農協へ出荷するとか、卸業者や飲食店や小売店などすでに大口で契約している出荷先があるというのであればあまり意識しませんが、個人の農家が独立してやっていくためには自分の商品(農産物)を自分で売っていくことを考えていく必要があります。
そして販売農家になると、生産農家よりもさらに仕事が多岐に渡ります。
生産
販売
営業
経理
商品開発
在庫管理
顧客管理
・・・・
このなかで生産が重要なのは言うまでもありません。
モノがなければ売ることができませんし、農業を始めたいと思っている人で生産を軽視している人はいないでしょう。
イイものを作りたい。
食べて美味しいと言ってもらえるものを作りたい。
と思っているはずです。
だからこそ生産だけを見てしまう、ということが起きます。
農業経営は生産だけではないんですが、ついつい生産に集中してしまうんです。
そして、そのせいで軽く見られてしまっているのが販売。
つまり商品を売ること。
もっといえば自分の商品を買ってくれる人を集める、集客をするという意識が薄いように感じます。
集客は非常に大事なものです。
生産と同じくらい重要視されるべきものですので、販売農家としてやっていきたいと思われるのであればあえて意識的に集客・販売を頭に入れておくべきです。
目次
なぜ集客が大事なのかは大企業をみれば一目瞭然
なぜそんなに集客が大事なのかは、周りを見渡せばすぐに分かります。
テレビを見るとき、そこにはどんな情報が流れていますか?
テレビでは、受信料を徴収しているN○Kをのぞけばほとんどすべての番組にCM(コマーシャル)が入ります。
番組の最初と最後、もしくは途中でCMが入りますよね。
「あーここでCMかよ!」
「こんなにたくさんCMばっかり流すなよ~」
とか色々と感想はあると思いますが、とにかくほぼ確実に流れています。
じゃあここで。
なぜCMがあるのかを考えてください。
視聴者にウザいと思われながらもCMを流している理由です。
テレビ局は民間企業ですから利益を追求しますよね。
視聴者からテレビの受信料をいただかないということは、どこか別のところから収入を得る必要があるわけで、それが広告収入なんです。
番組の間にCMを流すことでその企業は商品やサービスを多くの人に知ってもらえる。
テレビ局はCMの広告料を企業からもらうことで利益を上げる。
視聴者から料金を徴収しないかわりに、企業から広告料をもらうことでテレビ局は運営されています。
ところで。
CMを流してもらっている企業、彼らはテレビ局に膨大な広告料を支払っています。
どの局か、どの時間帯かによっても違うと思いますが何億何十億円というものすごい金額を広告にかけています。
日本人なら誰でも知っているであろう大企業でも、継続的にCMを流し続けています。
それはなぜでしょうか。
答えは簡単です。
宣伝・広告することが重要だと知っているから。
自社の商品やサービスを多くの人に知ってもらうことの重要性を理解しているからこそ、莫大な投資をしてでもCMを流すんです。
大企業は最初から大企業ではありません。
小さいところからスタートして、着実に利益を積み重ねてきたからこそ今の姿があります。
その過程で培ってきた経験やノウハウは財産であり、駆け出し農家にとっても学ぶところは多くあるはずです。
そんな大企業がやっている宣伝・広告という戦略。
それを見るだけでも集客するという姿勢がいかに大事なのかがわかるはずです。
集客力が高まるとどうなるか
モノの価格を決めるにはいくつかの方法があります。
1.かかった経費を積み上げていって、そこに利益を乗せていく
2.競合する相手の価格を参考にして決める
3.需要に基づいて適正価格を決めていく
これらについて詳しいことは別の記事で書いていますのでご参照ください。
今回は集客力が価格に及ぼす影響についてみていきます。
集客力が関係するのは上記の3つの要因のなかでは
3.需要に基づいて適正価格を決めていく
です。
もし仮に、小さな面積で細々と農業をやっている農家が全国放送でゴールデンタイムにCMを流したらどうなるでしょうか。
