【2】有機農業の王道 多品目栽培にはメリットとデメリットがある

多品目有機農家とは。
作物をこまごまと家庭菜園のようにたくさん育てて、それを契約したお客様に直接売っていく。
多品目だから天災などのリスクに備えることができるし、定期契約をすることで安定収入を得ることができる。
そういう経営スタイルをとっている農家を指します。

多品目有機農家について、前回の記事ではその特徴を書いていきました。

【1】有機農業の王道 多品目栽培&定期宅配という戦略 その特徴は?

今回から何回かに分けて。
多品目栽培&定期宅配という経営スタイルのメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。

ひとつの品目をどかーんと畑一枚すべてで作付けして、それを順次収穫して発送していく。
そういう一般的な農家とはまったく異なる経営形態をしているのが
多品目有機農家
ですので、そこについてまわるメリットやデメリットもかなり特徴的です。

多くの有機農家が採用しているスタイルだからといって、いい面ばかりではありません。
悪い面もたくさんあります。
メリットとデメリット、両方を知って理解したうえで、それが自分に合っていると考えるのであれば検討してみてください。
参考になれば幸いです。

 


多品目栽培なので少々の失敗を吸収できる

多品目栽培

まず最初に。
多品目栽培ってイメージできますか?
あんまりなじみのない単語かもしれませんが、たくさんの品目(種類)の作物を育てているということです。
簡単に言ってしまえば家庭菜園ですね。
小さな区画に何種類もの野菜が育っている、混沌としたあの状態のことを指します。

多品目栽培の有機農家、といっても結局のところ家庭菜園を大きくしただけなんです。
たとえば1本50mほどの畝に水菜が育っていて、そのとなりにはトマトが育っている。
さらに次の畝ではキャベツが植えられていて、そのとなりは収穫が終わった大根の畝がある。
そのまたとなりでは現在収穫中の人参が手前から順に抜かれていっている。
というように、1本ごとに栽培されている作物の種類が違うのが多品目栽培です。

畑がこのような多品目状態になっているとどんないいことがあるかというと。

雷様

たとえば台風が直撃して暴風雨にさらされたとします。
まず真っ先にトマトが壊滅します。
支柱などで支えていたものが倒れてしまったり、熟して赤くなっている果実が雨に当たることで割れてしまったり。
大雨で畑が水に浸かってしまい、トマトが病気になったりもします。
もしトマトの専業農家だったら・・・。
全滅してしまうことだってありうるんですよ。
台風を想定して対策していたとしても、想定を超えたものに襲われてしまえばひとたまりもありません。
被害は甚大です。
でも。
多品目栽培だと、トマトは全滅するかもしれませんが他の野菜たちは意外と平気な顔をして台風をやり過ごしているかもしれないんです。
背丈がそれほど高くない水菜やキャベツは、台風による暴風に耐えるかもしれません。
台風の直撃を見越して、畑に残っている人参はすべて収穫してしまうという判断を下せるかもしれません。
全体としては大きな被害を出すことなく、一部の作物だけに影響を留めることができるんです。


ほかにも。
無農薬で栽培しているときに頭を悩ませるのが虫害。
せっかく育てている作物が、虫に食べられてしまって売り物にならなくなることはよくあります。
ほんとによくあります。
長雨で日照が足りず作物の生長がいまいちよくないとか、1ヶ月以上も雨が降らなくて困ったなんてこともよくあります。

このようなときでも。
虫害に強い作物もあれば弱い作物もあるので、それらを組み合わせて作付けしておくことで大きな被害を避けることができます。
湿害に強い作物もあれば乾燥に強い作物もあるので、それらを組み合わせて作付けしておくことで大きな被害を避けることができます。

ようするに。
多品目栽培というのは、保険をかけながら被害を最小限に抑えていく、リスク分散型の栽培方法だといえます。

 


メリットばかりではない多品目栽培のデメリット

ただし。
いいことばかりではありません。
考えればすぐに分かることですが、多品目を栽培するということは非常に労働効率が悪くなります。
一度に耕して、一度の畝を立てて、一度に苗を植えて、一度に収穫する。
大面積で同じ品目をドーンと育てていくのは非常に効率がいいです。

製造ライン

工場のラインで働いた経験があればすぐに分かると思いますが、製品を組み立てていくときに一人がいくつもの工程を担当すると作業効率が落ちてしまうのに比べて、工程ひとつひとつを分業して作業を単純化しておくと作業効率がUPするんです。
Aさんはパーツの組み付け、Bさんはネジ締め、Cさんは不良チェック。
というように分業することで効率が上がります。
これを、パーツの組み付け⇒ネジ締め⇒不良チェックをひとりが担当してしまうと動きに無駄が生じてしまって効率が落ちたりします。

多品目栽培というのはこれと同じです。
こまごまといろんな作業が積み重なっていくので、ひとつひとつの作業の切り替えに時間がかかったり仕事に慣れるのに少しとまどったりして、作業の効率はいまいち上がらないものです。

作業を効率化して生産性向上をすることで利益を大きくしていく、つまり労働集約型なのが農業ですから、多品目栽培は利益が上がりにくい栽培スタイルなのは間違いありません。

天災や技術不足による失敗を経営に響かせないための多品目栽培ですが、そのリスク分散のメリットと引き換えに労働効率を落としてしまっている、というデメリットがあります。

 

知ったうえで多品目栽培を選択するべき

このように。
多品目栽培をすることにはメリットとデメリットが存在します。
メリット・・・栽培の失敗を利益に直結させないで、リスクを分散することができる。
デメリット・・・作業効率が落ちるので利益を上げにくい。

これをちゃんと理解したうえで多品目栽培をするなら、デメリットも多少は改善することができます。
作業効率が悪い形態だからこそ、そのなかでも効率を追求するように意識していく。
出来るかぎり効率的な作業になるように計画、実行、改善を繰り返す。
そういう努力を多品目有機農家はするべきだと思います。

次回に続く・・・。
【3】有機農業の王道 定期契約という名の超安定戦略

 

 

 

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