世の中には非常に多くの種類の野菜があり、日本でおなじみのものから見たこともないようなものまで世界各国で栽培されています。
その中には。
無農薬では栽培が難しくてすぐに虫に食べられてしまうものがあるかと思えば、なんにもしなくてもスクスクと育ってくれるものがあるなど、それぞれの野菜には違いがみられます。
なぜ、栽培の難しいものと簡単なものがあるのでしょうか。
野菜ごとに育てやすさが違うのはなぜでしょうか。
それは野菜の歴史をたどっていけば謎が解けます。
そして、謎が解ければ無農薬で栽培するときの大きな力になります。
この野菜はなぜ虫に食われるのか、という本質が見えてきます。
キャベツを例にとって考えてみましょう。
目次
キャベツから野菜という奇形種を考える
虫がつきやすく無農薬栽培が難しいとされる野菜の代表といえばキャベツです。
アオムシが葉っぱを食べてしまうからです。
ハッと気がついたときには芯だけにされてしまうことも珍しくありません。
そこまでしなくてもいいじゃん、ちょっとは遠慮しろよ・・・って思ったりもします。
でもここでキャベツの歴史を考えれば、これは当然のことなのです。
なぜ葉っぱをこんなにも食べられてしまうのかが見えてきます。
キャベツの原産地はヨーロッパの南東部、地中海沿岸です。
ケルト人は、そこで野生種のケールを作物化して2500年前から栽培をしていました。
ケールは「うーまずい、もう一杯!」でおなじみの青汁の原料になる野菜ですが、葉は巻かずに広がっています。
そのケールを、ケルト人はそのまま食用としていました。
そんなあるとき。
葉が広がっているケールの中に、何千個に一個なのか何万個に一個なのかわかりませんが、葉が中心に向かってくるくると巻いたようになっているものを見つけます。
人間でも出ますよね、ごくごく低い確率で普通ではない状態で生まれてくる赤ちゃんが。
それと同じ現象です。
くるくると巻いたこの奇形株からタネを取って、翌年に畑に播いてみると、やっぱり葉がくるくると巻いているケールが育ちました。
その後も葉の巻きが強いもの、さらに中心に向かって葉が向かうものを選んでタネを取るようにしていきます。
何年、何十年、何百年とこういうことを繰り返していくと、葉がしっかりと巻いて玉のようになる野菜が出来上がります。
これがキャベツです。
(画像参照:サカタのタネ)
キャベツはずっと昔から人間によって葉が巻いて結球するものが選ばれ、採種され、そして育てられてきたのです。
さてここで、キャベツの花を考えてみます。
アブラナ科であるキャベツは、みなさんがよく目にする菜の花を咲かせます。
原種であるケールはもちろん、ブロッコリーやカリフラワーや、ハクサイやダイコンなどもアブラナ科なので菜の花を咲かせます。
その花を、キャベツはどうやって咲かせるのでしょうか。
花のつぼみがあるのは結球した玉の中心、芯があるあたりです。
調理する時には硬くて、捨てようか刻んで使おうか迷ってしまう、あの部分です。
その中心から天高く花茎を伸ばしていって花が咲かせます。
しかし。
そのつぼみの部分は何重にも葉っぱで覆われてしまっているので、自分では太陽を見ることができないのです。
じゃあどうするのか。
人間が手助けしてやるのです。
(キャベツの玉を切り開いて芽を出す)
キャベツの頭頂部を十字に切り込みを入れて、花茎を伸ばせるようにしてやります。
すると遮るもののなくなったキャベツの花茎は、ぐんぐん伸びて菜の花を咲かせます。
つまり。
人間が手を貸してあげなければキャベツは花を咲かせることができず、つまりは子孫を残せないのです。
(自力で葉を突き破って花を咲かせるものもいます)
自然界では弱肉強食があたりまえです。
弱いものは淘汰されて消えていき、強いものだけが残ります。
それは植物界でも同じこと。
子孫を残せないような弱い種族は、当然ながら淘汰されてしまうのです。
そしてキャベツは人間がいなければ子孫を残すことができない弱い種族。
人間がそのように品種を改良してきたからです。
だからアオムシは、自然界の仕組みに従って弱者を淘汰するために、キャベツを食べてしまおうとしているのかもしれません。
これを逆に考えてみると。
キャベツという植物は、人間に依存するという選択をすることで厳しい自然界を生き抜いてきたとも考えられるわけです。
このような戦略は自然界ではしばしば見られます。
カッコウという鳥は御存じでしょうか。
カッコウは、モズのようなほかの鳥の巣に卵を産んで育ててもらうという托卵という行動をします。
カッコウ自身が子育てのへたな鳥であることを分かっているから、子孫を残すためにそのような行動をとるわけです。
自然界での生き残り戦略として、托卵して苦手な子育てを他に任せる。
というわけです。
キャベツにも、生き残り戦略として生存に関わるある部分を人間に任せる、という性質があるのかもしれません。
人間と共存する野菜たち
このように考えると。キャベツは、人間にタネをとってもらって命を繋いでもらうことで自然界で生き残ろうとしているという見方ができます。
人間との共存です。
人間あってこそのキャベツですから、人間が手をかけて守ってやらなければうまく育ちません。
そのへんに生えている雑草と一緒に「自然にたくましく育てよ」と言って突き放しても駄目です。
人間と共存することが前提の植物なんです。
だから、自然界では通常ありえないような進化を繰り返してきたキャベツは、虫に食べられやすく無農薬栽培が難しいんです。
ほかの野菜についても同様の歴史があります。
人間の都合で奇形のものを選んでタネをとって、それを育ててまたタネをとる。
これを繰り返して今の姿になっているという野菜は数多くあります。
キャベツにとってケールが原種であるように、もともとの原種の姿から離れれば離れるほど自然界では弱い存在になっていき、淘汰されやすくなるという傾向があります。
だから、その野菜の歴史を知ることは、その野菜をどのように育てていけばいいのかを知ることになり、どのくらい手をかけてあげなければいけないのかを知ることになります。
ひとつひとつの野菜の成り立ちを知り、どのような気候でどのように生きてきたのかを知り、自分が野菜を育てていこうとしている気候環境や畑の状態ではどうやって適応させていけばいいか。
ただたんに、キャベツには虫害を防ぐために農薬をかけようとか、人参は発芽が難しいから種まき時の潅水はしっかりとしようとか、そういった表面的な小手先テクニックではなくて本質を知ることは非常に重要なことです。
キャベツが原種からかけ離れている植物であることを考えれば、虫害を防ぐために手をかけるのは当然だ。
ニンジンの原産地の気候を考えれば、タネを発芽させるために水をたっぷり与えて切らさないようにするのは当然だ。
モロヘイヤが虫の多い夏でもそれほど食害されることなく育てられるのは、原産地の気候が暑いことや原種に近い姿をしていることが要因だ。
ということが分かってきます。
これが分かってくると、どの野菜はどこをとくに注意して栽培しなければならないかが見えてきます。
そうすると手の抜きどころも分かってきます。
野菜を知るということは、無農薬で育てるときに大きな手助けになります。
ぜひ参考にしてみてください。
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