日本の農業は弱い。
そんなふうに考えている人はけっこう多いと思いますが、実際はそんなこともなくけっこう強いというのが事実です。
それは、最近たくさんの書籍が出ていることでも分かります。
 

  


ただし。
正確な表現をするなら、

強い農家は強いし、弱い農家は弱い。

ということであって、ほとんどすべての農家が潤っているという話ではありません。
農業経営者という雑誌が試算したデータによると、農家全体の15%にすぎない500万円以上販売農家が、販売金額全体の75%を稼いでいるという事実があります。

農林業センサスより図(出所:農林業センサス、試算:農業ビジネス誌「農業経営者」)

ほとんどの農家がちゃんと稼げてないなかで、日本の農業を支えているのはほんの一握りの強い農家だということです。

じゃあ強い農家ってどんな農家なのか。
ただ単に販売金額が大きければ強い農家なのか、それとも何か別の強さがあるのか。
これを知ることによって、新規就農者が農業を長く続けていくときの方向づけができるようになりますし、長期計画を立てることができます。

今回は。
しっかりと売上を出している農家は何が違うのか、という疑問に対して
時給
という指標をもとに考えてみます。

 

普通に読み解くとやっぱり農業は儲からない

トマト農家になりたい。
レタスだけをとにかくドカンと育てたい。
そういった単一品目農家であれば、農林水産省の統計データが参考になります。

品目別の経営データが載っているからです。
(調査は平成19年で終了)
調査母数がそれなりにあり、おそらく対象を無作為に抽出していることから、平均的な数字が出ていると思われます。
その数字を参考にすれば、トマト農家になったら栽培面積がどのくらい必要で、年収がいくらくらいになるのか、目安がわかります。

品目別経営収支統計


たとえば露地大玉トマト(表の左)。
家族農業労働1時間当たり農業所得が1057円となっています。
これはようするに時給1057円ということです。
1000時間働けば、

1000時間×時給1057円=105.7万円

となり年収約100万円を得ることができます。
サラリーマン並みに2000時間働けば年収約200万円です。

このときに必要な栽培面積は、10aあたりの農業所得から求めることができます。
トマトの場合は78.2万円。

200万円÷78.2万円=2.558

10aの2.558倍、つまり約26aが必要だと分かります。

大玉トマト農家になってサラリーマン並みの2000時間働けば、
年収200万円を得ることができて、栽培面積は約26a

ということです。

ただし、トマト栽培は年中ずっと同じ働き方ではなく、忙しい時期と暇な時期があるのであくまでも参考程度の数字です。
夏・秋にかけてトマトを栽培し、冬はホウレンソウを栽培する。
という複数品目を組み合わせる方法はよくとられていますし、そうなればもうすこし計算は複雑になってくると思います。
でも、だいたいどの品目でも時給にすると1000円前後。
複数組み合わせたからといって劇的に年収が上がるものではないでしょうね。

 

規模拡大によって時給は劇的に上がっていく

でも。
時給1000円前後じゃ農業の未来はないなぁ。
と考えてしまうのは早計です。
別の統計データを見ると、希望が持てる素晴らしい数字が並んでいるからです。


営農類型別経営統計(個別経営)

露地野菜労働1時間当たり農業所得

この統計は、品目別ではなく営農規模別の経営統計が載っています。
けっこう細かくデータが分かれているんですが、露地野菜作を規模別に集計したものをグラフにすると上記のようになります。
日本の農家の平均栽培規模は約2haと言われていて、このグラフで見ていくと2haの規模だとだいたい時給1000円になるだろうなぁというのがお分かり頂けると思います。
1.0~2.0ha 時給864円
2.0~3.0ha 時給1283円

ですので平均的な野菜農家であれば、面積2haを時給1000円で営農しているのが標準的な数字でしょう。

さてここで。
グラフを見ると、経営面積が大きくなるにつれて時給が高くなっていることが読み取れます。
7ha以上の規模で営農している農家は、なんと時給が3000円に達しようかというレベルです。
これは農業法人の数字ではありません。
雇用こそあれ家族経営が主体になっている農家の数字です。


