なるべくお金をかけずに収入を得たい。
小さな投資で大きなリターン。
出費を出来るかぎり少なくして、最大限の利益を取るような農業がしたい。
このように、
出費・経費をなるべくおさえて、結果的に利益が大きくなるような思考は、農業にかぎらず経営をしていれば普通に湧きあがってくる考え方です。
出るものが小さければ残りが大きくなるんだから当然のことですよね。
もちろんその気持ちはわかります。
でも、ここには落とし穴がある。
ということも知っておいてほしいと思います。
知っておかなければ、なかなか成長できない、成長が鈍い、気がついたら停滞・衰退してた!
なんてことになりかねませんよ。
目次
原価率を知ることの重要性
商売をする上で必ず考えなければいけないこと。
それは、売上と経費の関係です。
なにかモノを作ることを考えてみてほしいんですが、
まず材料を買ってきて、それに手を加えて、もともとなかった新しいモノを生み出すことで、それが商品となって世に出るわけで。
最初にくるのが、材料を買う、ですよね。
これが経費(ここでは原材料費)。
次に、つくった商品が売れて、お金に変わっていけばそれが売り上げになります。
自分が生活していけるだけの収入、もしくは会社が存続できるだけの売り上げになるように、価格を決めなきゃいけないので、当たり前ですがかけた経費より低い金額で売ることはありません。
ここには
売り上げ - 経費 = 利益(収入)
という計算式が成り立ちます。
なにをいまさら・・・と思うかもしれませんが、ここで覚えておいてほしいことは、
経費をかけなければ売り上げは生まれない
ということ。
原材料費、人件費、設備投資、水道光熱費などなど・・・。
いろんな経費をかけて、つまりお金をかけて材料を買ったり道具を買ったり、技術(ウデ)を磨いたりして、その原材料に手を加えて。
もともとあったものに付加価値を生み出すことで、それが商品になり、売れることで売り上げになる。
ということ。
さて、
この経費と売上との関係。
どれくらいの経費をかけたら、いくらくらいの売り上げになるのか、
という割合比率(原価率)は、もちろん個々の努力の差はありますが、
商品によって業界によって、大体平均的な数字というものが存在します。
たとえば飲食業。
原価率はだいたい30~40%くらいです。
これが理容・美容業になると、
原価率は10%前後。
人件費の割合が多いですが、利益率の非常に高い業種です。
スーパーのような小売業だと、原価率は70%前後くらい。
商品をつくるというよりは、仕入れて売った差額をとる商売なんだから原価率が高いのは当然ですよね。
というようにジャンルごとに目安があります。
これは最低限かけるべき経費のめやすになるもので、
これを大きく外してケチるのは危険です。
材料をケチりすぎて思ったような商品が生み出せなかったり、 常識から大きく外れることをやって商品に欠陥が出ることだってありますから。
じゃあ農業の原価率はどうかといえば。
品目ごとに違うのでここではっきりと書くことは難しいんですが。
だいたい30~50%くらいでしょうか。
農業に関係する数字は、農水省のホームページに行けば統計データがのっています。
そこに書かれている数字、売上とか経費とか、その割合っていうのは実際の農家の実績であり、ある程度は参考にできます。
もちろんその数字がすべてではないですし、それが見習うべき優秀なデータであるかどうかはまた別の話ですが。
苦しいのは「経費が先」という事実があるから
売上と経費の割合はある程度決まっているということは。
言い方を変えれば、経費に見合った利益があるということ。
これだけ経費をかければ、これだけの売り上げになるという見込みが立つということです。
ということは、
もし大きく稼ぎたいと思うなら、大きく投資すべき。
ですよね。
原価率50%の業界で、経費を500万円かければ、
売り上げは1000万円が見込める。
だったら、
経費を5千万円かければ、売り上げは1億円になるということ。
逆に、
あんまり経費をかけたくないなぁ、って300万円に絞ったら
売り上げは600万円くらいしか見込めなくなるということ。
もちろんそんな単純な話ではないんですが、
大事なことは、自分が欲しい収入がありそれに向けて生産をしていくなら
かけるべき経費を大きくケチってはダメだということです。
その業界にある統計的な数字は、すでにやっている事業者の根拠ある数字ですから。
じゃあここで。
この数年で一気に事業を成長させたい、売り上げを伸ばしていって1年でも早く生活できるような収入に到達したい、と考えたとして。
注意するべき点があります。
たとえば、
売上高500万円、経費200万円
という農家がいたとして。
これを翌年には売上高1000万円に成長させたいと考えていたら・・・
経費400万円を先にかけなければならないということですよね。
経費をかけることで売り上げが生まれるんですから、先にかけるのは経費です。
ということは、
売上高500万円のときに、翌年にかかる経費400万円を突っ込んでいく。
この厳しさが分かるでしょうか。
この例は1年で売り上げを倍にするという急成長です。
極端かもしれません。
でも、たとえ急激な成長でなくても、先に大きな経費がかかるのは事実。
成長して伸びていくときに金銭的に苦しいのは確実なんです。
だからといって成長しないわけにはいかないんですが、
これを知っていると知らないでは、心のゆとりがまったく違います。
がんばっているのになんでお金が残らないんだ?
売り上げのわりに出ていく経費が大きすぎるのはなぜだ?
そんな葛藤が少なくなります。
気持ちだけは楽になります。
維持するのは簡単だけど成長は楽じゃない
いちおう断っておきますが、節約は大事です。
いらない経費を無駄にかけて、経営を圧迫してしまうよりは、
効果のあるところに投資したり、削るべきところはしっかり削ったりして経費を抑える。
これは必要なことでしょう。
でも、最低限かけるべき経費があるので、そこまでムリに削ると成長を阻害しますよ。
今回はそんな話になっています。
もし仮に。
強い節約思考でケチケチして、それなりに利益が残ったとしても。
そもそも成長期には、売り上げよりも先に大きな経費がかかるからどのみち苦しいわけで。
苦しいからといって前年の経費を下回るような出費で抑えていれば、売上高そのものが下がりかねません。
誰しもが衰退したいとは思わないし、収入が減っていくことを指をくわえてただ見てるわけにはいかないですよね。
目標があればそこに早くたどり着きたいと思うのは当然の心理ですし。
だったら勇気を持って、経費をかけていく。
それも必要なことでしょう。
このとき、ぜひ心に留めておきたいことは。
維持するのは簡単だけど成長は楽じゃない
これを覚えておく、 心にひっかけておくだけでも、
苦しい時の支えになるかもしれませんよ。
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・