自分の意志で農業を仕事にすることの重要性

農業を仕事にする、つまり新規就農する人には2種類あって、ひとつは

実家が農家でしょうがなく継ぐ

というパターン、もうひとつは

自分の意思で農業を仕事にする

というパターンです。

実家が農家であれば、必然的に跡を継がなければならないという事情を持つ方もいらっしゃると思いますので、一度はサラリーマンとして会社勤めをしていたけれど親が動けなくなったのを機に実家に戻って農業に従事するというパターンはけっこうあるのではないでしょうか。
この場合。
農業に従事することは必ずしも自分の意志ではありません。
仕方なくやる、という方もいらっしゃるでしょう。
それが良い悪いという話ではなく、自分の意志で農業を仕事にしていないことの弊害がすくなからずあるような気がしています。

一方、実家が農家じゃないときに農業を仕事にするには、自らの意志で前に進むしかありません。
待っていても農業が仕事になることはないからです。
この道には大きく2パターンあります。
農業系の学校を卒業して農業法人へ就職するという流れがひとつ、サラリーマン生活に区切りをつけて自営業としての農業を選ぶという道がもうひとつ。

今回は。
どんな立ち位置からの新規就農であっても、自分の意志で農業という道を選ぶことがいかに大切かについて書いていきます。

 

成果は取り組む姿勢でまったく違う

他人から与えられた仕事と自分の意志で選んだ仕事。
同じ仕事をするにしても、その人の心構えによって成果はまったく違ったものになります。
あえて言う必要もないですが、嫌々やっている仕事ほどはかどらないものはありません。
こんなことやりたくないけど給料のためだからしょうがない。
時間内にこの仕事を片付けてくれと上司に言われたからやる。
後ろ向きな気持ちで仕事をしていると、その成果は低いものになりがちです。
その人の実力ならもっとやれるとしても、気持ちが行動を制限して成果を押し下げてしまうんです。

レジ店員

たとえば時給1000円でスーパーのレジ係アルバイトをするとします。
どれだけ頑張っても時給1000円は1000円だろ、ちょっと評価されたとしても時給10円とか20円アップだから適当にこなせばいいや。
と思えばそのように仕事をすることはできます。
ものすごいスピードを上げてたくさんのお客様の相手をして、笑顔で丁寧な接客をしてお客様に高評価をいただいたとしても、その見返りはかなり小さい。
だったら解雇されない程度にほどよく仕事をこなして同じ給料をもらったほうが効率がいいじゃないかと考えたとしたら・・・。
間違いなく仕事の成果は落ちてしまいます。
アルバイトをしている本人の収入は変わらなくても、会社であるスーパーの利益が減ってしまいます。
人件費がかさみますからね。

 

農業の世界は成果主義で満たされている

実力主義

与えられた仕事であれば、それさえこなしていれば一定の給料がもらえますから、自主的に余計なことをして忙しくする人はあまりいません。
でも成果主義なら違います。
成果報酬制や歩合制とも表現されたりしますが、受注を取るとか契約を交わすなどの成果に応じて昇進・昇給が決まっていく考え方が成果主義。
頑張って成果を上げれば上げるほど収入が増えていくので、たくさん稼ぎたいと思えば寝る間を惜しんで頑張ればいいわけで、厳しい考え方ではありますが実利的だともいえます。

もちろん農業の世界にも成果主義は存在します。
というかほとんど成果主義です。
うまく栽培をして売れる商品を作ることができなければ収入はゼロ。
売れる商品を作ってもそれを実際に買ってもらえなければ収入はゼロ。
やってもやらなくても一定の給料が保証されているサラリーマンとは全く違って、共済制度こそあれ基本的には失敗すれば収入が保証されない厳しい世界なんです。
そして。
自分の意志で農業の世界に飛び込んでくる人は、これからやろうとしていることが成果主義であることを自覚しています。

というよりも。
成果主義の世界だと自覚していなければ、栽培の失敗を天候のせいにしたり他人のせいにしたり、自分が引き起こしている結果が収入につながっていることに気づけません。
農業は不安定な仕事だと否定的に見るようになってしまいます。


農協出荷農家であれ販売農家であれ、自営業として農業をやっているのであれば
成果主義
の中に生きていることを自覚することが、なによりもまず最初の出発点になるはずです。

 

補助金をもらうことを否定するつもりはありませんが・・・

自営業である農業は、結果にすべての責任を負っています。
失敗したのは自分のせい。
収入がゼロになるのも自分のせい。
朝から晩まで休みなく働いているのに収入が少ないのも自分のせい。

すべての責任を負わなければならない自営業だからこそ、
実家を継がなければならないから仕方なく
といった後ろ向きな思考はかなり危険だと思います。
その点。
非農家ながら自分の意志で農業の道を選んだ人は、すべての責任を背負う覚悟を持って新規就農していますから、成果主義にもおそらく耐えられるはずです。

青年就農給付金についての記事で以前、給付金をもらうことは覚悟を失わせるから危険だという話をしましたが、そこで言ったことは今回の話とつながってきます。

青年就農給付金制度とは誰にとって有益なのか

給付金というのは安定収入であり保険です。
会社から受け取る給料のように一定額を支払われるものですから、そこに甘えが生まれて成果を押し下げてしまう可能性を持っているんです。

もらえるもんはもらっておこう、という気持ちはすごくよくわかります。
でも。
成果主義の中で必死になって命を削っている農家と肩を並べて商売をしていかなければならないのに、就農したスタート時点からサラリーマン的な甘い思考を引きずっていて果たして生き残っていくことができるんでしょうか。

厳しいことを言うようですが、なにがなんでもやってやる!という強い気持ちは農業経営をしていくうえで最も重要な要素ですから、その気持ちを揺らがせてしまう給付金は本当に受け取るべきなのかをしっかりと考えてみてほしいと思います。

 

 

 

 

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