ここから言えることは。

規模が小さい零細農家のうちは、アルバイトのほうがいいんじゃないか?と思えるほど働き甲斐のないさみしい時給になっていますが、規模が大きくなっていくにつれて効率的に稼げるようになっているということ。

農業全体が稼げない産業というわけではなく、しっかり稼いでいる農家はかなりイケてる、でも小さくて弱い農家がけっこう多いから全体として弱く映る。

ということではないでしょうか。

まあ、だからといってみんな大規模化しましょうという話にはなりません。
その方向性は当サイトの目指すところではありませんから。

単一作物でがんばっていくなら大規模農家を目指しましょう。
小さくても強い農家になりたいなら単一作物では厳しいですよ、ということが言いたいんです。

 

小規模農家と大規模農家では、戦略も顧客も生き方も違う

農業を仕事にしている人のほとんどが、規模拡大を目論んでいるわけではありません。
新規就農希望者だって、みんなが将来的に農業法人化を考えているわけじゃないですよね?
家族経営で、家族が食べていけるくらいの収入を得られたらそれでいい。
人を雇うような働き方はしたくないし、人に雇われるような働き方もいや。
いつまでも小さな農家でありたい、と考えている人って意外に多いのではないでしょうか。

強い農家になるために規模拡大が欠かせないのは、統計データが示しています。
規模が大きくなるほど時給が高くなっているんですから。
でもそれがすべてではありません。
小さな農家には小さいなりの戦い方があり、それは大規模化とはまったく違った戦略になります。

大きい奴らの真似をしていたら、小さい者は勝てません。
大きい奴らが出来ないことを、あえてやる。
小さいからこそ出来ることを、意識してやる。

そもそもの立ち位置が違うんです。
規模に合わせた戦略があり、顧客があり、生き方があります。
これを分かっていないと、大規模農家と正面からぶつかって消えていくことになります。


では小さい農家の戦い方とは何か。
これは当サイトの記事をくまなく読んでもらえれば分かります。
かなり細かく丁寧に書いたつもりです。

ひとつの方向性として有機農業があり、多品目栽培&直販定期宅配という農業があります。
それがすべてではありませんが。
下記の記事を参考にしていただければ、小さくて強い農業とはなんなのか、すこしは見えてくると思います。

【1】有機農業の王道 少量多品目&直販型定期宅配の特徴

【2】有機農業の王道 多品目栽培にはメリットとデメリットがある

【3】有機農業の王道 少量多品目&直販型定期宅配という安定戦略

【4】有機農業の王道 少量多品目&直販型定期宅配 産消提携のメリットデメリット

【5】有機農業の王道 少量多品目&直販型定期宅配 大口取引せずにリスク分散

【6】有機農業の王道 少量多品目&直販型定期宅配はビジネスモデルとして優秀なのか

 

 

 

栽培が下手でも時給3000円で働く農家になる方法とは?

もしかしたらあなたは、ひたすら栽培技術を磨こうとしていませんか?
いいものを作れば売れると思っていませんか?
その道は、優秀な先進農家と戦うことになる、かなり危険な道です。死に物狂いで努力しても結果を残せないかもしれない道です。

それよりも、たとえ栽培が下手でも時給3000円、しかも週休3日で働く農家になる道があります。見つけさせすれば誰でも通れる道です。

そんな道どこにあるの?じつは・・・

つづきはこちら

有機栽培農家・松本がやってしまった間違いとは?

農業をやりたいと考えたときに最も重要なことは

栽培技術の習得

であることは間違いありません。商品ができなければ何も始まりませんから。
ちゃんと作物を栽培できて、ある程度のレベルの農作物を自分で作れるようにならなければ、当たり前ですが買ってくれるお客様はいないわけです。
だから栽培技術を身につけることは最低限やらなければならないはずです。

じゃあここで、あなたが、農業のなかでも難しいとされる無農薬栽培に挑戦しようと考えていたら・・・。自分の育てたものを消費者に直接お届けしたいと考えていたら・・・。

それはほとんどの場合。
有機農業では王道とされる、野菜セット農家になるということです。
たくさんの種類の野菜や果物、米などを育てて、それを詰め合わせボックスという形でお客様へお届けする。
そういう農家です。

当サイトの管理者・松本は、この野菜セット農家になるときに大きな間違いをしてしまいました。

それは・・・

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