有機農業をやりたいと考えている人のうち、おそらく多くの人がお金をなるべくかけないでなるべく手間をかけないで農業をやりたいと思っているはずです。
そのこと自体は悪いことではありません。
むしろ、経営的にみて経費をなるべく抑えたうえで最大利益をあげていくというのは考え方としては素晴らしいと思います。
ただし。
耕さないで栽培をしていきたい。
肥料を入れないで栽培をしていきたい。
という方法には、とんでもない危険がひそんでいる場合があります。
田舎暮らし思考が強い人にありがちな栽培方法ですが、このやり方にはいろんな課題があります。
誰でもできるという栽培方法ではありません。
単なる経費削減・労働カットという目的で不耕起・無肥料を選んだのであれば、もういちど立ち止まって考えてみてほしいことがあります。
目次
農法は素晴らしい
耕さないで栽培をするという手法はもちろんあります。
無肥料で作物が育つかというと、ある一定の条件を満たせばもちろん育ちます。
福岡正信氏の著書に刺激を受けた方、川口由一氏の自然農に魅力を感じた方はおそらく
耕さないで栽培をしたい、無肥料で育てたい
と本気で考えて就農を検討するはずです。
その気持ちはよく分かります。
(画像参照:粘土団子から芽が出たよ!!)
粘土団子を投げただけで野菜が育つならこんなにラクなことはありませんし、草を刈ってその場に敷いておけばOKというのなら耕さずに済みます。
トラクターなどの機械は要りませんし、肥料代だってかかりません。
これでちゃんとした収穫物が得られるなら、ものすごい魅力的な農業です。
ですが。
現実的にはこれで生計が立てられるほどの収入を得ることは難しいです。
少なくとも私は、福岡式自然農法や川口式自然農でしっかりとした収入を得られている人を知りません。
もしなんとか生活していけるくらいの稼ぎがあったとしても、朝から晩までひたすら働くことになるはずです。
それじゃあ自然農法や自然農はだめじゃないか、農法としては失格じゃないかと思う方もなかにはいるかもしれません。
いちおう言っておきますが農法自体は素晴らしいものです。
それぞれのやり方は、彼ら提唱者にとってはベストな栽培方法ですが、それを学んで真似してみようとする人にとってはベストではない可能性があるということなんです。
その人が置かれている環境、気候や土壌条件、肥沃度、そしてその人の栽培技術レベルや自然観察力。
こういった要素をすべて加味したうえでどんな農法を取り入れるのかを選択すべきであって、その農法のいいところを真似したところでうまくいくとは限らないんです。
粘土質が強くて雑草もそんなに勢いよく生えてこないような農地で、耕さない!無肥料だ!とやってもうまく育ちません。
耕さなくてもいい理由があり、肥料を施さなくてもいい理由があります。
上っ面だけを真似していてはうまくいきません。
目的と手段を履き違えている
耕さないというのは、あくまで手段です。
土壌条件や栽培技術を考えたうえで耕さないほうがいいのであればそれは正解。
耕すべきだと判断すれば耕すべきなんです。
かたくなに耕さないとこだわる必要はありません。
目的を忘れていませんか?
あなたにとって目的はなんですか?
農業で生活費を稼いでいくこと、健康で美味しい農産物を育てていくこと。
いろいろな目的をもっていると思いますが、少なくとも耕さないことが目的ではないはずです。
自然農法という手段を使って、家族を養っていけるだけの生活費を稼ぐ。
自然農という手段を使って、健康で美味しい農産物を育てるという目的を達成する。
こういうことじゃありませんか。
目的と手段を間違えてはいけません。
よく考えてみてください。
そして。
あなたにとっては、耕さないこと・肥料を与えないことは目的を達成するための手段にすぎませんが、自然農法や自然農を提唱している福岡氏や川口氏にとっては手段ではないんです。
彼らにとって不耕起や無肥料は、目的である可能性が高い。
ということです。
もちろん彼らに聞いてみないと分かりませんが、農法を世に広めようと普及活動をしはじめた時点で、その栽培方法は提唱者にとって手段ではなく目的に変わっています。
最初は自分や家族が食べていくために栽培方法を追求して、試行錯誤して、苦しい思いをして独自の農法を確立していったかもしれません。
そのときにはまだ、農法は手段です。
ところが、それを人に教えて世の中に広めようとしたとき、手段が目的に変わります。
目的は、自然農法を世に広めること、不耕起・無肥料をほかの農業者に実践してもらうことです。
農法の提唱者とあなたでは、不耕起・無肥料に対する立ち位置が違うということを理解して下さい。
だから。
不耕起・無肥料をやりましょうと提唱している人は、それをやること自体が目的になっていますが、農業で収入を得ていきたいと考えている人にとってはあくまで手段にすぎません。
そこをしっかり考えたうえで、それでも耕したくない肥料を入れたくないということであれば止めません。
無肥料栽培によって雑味のないすっきりとした力強い農産物を育てて、それを欲しい人たちに提供していくんだ。
というような目的があるのであれば、無肥料は目的を達成するための素晴らしい手段になるかもしれません。
ただひとつ、目的と手段を間違えないでください。
とだけ言っておきます。
次回の記事では。
お金をケチる、手間をケチる無肥料信仰は危険
というテーマで書いています。
合わせてご覧ください。
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・