視座を高くすると景色が変わる

つい先日のことですが、私が農業をやっている愛知県豊田市内の農業者たちと話をする機会がありました。
豊田ではかなり有名な若手農業者のグループで、やり手が集まっているためメディア露出もちょいちょいあります。
そんな本気農業をやっている方々と意見交換をする機会があったわけです。

そんな方々に向けて松本が提案したのは
「新規就農者を増やしたい」
というもの。
稼げない農家をただ増やすのではなく、
新規就農者がしっかりとした農業経営を身につけるための学校を作れないだろうか、といった提案をしました。
農業でいっぱしの稼ぎを作るのは簡単ではありません。
そんな業界への参入は、決して甘い汁なんて吸えません。
どこでやるのか、なにを作るのかを深く掘り下げないで農業の道に進めば、
効率的に生産する大規模農業との競争に巻き込まれて低価格で戦う貧農の道が待っています。
成功のカギは生産者ではなく経営者になること。
しっかりとマーケティングをして利益を出せる事業計画をつくり、技術研修をそれぞれの品目を得意とする農家から学ぶ仕組みがあれば、強い農家を増やせるのではないかと。
いろんな農家が協力して技術研修を行えば、強い農家を増やしていけるのではないかと。
ざっくり言うとそんな話を提案してみました。

それに対して多くの農家の反応は、
「そもそも農家を増やす必要あるの?」
でした。
今はまだ、自分も含め規模拡大したい農家が農地を奪い合っている状況で、人を増やすような状況にない。
もし増えるとしても自然増でいいじゃないか。
わざわざ手をかけてライバルを増やす意味がわからない。
そんな意見が大半でした。

これはもしかしたら豊田市だからなのかもしれません。
高齢化、後継者不足、耕作放棄地の増加。
日本でよく取り上げられている農業の問題は、
豊田市ではまだ表面化していない可能性はあります。
若手農業者たちは自分の経営を良くすることに精一杯で、地域のこと、将来のことを考える余裕がないだけ、という見方もできますが。

本音の深堀りはできませんでしたし、思わぬ反応でちょっとガッカリしましたが、冷静になれば
「ふつうの農業者の目線や思考はこんなものなのかな」
と思い返すに至り。
そういえぱ自分も昔は同じように考えていたような気がするなと、実情を知るよい機会がもてたと思ってます。

・・・

僕は彼らが間違っているとは思いません。
どちらが良いとか悪いとか、
どちらが正しいとか間違っているとかではなく、
「目線が違うから」
見ている景色が違うんだろうなと。
だから共感が得られないんだろうなと。
それだけのことだと思ってます。

・・・

インターネットや書籍などを使って情報を集めたり、経営を良くしようと頑張っている方は、おそらく向上心があり前向きに未来を考えていると思います。普通ではない農業者ではないと予想します。
そんな方にぜひ、今回の僕の体験を踏まえて知っておいてほしいことがあります。

「視座は高くしたほうがいい」

日々の農作業に追われていると、世間の流れを見失いがちになります。視野を広く、視点を高くできなくなります。
肥料が高騰しても対策を打てない。
市場価格が暴落しても対応できない。
すべてが後手に回って苦しくなります。
でも、地域の農業を見ながら、
日本の農業、世界の農業をみながら畑に立つと、見えてくる課題感が変わるし、今やるべきことも変わってきます。

平社員として働くときは、
「ひとつ上の立場から考えること」が大切だとよく言われます。 社員なら上司の目線、管理職なら社長の視点、社長なら業界の視点、で見よと。
自分がもしひとつ上の上司になったとしたら、何を考えて、何に悩んで、何を見ているだろうか?と想像することが自分のためにも会社のためにもなると。
これが視座を高めるということです。

自分がいま置かれている状況、目に見える範囲での状況だけを見れば、
農家を増やさないほうがいい
耕作放棄地は気にしなくてもいい
そう考えてしまうかもしれません。
でも、
5年後の地域農業はどうなっていく?
10年後は?
生産している品目の市場規模はどう推移していく?
農政はどんな方向に農業を導こうとしている?
自分ならどう舵取りする?
世界の農業はどのように変わっていく?

こういうことを、事あるごとに思い巡らせてみてはいかがでしょうか。

いち農家の目線だけではなく、もっと高く広いところから農業全体を見てみると、
今やるべきことが変わってきますし、
大丈夫だと楽観視していたことが危機的なものに映るかもしれません。

視座を高める、上げる。
ぜひオススメします。

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