農法の呪縛から解き放たれて一流農家を目指そう

新規就農したいと思っている人の多くが有機農業に興味を持っています。
少なくない割合の人が有機農業をやりたいと考えています。
そして。
有機農業を目指しているのであれば、自然栽培とか自然農法といった言葉は聞いたことがあると思います。
ほかにも、炭素循環農法だったり天然農法だったり、有機農業の世界にはナントカ農法といって独自の栽培方法を追求したものが数多く存在します。
栽培者のなかにはそこに入れ込んでいる人もたくさんいて、自分が理想とする作物を育てるために日々努力を積み重ねておられます。
今回は。
そのような農法に縛られてしまって、こだわりすぎてしまって身動きができなくなる恐さについて書いていきます。
さらに、農法の枠を超えるメリットについても触れていきたいと思います。
ぜひ最後までご覧ください。

 

農法は栽培における基本の型

農薬を使わず、化学肥料も使わない。
そういう栽培方法を総称して有機栽培・有機農法と呼んでいますが、そのなかには数多くの流派が存在します。
自然農法
自然栽培
自然農
炭素循環農法
循環農法
天然農法
バイオダイナミック農法

まだまだたくさんあります。

それぞれの農法には、その農法の特徴ともいうべき栽培へのこだわりがあります。
耕してはいけません。
生えてくる草はすべて圃場外に持ち出すべし。
肥料は毒です、与えてはいけません。
▲▲という資材を使ってください。
などなど。

無農薬・無化学肥料という前提にさらに上乗せするような形で、さまざまなこだわりをプラスしているのがナントカ農法と呼ばれているものです。
これらの農法ひとつひとつを見ていけば、素晴らしい農作物を育てるために色々と思考をめぐらせて辿りついた答えなんだと、それぞれの農法の素晴らしさを感じることができます。
どの農法がよくて、どの農法がよくないといった話ではありません。
どれも素晴らしいんです。
おそらくどの農法で栽培をしても、うまく育てば味も見た目も最高の農作物になると思います。

フォークの握り
(画像参照:週刊ベースボールオンライン

これらの農法は、言ってみれば基本の型です。
有機栽培における教科書のような存在で、別の表現をすれば空手の型のようなもの。
野球でいえばピッチャーが投げる球種、ストレート・カーブ・フォークみたいなものです。
型をしっかり学ぶことは大切なことですし、基礎がしっかり身についていれば応用がききます。

 

でも農法は栽培の型でしかない

それぞれの農法は素晴らしいものです。
なにが素晴らしいのかといえば、いいものを作ることにこだわった栽培方法が素晴らしい。
とにかくいいものを作るために全力を傾け、そのノウハウを体系化して世の中に広めた功績は称賛に値します。

でも。
そこには、生産効率や労働コストなどは考慮されていないことが多いです。
機械化しにくい作業が含まれていたり、とにかく手間がかかる方法であったり、農家であれば当然考えるべき経営が考慮されていません。
農家は育てた農作物を売ってお金に換えなければ生きていけませんし、お金を動かすことで社会に貢献しています。
商売である以上は、一円でも多くの利益を上げるために生産・販売に力を入れます。

ところが農法は、そんなことまで考えていない。
事業性を考慮せず、とにかく栽培を突き詰めていくことだけを考えています。
あくまで農。
だから農の方法という意味で農法と呼ばれるのかもしれません。
経営までを含めて考えられた農法がもしあるなら、それは農業法という呼び方がふさわしいと思います。

これは野球の例を挙げると分かりやすいです。
さきほど、農法はピッチャーが投げる球種のようなものだと書きました。
自然農法はカーブ、自然栽培はフォーク、天然農法はシンカーといったイメージです。

大谷翔平フォーク
(画像参照:デイリースポーツオンライン

たとえば素晴らしいカーブを投げることができるピッチャーがいるとして。
そのピッチャーは試合に臨んだときに結果を残すことができるでしょうか。
おそらく一流のカーブを持っているだけではダメです。
フォークもあればイケる、というものでもありません。
その球を正確にキャッチャーミットへ投げるコントロール(生産性)が必要です。
バッターとの駆け引き(営業力)も必要です。
しかも。
いくら一流のカーブを投げても、バッター(市場動向、マーケティング)が一流なら打たれてしまうこともあるでしょう。
カーブだけを磨いてもピッチャーとしては二流、球速やコントロールやバッターとの駆け引きなどトータルで優れていなければ一流とは言えません。
農家も同じ。
生産が優れているだけの農家は二流でしかなく、営業力や販売力、マーケティングなどトータルで経営力が優れていなければ一流とは言えません。

農法はあくまで栽培の型。
栽培だけを追求していても農業経営がうまく回ることはありませんし、ひとつの農法にこだわっていると球種が少ないのでバッターを打ち取ることは難しいです。
カーブもフォークも覚えて、それらを織り交ぜて的を絞らせないことでバッターを打ち取ることができるようになるんです。
自然農法を学び、自然栽培も知り、置かれている状況によって使い分ける。
土の状態、そのときの気候環境。
顧客のニーズ。
前作に育てた作物の影響。
そのときの状況に合わせて農法を使い分けていく、自分なりにアレンジしていく。
そういう姿勢が必要ではないでしょうか。

 

農法との付き合い方を知る

自然栽培に陶酔する農家。
自然農法しかないと他を否定する農家。
そういう有機農家はけっこう多いです。
でも農法というのは栽培における型ですから、それだけを磨いていては健全な農業経営をしていくことができません。
しかも。
自分はどんな球種を投げることができるのか、どの球種の習得が早いのか、どの球種で一流になれるのか、それはやってみなければ分かりません。
負けん気の強い人が変化球主体のピッチングに向いているとは思えませんし、指が短くてフォークの握りができないのにフォークを磨こうと思っても無理です。
言ってること分かりますか?
自分に自然農法が向いているのか自然栽培が向いているのかは、やってみなければ分からないということ。
大規模農業をやりたい人に自然農が向いているとは思えませんし、粘土質の土壌なのに不耕起をベースにした農法を選ぶのは違うと思います。


どれか特定の農法にのめり込みすぎないように。
その呪縛から解き放たれて一流の栽培ができるようになることを期待しています。
参考になれば幸いです。

 

 

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