何も植えていないまっさらな畑で「さあこれからだ!」と堆肥を入れたり肥料を入れたりする。そして耕して混ぜ込む。まあ普通ですよね。一部の方は肥料は悪だと主張して何も入れなかったりしますが、それはさておき肥料や堆肥と一緒に石灰も入れること、ありませんか?
地表が真っ白になるくらいしっかりと石灰をまき散らす。これでpHを上げてやらないとだめなのよ~日本の土は酸性になりやすいからね~アルカリに寄せてあげないと野菜は育ちにくいんだから~、と言う方はけっこう多いです。耕すときには毎回おまじないのように必ず入れている人もいるようです。とくに家庭菜園で。
いやいいんですよ、言ってることは合ってますから。たしかに日本の土壌は酸性に傾きやすいですし、野菜全般だいたい弱酸性くらいで育ちやすい傾向があります。石灰を入れてpHをアルカリに近づけてあげたい気持ちはすごく分かります。
でも今回はあえて苦言を呈したい。石灰を入れるなとは言いませんが、もうちょっと考えたほうがいいですよと。入れる分量はもちろん考えたほうがいいですが、入れないほうがいい場合もあります。
結論を言えば、家庭菜園ならpHを測ってから投入するかどうかを決めたほうがいいです。それだけでも全然違います。また、鶏ふんをもし使っているなら石灰は入れないほうが身のためです。
プロの農家なら土壌分析をして、pH以外の数値も見るようにすると結果が大きく変わってきます。土壌分析には栄養バランスを改善する力があります。カップ麺ばかりに頼る偏食で体調をくずしてしまうのは栄養バランスが偏っているからです。栄養バランスが整えば体調がよくなり、生活のパフォーマンスが上がります。作物が健康になれば収量がアップしたり品質が良くなったりするのは容易に想像できますよね?
石灰は栄養バランスに関係があります。作物の生育に必要な栄養素ですが、入れすぎると健康を害します。ほどよく与えることが大切。ということで今回は石灰との向き合い方について深掘りしていきます。
目次
石灰を入れるのはなぜ?
おまじないのように石灰を振りまく理由を聞くと、返ってくる答えは
ペーハー調整のため
がほとんどです。酸性・中性・アルカリ性でおなじみのあれですね。
日本の土壌は酸性に傾きやすいから調整してあげる必要があると。酸性雨でpHは自然と下がっていく、栽培にはアルカリへ傾けてあげたほうがいいから石灰を入れるんだと。
それは分かります。たしかに何もしないと土壌が酸性に傾いていきます。作物を育てるためにpHを調整したいのも分かります。ただし、現在地と目的地が見えてないのに闇雲に石灰をふるのはお勧めできません。
塩基飽和度とpHとの相関
石灰を入れたらアルカリ性に傾く。入れなければ酸性に傾く。pHと石灰には密接な関係があるので、石灰の加減でpHが動くのはたしかです。ただしpHと関係があるのは石灰だけじゃないのは知っておいたほうがいいです。
あまり難しい話はしたくないんですが、石灰(カルシウム)を含め塩基と呼ばれるマグネシウム、カリウムなどもpHの動きに影響があります。これは酸と塩基について知らないと理解しにくいところなんですが、高校の化学をしっかりと勉強した方にとっては当たり前の話です。このあたりの話は頭が痛くなって嫌ですよね。すくなくとも僕は嫌いです。化学は赤点とったことがあります。。。
【アレニウスによる 酸・塩基 の定義】
酸 とは、水に溶けて 水素イオン・H+ を生じる物質
塩基 とは、水に溶けて 水酸化物イオン・OH- を生じる物質
こんなのは覚えなくていいですが、
塩基・・・水に溶けてアルカリになるもの
くらいの理解はあったほうがいいかと。
つまり何が言いたいかというと、
石灰(カルシウム)のほかマグネシウム、カリウムなどもPHをアルカリに傾ける
ということです。
マグネシウムやカリウムは作物の栽培で必要な栄養素です。だから石灰だけをいれてpH調整するのは栄養バランスを崩してしまってよくないよと、そういうことです。
ちなみにカルシウム、マグネシウム、カリウムが土の中にどれくらい含まれているのかを塩基飽和度という数値で表します。そしてこの塩基飽和度はpHとある程度の相関があります。
アルカリに傾ける塩基が100%に近づけばpHが7に近づく。
塩基飽和度が低ければpHは酸性に傾いていく。
ということですね。
pHが弱酸性(6.0~6.5)くらいで生育が良くなる作物が多いことが分かってるので、pHをそこに向けて調整していく。そのためには石灰だけじゃなくマグネシウム、カリウムのことも考えて投入したほうがいいよ。
そんな話です。
バランスはどうする?
カルシウム、マグネシウム、カリウムをどんなバランスで入れたらいいの?
私は石灰信者なのでどうしても使いたいんですが、どれくらいの量を入れたらいいの?
そんな声が聞こえてきそうです。これについては別の記事で書いていますのでそちらを見ていただいたほうが早いです。ちゃんと解説するとボリュームが凄いことになりますし。
植物の成長には栄養素のバランスがとても大事です。赤・黄・緑の食品をバランス良く食べましょう、と教育されてきている日本人なら分かりますよね。石灰ばかり入れ続けるのは、牛乳だけ飲んでおけば大きくなれる!と言ってるのと同じかもしれませんよ。
土壌分析とか面倒だよ
そうはいっても土壌分析とか面倒くさくてやってられない方はいるでしょう。家庭菜園ならなおさらです。僕も基本的には面倒くさがりなので土壌分析とかやりたくありません。
そんな方には、施肥する肥料の種類をうまく組み合わせることをお勧めします。栄養バランスがとれた状態で毎回施肥する方法ですね。
もちろん育てる作物によって必要な肥料は違ってきますし、栽培が終わったときにどれくらい肥料分が残っているか調べたほうがいいのは確かですが、おおざっぱに考えるなら投入肥料のバランスを考えるのがラクですから。
細かいことは言いません。8-8-8のような化成肥料を使っているのであれば苦土石灰を組み合わせるといいでしょう。化学肥料自体は酸性のものが多いのでアルカリに傾ける苦土石灰は相性がよいからです。
もし有機肥料で鶏ふんを使うのであれば、石灰は入れないほうが身のためです。卵用鶏ふんだとカルシウムがかなり多く含まれているので、さらに石灰を撒くのは自殺行為になります。
どうしても石灰を入れないと気が済まない方は、できればpHを測って石灰を入れるかどうかを判断してほしいです。ホームセンターでもpH測定器が1000円程度で売ってます。pHが7を超えていたら石灰は入れない。6より下回っていたら多めに入れる。家庭菜園ならそれくらいの感覚でいいと思います。
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・