性が低いことも価格が上がってしまう大きな要因になっています。
無駄に思える労働があって、収穫量が少ないから結果的に商品価格が上がっている。
これは有機農業の大きな問題点です。
まだまだ改善していくことができる、大きな伸びシロとも言えますが。
一方で。
いまの一般的な農産物の価格が安すぎるんだ、本来であればもっと高い価格で売らなければ農家がやっていけない、という意見は慣行農業による農産物でよく聞かれます。
そういう意見もわからないことはないですが、ものの値段というのは需要と供給のバランスによって決められていることを忘れてはいけません。
価格が安すぎると感じるのであれば、それは供給が過剰なんです。
同じものを生産する農家がたくさんいるのに、そこで生き残っていくのは大変です。
需要を掘り起こしていく、需要があって供給が少ない分野へ移っていく、といった経営努力をしなかった慣行農業の問題がここにあります。
有機農業では技術不足で価格が高くならざるをえない。
慣行農業ではマーケティング不足で価格が安くなりすぎてしまった。
それぞれに問題をかかえている感じがします。
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農薬ありきの無農薬
収穫量が低くて、価格が高い。
これらは有機農業自体がかかえている未熟な部分によって起きていること。
もうひとつの問題は、問題に感じている人がいるというだけで実際には問題ではないかもしれません。
立派な戦略だからです。それはブランドイメージ。
メディアが有機農業をよいイメージで取り上げてくれるおかげで、そこにブランド価値がつき、商品の価値を超えた値段がついているんです。
まあ、ブランド価値が付くこと自体はいいと思います。問題なのは、その取り上げられ方。
農薬を使った一般的な農業が危険で、健康問題や環境問題を引き起こしている
といった表現が使われることがあるせいで、危機感をあおられた消費者が有機農産物を求めている図式があるんです。
農薬を否定して慣行農業をよくないもの危険なものとして広めることで、相対的に有機農業の価値が上がる、という手法。つまり。
農薬を使った一般的な農業があるから、農薬を使っていない農業が際立つ。
有機農業の価値は、慣行農業があるから高くなる。
というわけですね。
ひとつのブランドとして有機農業のイメージをよく見せるのは、販売戦略としては素晴らしいと思いますが、他を否定して己を持ちあげる手法には賛成できないなぁ。
と個人的には思います。
そもそも。
需要と供給のバランスによって価格が決まるんだから、農業全体の1%に満たない有機農業が高く評価されるのは当然でしょう。
ちょっと需要が増えただけで供給が追い付かなくなりますから。
需要に供給が追い付いてきて、ほしいと思った人がかんたんに手に入るようになってきたそのときが、有機農業が発展していけるかどうかの分岐点になるはずです。
というように。
有機農業にまつわる3つの欠点を挙げてみました。
かんたんにまとめてしまえば。
収穫量がひくいうえに栽培が不安定、供給が足りないから価格が高い。
ブランド化戦略がうまくいっているのでプラスアルファの価値は高い。
これが有機農業だといえます。
有機農業のハンバーガー戦略
この有機農業の立ち位置について、ハンバーガーを例にすると分かりやすいです。
日本においてハンバーガーは、マクドナルドのシェアが圧倒的に大きいですが、モスバーガーやサブウェイ、バーガーキングなどが全国にチェーン展開をしています。
こういったチェーン展開しているハンバーガー店だけしかないのかというとそんなことはなくて、地元にしかない小さなこじんまりとした個人経営のハンバーガーショップもあるんです。
そういったお店は、チェーン店のものよりも高価格だけど、こだわりがあってそこでしか味わえない希少性がある。
大手にはないブランド価値を持っています。
そういった店にもお客様はつきます。
ファンがいるんです。
小さな個人店に存在意義がないとは言えないでしょう。
有機農業は科学的にみるとまったく無意味で必要がない農業だと否定する方がたまにおられますが、ハンバーガーで例えるとその意見がいかに馬鹿げているかが分かります。
安ければそれでいいんでしょうか。
こだわりをもって作ることは悪なんでしょうか。
慣行農業があって有機農業もある、そういった多様性を認めるべきではないでしょうか。
有機農業はまだまだ発展途上の段階です。
農薬を使った農業が技術を高めて安全性を向上させてきたように、無農薬農業もどんどん収穫量が上がるように、そして安定生産できるように変わればいいんです。
シェア1%に満たない今の有機農業は、地元の名もないハンバーガー屋のような立ち位置で合っていますが、技術向上に合わせてチェーン展開できるようになっていけばいいんです。
有機農業は、まだまだこれから発展していく農業です。
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・