脱サラ新規就農のメリットを最大限に活かす

脱サラをして農業分野に新規参入するということは、農業法人で雇われている場合を除けばほとんどの人が農業とは違う分野で仕事をしているということになります。
自動車産業であったり飲食業であったり、なかには不動産業や建築業に従事しているなんて人だっているわけです。
そんな農業以外の分野で働いているということは。
独学で勉強するなり、農家で研修を受けるなりして栽培技術を身につけてから就農するとはいえ、知識は浅く実践経験もほとんどない状態です。
そんな脱サラ農業で、知識も経験も豊富な既存の農家と対等にやりあっていくことは、ふつうに考えれば難しいですよね。
何年も前から営農していて知識も経験も豊富な農業者と、対等に戦えるわけがありません。
ところが、就農前に別の分野で仕事をしていたということが、農業界への参入ではプラスには働くことが非常に多いです。
へたをするとそのへんの農業者と遜色ない戦いができるかもしれません。
ぜひ最後までご覧ください。

 

どんなスキルも農業で活かせる

結論から言ってしまえば
前職の経験を活かしましょう
ということです。
まだサラリーマンとして働きながら新規就農を目指しているのであれば
現職の経験を活かしましょう
ということです。

製造ライン
あなたがもし、自動車工場のラインで働いているとしたら。
そこでは生産性向上、生産効率の追求、コスト削減努力、様々な取り組みが行われているはずです。
工作機械に最短距離で部品をセットできるように、部品の置き場所は従業員のスムーズな動きを考慮しながら最適な場所に決める。
従業員がケガをしないようにモノを持つときの重量制限をかける。
全工程を作業ごとに細かく分業化して生産性向上を狙う、もしくはその逆を狙う。
原材料の調達コストの削減やラインにおける不良品率低下への取り組み。
このような事例は、米や野菜の栽培管理でも参考になることがたくさんあります。
工業製品が食品に置き換わっただけですから。
実際にその現場で働いていた知識や経験は、農業の世界でもじゅうぶんに活用することができます。

 

パソコンと男性
あなたがもし、プログラマーとして働いていたとしたら。
プログラミング技術そのものは、もしかしたら使えないかもしれません。
少なくとも生産現場においてはまったく役に立ちません。
でも。
事務作業の効率化においてマクロを組んだりすることができるかもしれませんし、流行りのIT農業をやるのであればもしかしたら役立つことがあるかもしれません。
しかも、コンピュータやプログラミングにおける基礎的な知識を持っていることは、ホームページを作っていくときにかなりのプラスになります。
というのも、ホームページ作成ソフトを使うにしても、ワードプレスのようなツールを使うにしても、コンピュータ言語の知識が少しでもあればやりたいと思ったことを形にするのが容易になるからです。
具体的にいえばHTMLを習得しやすいということ。
サイト構造を理解しやすく、SEO(検索エンジン対策)が容易にできることなども。
いちから勉強していくのと基礎的な知識を持っているのとでは、かけるべき時間が圧倒的に違ってきます。

 

あなたがもし、飲食業界で働いていれば、その知識やコネクションを販路開拓に生かせるかもしれません。
あなたがもしヤマト運輸のような流通業界で働いているとしたら、梱包や出荷についての効率化を計れるかもしれませんし、宅配送料の大口契約交渉で有利になるかもしれません。

 

アルバイト経験だって活かせる

カフェで働く男性 さらに。
こういうのは正社員である必要はなく、アルバイト経験だっていいんです。
たとえば、私は大学生のときにファミリーレストランで接客のアルバイトをしていたことがあります。
キッチンではないので食材・調理に直接関わるわけではありませんし、あくまで接客なので一見すると農業では役に立たないように思えます。
でもファミレスでの接客の仕事は、マルチタスクを体で覚えるには最高なんです。
マルチタスクというのは、同時並行して複数の仕事をこなす技術のこと。
接客には、
1 お客様を迎える
2 席に案内する
3 水やメニューを出す
4 注文を受ける
5 シルバー(食器)を置く、並べる
6 料理を提供する
7 水のおかわり、コーヒーのおかわりに対応する
8 食器を下げる
9 食後のドリンクやデザートを提供する
10 会計をする
11 テーブル上を片づける
というような仕事があります。
ひとつのテーブルごとに1から11までの流れがあり、それぞれのテーブルごとに状況が異なります。
各テーブルで発生してくる注文・要望に応えるために、どのテーブルでもお客様をお待たせすることのないように優先順位をつけながら、すばやく丁寧に仕事を進めていきます。
Aテーブルで注文を受けたあと、となりのBテーブルで空いている皿をひとつさげて、お客様が帰ったあとのCテーブルの食器を片づける。
と同時にまわりを見渡しながらコーヒーのおかわりが欲しそうなDテーブルへ後ほど伺うことを頭に入れておく。
バックヤードに食器を持ち帰ってきたあと、Cテーブルに御案内されてくる予定のお客様のために水を用意しておき、コーヒーを持ってDテーブルに伺う。
またバックヤードに戻ってきて、さきほど用意しておいたCテーブル用の水とAテーブルの食器を持って各テーブルへ置く、そうしているうちにEテーブルは食事を終えて会計のために席を立とうとしているのでレジに向かう。
各テーブルごとの状況を把握して、フロアをぐるっと回ってバックヤードに戻ってくるまでに複数の仕事を進めていきます。
ほかの従業員の動きもチェックして連携をとります。
忙しい時間帯は御案内&会計の専門スタッフがつき、料理を運ぶ係がいますが、深夜時間帯はすべての仕事をひとりで回していくこともあります。

このように複数の仕事を同時にこなしていく技術は、畑のなかでの栽培管理に非常に役立ちます。
家庭菜園を大きくしたような多品目栽培だと、複数の作物がいろんなステージで育っています。
キャベツが植えられて1ヶ月経過した畝があれば、カブのタネを播いてから1週間経っている畝もある。
そのとなりでは栽培が終わってマルチをはがしたばかりの畝、さらにとなりでは草取りを待っているピーマンの畝がある。
畝ごとにやるべき管理が違い、それぞれの状況は日を重ねていくごとにどんどん変わっていきます。
全体を見極めて、どの作業を一番にやるべきか、どの作業を最後にまわすべきかという優先順位をつけながら限られた労働時間を割り振っていきます。
これはまさにマルチタスクです。
ファミリーレストランでのアルバイト経験が生きています。


 

どんな業界でも、どんな業種でも、独立就農したときには大なり小なりなにかしら役に立つところがあります。
どんな仕事でも参考になるところはあるものです。
他業界では当たり前のノウハウが農業の世界では最先端な考えであることもありますし、他産業での技術がそのまま応用出来ることもあります。
農業の世界でしか生きたことがない人に比べて、よそで培ってきたノウハウや経験を持っていることが優位性を生むこともあります。
これを活かさなければもったいないです。
これを武器に熟練の農業者と対等にやりあっていくことができます。

あなたの武器はなんですか?
もしまだサラリーマンとして働いているのなら、そのスキルをさらに磨きながら新規就農を夢見るのはいかがでしょうか。
サラリーマンのうちにやっておけることがあるはずです。
今現在の時間を無駄にしないようにしたいものです。

 

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