かなり多くの人に認知してもらうことができますし、その中の一定数は商品を買いたいと思ってくれるはずです。
とにかく母数が大きいので、買いたいと思ってくれる人も多くなります。
ところが供給できるだけの商品は限りなく少ない。
買いたいと思ってくれる人たちに供給するための能力は、小さな農家にないんです。
このとき。
圧倒的な需要に対して、供給は圧倒的に不足しています。
たくさんの人が欲しいと思っているのに、その商品は簡単に手に入らないという状態です。
つまり希少性が高い。
だから、ふだんなら3000円で売っている商品でも希少性が高まったときには
10000円
で売れる可能性があります。
需要が供給を大きく上回ったときには高い値段をつけられるという例ですが、これができるのは強い宣伝力・集客力があってこそです。
ちなみに。
小さな農家が何十億円もかけてテレビCMを流すのは無理です。
供給能力がなくほとんどの需要を満たせないのに集客をしても意味ありませんし、かけた経費が無駄になってしまうからです。
あくまでも例として考えてください。
この需要と供給のバランスを利用したシステム。
オークションと同じですよね。
欲しい人がたくさんいれば価格が吊り上がる。
欲しい人が全然いなければタダ同然で取引される。
大間のマグロ初競りも、夕張メロンの初競りも、何百万円というふだんの取引ならありえないような高値で落札されますが、これもまさに競り(オークション)のなせる業です。
もともと知名度があるなど圧倒的な集客力があるなら、オークションで自分の商品を売っていくという手法もおもしろいかもしれません。
小さな農家の販売戦略
小さな農家にとって集客力はどれくらい必要なのか。
作ったものを買ってくれるだけの集客力があればいいと思われるかもしれませんし、それはある意味では正解ですが、集客力はあればあるほどいいというのも答えのひとつです。
だって希少性が高まって3000円が10000円になるんですよ。
年収300万円だったのが、同じ販売量で年収1000万円になるんですよ。
供給に対して需要が多くなればなるほど、経営はラクになります。
もちろん。
需要を増やすためにコストをかけているなら、その需要はすべて満たすべきだとは思うので単純に価格を釣り上げられるというわけではないのですが。
ではここで。
いくら需要と供給のバランスを崩しても大根が一本1000円では売れないでしょ。
と思いますよね。
いや売れるんですよ、これが。
新潟県十日町市で日本一高い米を売っている戸邊さんという農家がいます。
トラクターや田植え機などの機械を一切使わずに、手作業だけで稲を育てておられます。
農薬も肥料も使わず天日干しされています。
ここで採れたお米は、なんと3万円/10kg(変動あり)で売られているそうです。
スーパーなどで米を買えば10kgで3000円とか4000円とか、そのくらいですよ。
10倍ってすごいですよね。。
この事例は、商品そのものに付加価値をつけて高価格を実現しているという実例ですが、いくら付加価値をつけたといっても強気の10倍はなかなかできることではありません。
その特別米を欲しい人がたくさんいて、でも販売できる量がものすごく少ないから本当に欲しい人だけが高額で購入する。
いろんな要因はあるでしょうけど、そこには
需要 >> 供給
という構図も影響していると考えられます。
日本中探してもそこでしか買えない商品を作り、多くの人に知ってもらって価値の分かる人へ高額で販売する。
という手法です。
過剰な投資で広告・宣伝しなくてもいいとは思いますが、集客力は大事なものだということは覚えておいてください。
穀類のように多少の保存がきく作物ならまだしも、生鮮物なら過剰なくらい売り先があっても困ることはありません。
畑で収穫物があるのに売り先がない、これが一番悲惨です。
経営の安定には集客力や販売力は欠かせないものです。
生産に力を入れるのもけっこうですが、売ることも同じくらい気にしてみてください。
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・