自然農法、自然栽培という農法にこだわりすぎない

野菜やコメを育てる、その育て方にはそれぞれのやり方があります。
そしてそのやり方には、それぞれ名前がついていることが多いです。
まず、日本の農業の9割以上を占めている、農薬や化学肥料を使った栽培方法は一般的であるという意味で慣行農法と呼ばれています。
それに対して、農法や化学肥料を使わないやり方を有機農法と呼んでいます。
ほかにもあるけど大きく分ければ二つです。
 

有機農法の流派

自農センター
そして、有機農法は、自分の栽培方法こそが一番だと 言いたい農家によって、いくつもの流派に枝分かれしています。
岡田茂吉氏が唱えた自然農法は彼の死後、その教えの解釈の違いにより3つの団体に分裂しました。
MOA、自然農法センター、秀明自然農法
これらはすべて自分たちの栽培は自然農法と言っていますが、それぞれ手法が少しずつ異なっています。
自然農法はほかにも福岡正信氏が唱えており、ここから川口由一氏の自然農が生まれています。
近年では、奇跡のりんごで一気に世の中に広まった木村秋則氏の自然栽培があります。
バイオダイナミック農法、超自然農法、炭素循環農法、島本微生物農法、アートテン農法・・・。
とても書ききれないほどたくさんの農法が存在しています。

有機農業をやっていきたいと考えているなら、どの農法を選ぶのかは避けて通れない道です。
というのは、一から独学で自分なりの農法を確立していくというのは非常に難しいからです。
誰かが提唱した農法を真似してやってみて、そこからアレンジして自分なりのやり方を確立していく、というほうが理にかなっています。
調べていくと深みにはまること必死のディープな世界ですが、有名なものからマニアックなものまで時間をかけてひととおり調べてみてください。

ただし。
どれが正しくてどれが間違っている、という話じゃないんです。
どの農法も目指すところは同じで、健全な土の上には健全な植物が育つ、という基本理念があります。
そして、それぞれの農法を用いるそれぞれの農家が自分の信じる道をたどって、健康的に美味しい野菜を育てている。
それだけなんです。
もしかしたら、独創的な栽培により味の差を感じられることもあるかもしれません。
肥料分の加減によって腐ったり酸化したりしない野菜が育つかもしれません。
そうだとしても、どの農法も美味しい野菜をお届けするために努力をしている栽培方法です。
肥料を使わないやり方を支持したいならそれも結構。
動物質の肥料が嫌いならそれでも構いません。
耕さないほうがいいと感じるならそのような農法を選べばいいです。
目指すところは同じなんですから細かいところを気にするべきではありません。
 

料理の世界から考えてみる

速水もこみち
(画像引用:速水もこみち公式サイト)
MOCO'Sキッチンという日本テレビの番組は御存じですか?
人気俳優の速水もこみち氏が担当している料理番組です。
彼がつくる料理はオリーブオイルを大量に使ったり、調味料はかなり高い位置から振りかけたり、もこみち流と言えるほどの特徴があります。
フレンチでもなくイタリアンでもなく、もこみちスタイルなんです。

川越シェフ
(画像引用:川越達也公式サイト)
一時期テレビなどのメディアで引っぱりだこだった川越達也氏は御存じですか?
テレビ受けして芸人とトークが出来る料理人、というのが最大の持ち味であることは置いておくとして、彼の料理の特徴は、
ジャンルにとらわれない斬新でオリジナルな料理
というところにあります。
これもやはり、フレンチでもなくイタリアンでもなく、川越スタイルなんです。

もこみちスタイル、川越スタイルというのが、農業でいうところの自然農法や自然栽培にあたります。
どちらも個人が唱えた手法という点で共通しています。
自然農法という手法を用いて野菜を育てるスタイル、自然栽培という手法を用いて野菜を育てるスタイル、というわけです。
たんなる流派の違いですね。
どれが正しい、間違っているという話ではないことは、これでお分かりいただけると思います。

速水もこみちさんがつくっていた料理を、自宅で真似してみる。
川越シェフが創作した料理を、自分なりに再現してみる。
よくあることだと思います。
これを農法という視点で見てみるとどうなるか。
木村秋則氏の自然栽培という農法を、自分の畑で農家が真似してみる。
シュタイナーがやっていたバイオダイナミック農法を、自分の畑で再現してみる。

どこかの誰かが自分の栽培方法を体系的にまとめたもの(農法)を、農家は参考にしながら自分の畑でその農法を再現していく。
農家によって多少のアレンジはありますが、おおむねレシピに沿ってつくられることになります。
私は自然農法で野菜を育てています、というのは
岡田茂吉氏が体系的にまとめたやり方(自然農法)を、農家が自分の畑の条件に合わせながらアレンジして野菜を育てていく。
と言い換えることができます。
 

自分なりの農法を確立するのが目標

ここで考えるべきことは。
同じ農法であっても、それを使いこなす人、つまり農家によって品質は変わる
ということです。
同じ材料を揃えて、同じように調理をしてみても、川越シェフの料理と同じ味は再現できないですよね。
料理する人の技術や経験が違いますから。
だから、自然農法の野菜だといってもそれを育てる農家によって品質は大きくばらついてくるわけです。
極端なことを言えば、緑が濃くて大きく立派に育った自然農法栽培のキャベツがあるかと思えば、虫に食われて穴だらけにされてしまったソフトボール大の自然農法栽培キャベツもあるんです。
大事なのは農法ではなく、誰が育てたのかということ。
農法の違いによる品質の差よりも、それを使いこなす人の違いによる品質の差のほうが圧倒的に大きいです。
だからこそ、農法にこだわりすぎないようにする必要があります。
それぞれの農法のいいところを取り入れながら、自分に合ったやり方を模索して、品質を高める努力をするべきです。
農法を模倣するところに力を使うべきではありません。

それぞれの農法は、その道を極めた人が自分のやり方を体系的にまとめたものです。
いってみれば天才だからこそできる手法なんです。
私も含めてほとんどの普通の農家がその天才手法を真似しようと思っても、同じ結果が出ることはありません。
だから、我々がするべきことは、その農法の核となる部分、たとえば耕さないとか無肥料で栽培するとか、その手法がなぜとられているのかという本質をよく考えて理解して、それをふまえたうえで自分のものとしていくべきです。
そのときに、たとえば自然農法では不耕起・無肥料が基本であると言っていたとしても、自分自身が無肥料は違うんじゃないかと感じるのであれば、不耕起だけど肥料を使った栽培をすればいいんです。
大事なことは自分なりのやり方を見つけていくこと。
そのための基礎部分として●●農法を参考にさせていただく。
というくらいにとらえるといいのではないでしょうか。

100軒の農家があれば、100とおりのやり方があります。
農法を選ぶときには、いいところを盗んでやろうというくらいの気持ちで見てみると、気持ちがラクになりますし客観的に判断することができます。
ぜひ参考にしてみてください。

 

 

 

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