自然農法、自然栽培、炭素循環農法・・・。
これらを含む有機農法は、栽培方法や使用資材、考え方などの違いによって流派がこまかく分かれます。
大きくみれば、
農薬や化学肥料を使った慣行農法
に対して、
農薬や化学肥料を使わない有機農法
という2種類に分類されますが、有機農法のなかにはそれぞれの思想や理念によって様々な農法の名前がつけられています。
今回は。
なぜそんなにこまかく分かれているのか。
細分化することで誰が得をしているのか。
という話になります。
目次
販売面で農法を語るのは生産者も消費者もプラス
農家は口には出しませんが儲けたいと思っています。
一部の農家は金儲けを毛嫌いしているような空気がありますが、たいていの農家は生活がかかっているので収入は常に気にしています。
大もうけしようとは思わないけど、生活できるくらいは稼ぎたいと。
当然ですよね。
だからこそ。
育てたものはすべて売りたい。
一円でも高く売りたい。
そう思っています。
そして。
販売戦略として、あくまで売るためのひとつの手段として、有機農法とか自然農法という表現を使うことはあるんです。
正確には有機農法ではなくて有機野菜とか、無農薬野菜という表現ですが。
消費者側からこだわりをもった安全な農産物を求めようとすれば、
無農薬
有機
自然
といった単語で探そうとするのは当然の流れです。
だからこそ。
それらの単語を含めて、自分の存在を知ってもらうための手段として言葉を使います。
もちろん。
有機JAS認証を取っていないのに商品に「有機野菜」と書いて売るのは法律違反ですから、法律に違反しない範囲での表記が大前提です。
これは消費者にとってプラスです。
自分が探している農産物、農家を見つけるための手助け、入口になります。
有機栽培がもっている基準、自然農法がもっている基準を満たしている農産物を探すのであれば、その単語が使われている農家を探せばいいからです。
生産面で農法を語るだけでは不十分
でも。
栽培のこだわりとして農法を主張するなら、それは消費者のためになりません。
なぜなら。
ひとくくりに自然農法といっても農家によって出来てくるものが全然違うからです。
栽培に対する考え方、栽培方法、使用している資材、農業に対する思想や理念、安全性に対する考え方。
これらは農家によって異なります。
そして出来てくる農産物も違ったものになります。
ある程度のマニュアル化を進めて栽培のばらつきをなくすことに成功した慣行農法に対して、それぞれの農家が自分の思うように栽培をしているのが有機農法なんです。
有機野菜や無農薬野菜という一種のブランドにたいして期待を持っている消費者へ、基準のないものを提供しているのが実情だと言えます。
農法という枠が消費者にとってプラスになっていないんです。
私は昔、自然農法を名乗って農園をやっていました。
研修先が自然農法を教えてくれるところだったので、自分がやっている方法は自然農法なんだと信じて、その理念に従って栽培していました。
でも。
あるとき、
あなたのやっていることは自然農法ではない!
と指摘を受けました。
自然農法にはいくつかの流派があって、ほかの流派の自然農法からみれば私の栽培は間違っているようにとらえられたようです。
流派による栽培の微妙な違い。
実践者同士が、自分のやり方を正当化したいがために他者を攻撃しているだけ。
こういう問題は、おそらく自然栽培でも炭素循環農法でも同じようにあるはずです。
でもそれは、消費者にとってはそんなに大きな問題ではありません。
そもそもの問題が農法という栽培方法に明確な定義がないことだとすれば、消費者にとって農法で買うものを選ぶというのは意味がなくなってしまいます。
農法のばらつき問題に対する解決方法
この問題の解決方法はふたつあります。
-
有機JASによる基準の明確化
有機野菜と表記して販売できるのは有機JAS認証を受けたものだけ。
それ以外の無農薬やら無化学肥料やら似たような栽培による農産物は、特別栽培農産物と呼ぶ。
現行ではそのように有機JAS法が施行されています。
有機野菜とそうじゃないものと分けることは、消費者にとって間違いなくプラスですよね。 -
個々の情報発信による透明性の確保
でも有機JAS認証をとれない農家もいます。
多品目栽培だったり小規模だったり。
コスト的に見合わないという理由で有機JAS認証を取っていない農家もいるんです。
また。
必ずしも国のお墨付きを必要としない農家がいるという事実。
農家自身が消費者とつながって、自分の栽培についてしっかりと説明したうえで農産物を売っていく。
そこには生産者と消費者の信頼関係があり、国のお墨付きは必要ありません。これが、農法のばらつき問題に対する二つ目の解決方法です。
ようするに積極的な情報発信をするということ。
安全性を求めている消費者にたいして、安全性を主張する。
アトピーに悩んでいる消費者にたいして、自分の野菜が有効であることを説明する。
化学物質過敏症で困っている消費者にたいして、自分の商品なら大丈夫だとアピールする。
農法を主張するのではなく、農法の定義以上にくわしい情報を公開・提供する。
どんな資材を使っていて、どんな肥料をどのくらい使っていて、栽培ではどんなこだわりを持っているのか。
自分の商品は誰の役に立つのか、誰の悩みを解決できるのかを主張する。
基準があいまいな農法が乱立しているからこそ、情報発信が重要な意味を持つんです。
つねに消費者の利益を考える
なんだかややこしい話になっていますが、簡単にいえば。
自然農法の野菜を探している消費者に対して、
自分の栽培は自然農法に沿っているけど、こんなこだわりをもってこんな資材を使用している。
とアピールする。
消費者は自然農法という分類で農家を探すことができるし、農家も自然農法の野菜を探している消費者と接点が持てる。
そこから先、消費者に買ってもらえるかどうかは情報発信力がものを言う。
ということです。
もちろん嘘の表記はダメですが。
つねに考えなければならないのは、それが消費者にとってプラスなのかです。
自分の都合ではなく、消費者にとってよいことなのかを考えて栽培や販売を考えていけば、自然と答えが見つかると思います。
参考になれば幸いです。
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・