農業の実態 過酷な労働環境はブラックなのか

農業に対する世間のイメージは様々です。
牧歌的なゆったりのんびりしたイメージがある一方で、朝から晩までひたすら働く過剰労働をイメージされる方もいらっしゃると思います。
もちろん。
農家によって、農業法人によって働き方は多種多様なのでいろんなイメージが植え付けられているのは間違っていません。
現に牧歌的な農家もいれば、明らかな過剰労働をしているところもあります。
そして。
過剰労働については世間一般的にブラック企業という名称で問題視されるようになっています。

ブラック企業

ブラック企業とはなにか。
ワタ●やユ●クロなど、従業員に対して劣悪な環境での労働を強いる企業のことを
ブラック企業
と呼んだりします。
とくに定義らしい定義はありませんが、労働基準法に抵触しそうな(もしくはしちゃってる)労働を従業員に強いている場合にブラックだと言われるようです。

今回は。
農家はブラックなのか、というテーマで深く切り込んでいきます。
これから新規就農しようと考えている方にとって、農業界の労働現場の苛酷さは気になるところだと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

農家の実態

実際のところ、農家はどのような働き方をしているのでしょうか。
農家といっても様々な形態がありますし、栽培品目も経営規模もそれぞれ違うのでひとくくりにして語ることは不可能です。
朝から晩まで、陽が出ているうちはひたすら働く農家もいれば、一般サラリーマン並みにちゃんと休憩をとりつつ残業もしっかり管理されている農家もいます。
単純に労働時間だけをみて「それはブラックだろ!」と言うこともできません。
でも。
1日8時間労働とか関係なく朝から晩まで働く。
そんな農家がいることは事実です。
季節によって波はありますが、農繁期には3ヶ月間ぶっ続けで休日なく働く農家だっています。
完全に労働基準法を無視してるだろ!
という働きかたをしている農家がいることは紛れもない事実なんです。

そして。
給与面でも農家はブラックな面を持っています。
農水省のホームページでは農家の収入について統計情報が記載されていますが、それを参照するとだいたい時給換算で1000円前後しかないという結果が出ています。

時間あたり農業所得統計

つまりこれは。
たとえば時給1000円で農業をするとして、年収で300万円を得たいと考えるなら3000時間/年の労働が必要になるということです。
週休2日・1日8時間労働のサラリーマンがだいたい2000時間/年ですから、週休2日・1日12時間労働を余儀なくされるということ。
もしくは年中休みなし・1日8時間労働で3000時間/年を達成できます。
必然的に過剰労働に向かってしまうわけです。

過剰労働をしても給料が安い。
そんなブラック体制が農業の現場では当たり前のように整えられています。

 

さらに。
屋外での労働は基本的に過酷です。
汗が滴りおちて頭がふらふらするような真夏にも炎天下で作業します。
(賢い農家は日中暑いときには休んでいるようですが・・・)
地面が凍るような寒い季節でも防寒して仕事をします。
どんなに暑くてもどんなに寒くても、農業は気候の影響を大きく受ける仕事なんです。
労働環境という点でいえば、農業の現場はかなり過酷な部類だと思います。

トラクター

また。
農業用機械はけっこう危険なものが多いです。
トラクターを走らせていて転倒し、下敷きになって死亡。
刈払機で草を刈っているときに顔に石が飛んできて失明。
などという事例は数多くありますし、農作業事故による死亡者数は毎年400人前後いるという統計データがあります。
ある程度の安全設計はされていますが、それでも農業用機械は刃がむきだしで回転しているものが多いので、ちょっとしたことで災害が降りかかってくる可能性を持っている恐ろしい道具です。


このように。
過剰な労働時間。
安い給料。
過酷な労働環境。
危険な作業現場。

という世間一般的なブラック企業も真っ青な働きかたをしているのが農業の世界だと言えます。

 

農家の働き方は労働基準法に抵触する?

