今回はコメ、稲作農家の経費について、なににいくら使っているのかを紐解いていきます。
最近あいついいトラクター買ったけど、あれいくらするんだ?
儲かってんだなぁ
このへんは地代10aで1.5万円だけどほかの地域ってどうなんだろ?
けっこう負担が大きくていやなんだけど・・・
いろいろ気になるところはありますよね。
おカネの話はみんなしたがりません。手取りの収入はもちろん、売上がいくらだったか、年間でいくら使っているのか、そんな卑しい話なんかできるかい!と。この守銭奴が!と言わんばかりにお金の話から目を背けます。
おカネがすべてだとは思ってませんし、農業の魅力はお金以外のところにあるんだろうという実感はあります。でも大事なんですよ、お金は。資本主義社会ですから。
収入が少ないと配偶者から冷たい視線と罵倒を浴びせられますし、ラーメンを食べに行ったらチャーシューと煮卵をのせたいじゃないですか。命を扱う尊い仕事なんだから、それをカネ勘定するような卑しいことを言ってんじゃねえ!と批判する人もいますが、その清貧な心で子供においしいご飯を腹いっぱい食べさせられるなら、私だってそうしますよ。
おカネから目を背けるのは、家族を崖から突き落とすのに等しいです。私はそれくらいの覚悟でお金と、農業と向き合ってます。しっかりと稼げる農家になりたいと思ってます。
だからそれをYouTubeにのせて動画にしているわけですけど、気に入らないなら見なければいいだけです。べつに視聴は強制してませんから。
いきなり話がそれましたね。今日は稲作農家の台所事情の話です。稲作農家は一体なににいくら使っているのか、経費の内訳を統計データからお伝えしていきます。
目次
営農類型別経営統計
ちょっと前ですが
露地野菜農家の経費内訳を別の動画で見せました。
1.荷造運賃手数料 172万円 21%
2.減価償却費 92万円 11%
3.肥料費 76万円 9%
4.諸材料費 65万円 8%
5.雇人費 58万円 7%
私は野菜農家なので「なるほどなぁ」とか思いながら見てたんですが、今回は稲作です。野菜とはまったく違う支出なので興味深い。
稲作はとにかく大規模で、機械化が進みまくって、機械にカネかかってんだろうなぁ?は想像できます。あとはJAに出荷しているから手数料がかかるんだろうなとか、稲作やったことないしJAとの付き合いもないし、人通りがすくない路地裏で全身タイツ専門店やってるようなニッチでマニアック路線を攻める野菜農家としては、表通りを堂々と歩くJA出荷型の稲作農業って想像しかできないんですが、いつものように農水省の「営農類型別経営統計」からデータを拾いつつわかったふりをしながら情報をお届けしていきます。
「今年の売上公開します!」的な農業ユーチューバーの母数1で参考にならないデータとは違って、多くの農家の平均をとった実情に近い経費の内訳なので参考になります。
だって私が自分の経営収支を発表したって参考にならないでしょ。うちは荷造運賃手数料が50%以上ですって言われても
「は?」
「そんなの真似したくねーし」
「アホなの?」
って突っ込んで終わりです。他人の財布の中身がわかってうれしい人もいるでしょうけど、私にとっては給料明細を新聞広告で載せるようなもので単に黒歴史をつくるだけです。
稲作農家の経費
まずはみなさんとイメージを共有しましょう。だいたい10ha規模の稲作農家を目をつぶってイメージしてください。
(300m×300m)こんなもんです
(東京ドーム4.6ha 2個分)
(TDLの1/5)
(サッカーコート14個分)
このような広さを耕作して、
売上1000万円、経費が1000万円かかって収支はトントンなんですよ。でも補助金あるからゼロから黒字にもっていって、なんとか生活できてますよーという農家を想像してください。
イメージできました?
今回はわかりやすくするため、経費が1000万円かかったときに何にいくら使っているのかトップ5を発表します。野菜農家とぜんぜん違いますからね。カブトムシとクワガタくらい違います。
稲作農家の経費 第1位
減価償却費 230万 23%
とにかくほとんどの作業が機械化されているうえに土地利用型で広い面積になるため機械が大型化してしまう 納得の一位
ちなみに減価償却費は青色申告なら30万円以上の高額なものを分割して経費計上する勘定科目
購入した機械の全額を一度に経費にするものではなく
農業機械は7年にわけて計上します
700万の機械なら1年70万円を7年かけて経費にのせていく
そんなイメージ
稲作農家の経費 第2位
修繕費 100万円 10%
機械が大きく種類も多ければ、修理やメンテナンスにお金がかかるのも当然
納得の100万円
稲作農家の経費 第3位
地代 98万円 10%
10a1万~1万5千円ほど10aあたり10万円ほどの売り上げのうち1割が経費として地代に消えていく これは問題だと思う
よく10aにつき米1俵を年貢として納めている農家もいますけど
結局それも1万数千円相当分を納めてるわけで一緒
土地を持っていれば固定資産税かかるとはいえ
地代がもっと下がれば稲作農家の経営が安定すると思うのは私だけ?
稲作農家の経費 第4位
肥料費 91万 9%
経費1000万だと面積8haほどなので
10aあたり1万円ほどですかね こんなもの?
稲作農家の経費 第5位
農薬衛生費 82万 8%
これ以降は、雇人費45万、諸材料費40万など
あれ?と思った方、するどいです。野菜では1位にあった荷造運賃がランキングにありません。
統計データでは荷造運賃手数料45万 5%ほどです。雇人費の次に少ない。
荷造運賃手数料がそんな小さいわけないよね。コメの主な流通経路は農家→農協→卸売業者→小売業者ですけど、これだけ業者がからんで配送しまくっているくせに、 荷造運賃手数料が少ないはずがない。
じつは。
農産物を農協などに出荷した場合、委託販売手数料を差し引いた額を課税売上にすることが認められています。つまり、手数料が引かれて振込まれたものを売上としているため経費計上されてないんですよ。
委託販売手数料は10%ほどかかるので、本来は荷造運賃手数料15%あってもおかしくないわけです。
これって農家としては、会計処理が楽だからいいんだろうけど、実態は見えにくいです。実質的には経費の1位か2位に食いこんでもおかしくない経費額ですからね。
生かさず殺さずの稲作農家
とにかく機械関連、土地代で大きなコストがかかる稲作。広い土地をザックザック耕して日本の農業と言えば稲作。ザ・農家って感じだけど、売上と経費がうまいぐあいに釣り合って所得がゼロ付近に停滞するという問題があります。
それでも農家として成立するのは補助金が大きいから。主食で食糧安保のカナメだし、手厚く保護しているのはわかりますが、国に首根っこつかまれ政策転換に一喜一憂するのは農家としてかなりストレスなんじゃなかろうか。
飴と鞭を使い分けて農家をギリギリのところでコントロールしている、農水官僚のわるーい顔が浮かんできますよ。
これから農業者人口が大きく減っていくと言われており、人口減少と高齢化の中心はやっぱり稲作農家です。
全耕作地の半分 以上が田(R1)。 全農業経営体の7割が稲作(H30)という現状。そんな状況で高齢化が待ったなし、1年で5万もの農家が引退していくわけで。これからの10年、稲作をとりまく環境は激変すると思います。稲作じゃない農家にとっても影響はあるはずです。
さあ、あなたはどうしますか?
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・