労働基準法

そんなにひどい働き方なら労働基準法に抵触するんじゃないのか。
と思われる方がいるかもしれません。

【労働基準法(労基法)】
労働者の保護を目的に労働条件の最低基準を定めた法律であり、労務管理上最も重要とされる。

 

この労働基準法のなかで大きなものを4つ挙げてみます。
1.『労働時間』
   1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならない(労基法第32条)

2.『休憩』
   労働時間が6時間を超えたときは45分以上、8時間を超えたときは1時間以上の休憩を与えなくてはならない(労基法第34条)

3.『休日』
   1週間に少なくとも1日、または4週間で4日以上の休日を与えなくてはならない (労基法第35条)

4.『割増賃金』
   1日8時間、1週40時間を超える労働、法定休日と深夜に行った労働については、割増率を乗じた賃金を支払わなくてはならない(労基法第37条)


これらは一般的な企業であれば当然のように守られていることです。
でも。
さきほど書いたように農家の場合はどうやら当てはまらない場合が多そうです。
じゃあ農家の働き方は労働基準法に違反しているのか。
じつは。
農業は上記4項目について労働基準法が適用除外されているんです。
労働時間の定めはありません。
休憩についての定めもありません。
休日も同様に定めがありません。
深夜労働(夜10時~翌5時)の割増はありますが休日割増賃金には定めなし。
という状況。


もちろんこれは、気候条件に左右されるという部分を考慮してのことですし、栽培において休日を設けにくいという事情も考慮されています。
適用除外されているから過剰労働してもいいというわけでもありません。
でも適用除外されているからこそ過剰に働いても法律にはふれない。
という現実もあるわけです。
農業界は労働基準法の外にいる極めて特別な業界だということを知ってほしいと思います。

 

農家はサラリーマンではない

前項で労働基準法にふれてきましたが、じつは最も大切なことが抜けています。
農家はサラリーマンとは違う。
ということです。
農業を始めるというのは新しく事業を興すことに等しい行為で、サラリーマンのように誰かに雇われて働くのとは根本から立ち位置が異なります。

農家は小さいけど事業体。
自営業であり個人事業。

会社であれば社長の立場になります。
労働基準法というのは労働者を守るための法律であって、経営者を守るための法律ではありません。
経営者には、彼らを守るための法規制がなく自分の身は自分で守らなければならないんです。
だから。
農家に労働基準法を適用するのはそもそも間違っている、と言えなくもないわけです。


とはいえ。
小さな家族経営くらいの農家であれば、経営者としての仕事と同時に労働者としての仕事も兼務するので、労働基準法に照らし合わせるというのもアリといえばアリですね。
このあたりがちょっとややこしいところですが、とにかく覚えておかなければいけないのは
農家はサラリーマンとは違う
ということ。
法律で守ってもらいながら働くということは頭から消す必要があります。

 

労働環境は自分でつくる

農業に限らず、なにか新しいことを始めるときには寝食を忘れてがんばるものです。
そこには残業がどうとか、給料が少ないとか、そんな愚痴は存在しません。
すべて自己責任。
残業をゼロにできるかどうか、収入を増やせるかどうかはすべて自分の腕にかかっています。

労働環境も同じことが言えます。
真夏の労働が苛酷なのであれば、暑さが厳しい時間帯は休憩して早朝の夕方に作業を詰め込むとか。
真冬の寒さが苛酷なのであれば、冬はオフシーズンだと割り切って長期休暇をとるとか。
農業用機械での作業が危険なのであれば、なるべく安全性を重視した機械を使うとか作業委託してしまうとか。

顧客の要望で年中供給が必要だったり、収入の増減があるので日中もがっつり働かざるをえない状況だったり、そういうことも含めて自己責任です。
どれくらい働くのか、どれくらいの収入を得るのか、それは自分で決めることなんです。


ブラック企業顔負けの労働をしている農家はたくさんいます。
でもそれはその農家自身が悪いんです。
誰に文句を言うこともできません。
働き方は自分で決める。
収入も自分で決める。
それくらいの気持ちは持っていてほしいと思います。

 

 

 

多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?

たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。

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