知識・経験の重要性 情報不足では判断できない

どんな仕事でも、熟練の技があります。
新人が遠く及ばないような神業。
圧倒的な力の差。
その技術によって、とんでもなく高品質なものが出来上がる。
そこには長年にわたって積み重ねられた知識経験があるわけです。
逆に言えば、知識や経験の積み重ねこそが熟練の技を生み出しているのかもしれません。

だから。
技術がそのまま商品の良し悪しを決めるなら、技術を磨いて経験を積んでいくのは大切だと思います。

じゃあ経験が少ない新人には良いものが作れないかというとそんなことはありません。
確率が低いだけで、できることもあります。

今回は。
商品の良し悪しは技術だけじゃないよ、という話は脇においておくとして。
知識・経験が豊富だとなぜ良いものができるのかについて考え、新人という立場では何を意識しなければならないのかを書いていきます。

 

判断できれば失敗が減る

知識や経験はどれくらい重要なのでしょうか。
なにも勉強せずに、真っ白な状態で新規就農する人はいないと思いますが、たとえば何か作物を栽培するときには基本的な栽培方法くらいは少なくとも知識として蓄えますよね。

土の耕し方、タネの播き方、栽培管理、収穫の方法など。

これらは本当に基本的な手順であって、とりあえず基本に沿って栽培をしていけば一定の成果が出るようになっています。
もちろん、突き詰めていけばそれぞれに深い知識・経験が必要とされるわけで。
土の状態、気候条件から判断しながら、持っている情報をベースに作業を組み立てていかなければ、安定して高い品質の物を作り続けることはできません。
ではここで。

こんな土の状態のときはどうする?
この病気が出たときにはどう対処する?
明日から大雨、今やるべき最善の手は?
この肥料を入れたら作物にどんな影響がある?

といった判断をするには、知識や経験が必要になることはお分かりでしょうか?
教科書や参考書に書いてあることはあくまでも万人向けの内容であって、栽培はそれぞれの置かれている環境によって工夫しなければならないんです。
その時に、
過去に培った経験がない。
判断するだけの材料要素がない。
わからないまま栽培をしていくのは、結果が見えないから予測がたちません。
つまりこれはリスク
わからないことは危険なんです。

 

栽培の成否は減点方式

経験を積んでいくと情報が増えて予測できるようになります。
情報が増えて予測できるということは、失敗が減ります。
失敗が減るということは、安定するということに等しいと言えます。

仮に、栽培の成否を100点満点だと考えてみてください。
100点から、なにか失敗するごとに減点されます。
基本的な栽培方法をベースにして、失敗しなければ100点として一定品質の作物ができるとすれば、栽培が上手くいくかどうかは減点方式で表すことができるわけです。

種まきの時にミスをする -10点
育苗でミスをする -10点
栽培管理の時にミスをする -20点
収穫の時にミスをする -10点

こうして出来上がった作物は

100-50=50点

の品質になってしまいます。
それは、100株分のタネを播いたけど50株しか収穫できないことかもしれないし、秀品率が50%になることなのかもしれない。
とにかくミスを重ねることで作物の品質・量などに影響を及ぼします。

 

ミスをしないために、経験を積み上げて知識を蓄える。
それによって栽培が安定する、というふうに考えてみてはいかがでしょうか。

この減点方式。
例えば健康について考えてみるとわかりやすいです。

健康診断結果

健康を維持するとき、良い行いを続ければ100点満点になります。
バランスのとれた食事、適度な運動など。
これが、ちょっと気を抜いて暴飲暴食するとか、運動不足になりがちとか、ストレスが多い生活になっているとか、健康を害するような行動が増えると点数はどんどん減っていきます。
健康維持は100点からの減点方式で表されるんです。

最初は健康を維持するということが分かりません。
健康が当たり前ですから。
でも体調を崩したり病気になったりして健康とはなにかを理解し、過去の経験から健康を維持するにはどうしたらいいのかを考えるようになります。
知識を増やし、過去を振り返り、健康へのアプローチがだんだん見えてきます。

栽培でも同じことが言えます。
良く育ったときの100点を知り、毎回その点数を取るためにはどんなアプローチをすればいいのかを、知識や経験から分かるようになっていきます。

知識だけでは不充分、経験だけでも遠回り。
両方が必要です。

 

知識を先に詰め込んで、経験を積んでいく

初心者マーク

別の例をもうひとつ挙げてみます。
車の運転を思い返してみてください。
免許を取りたての頃、最初はうまく走れないですよね。
スピードを出すのが怖いし、右折するときはかなり緊張する。
不測の事態に備えて、常に気を張っているので疲れます。

ところが。
何年も運転をして経験が積み重なってくると、状況に応じて予測ができるようになるから、リラックスして運転できるようになります。

周りの車の流れに合わせることができたり。
気を張らなきゃいけないところと、リラックスできるところが分かってきたり。
片手運転だってできるし、駐車もスムーズになってくる。

経験を積んでいくと運転はうまくなるものです。
知識は、おそらく免許取りたてのほうがあるくらい。
免許取得時に教習でみっちり詰め込みますから。


車の運転では。
しっかりとした知識をベースに、経験を積んで運転がうまくなっていく。
という感じです。
 
知識がないまま運転経験を積むのは・・・無免許運転ですね。
知識がないと間違って経験を積むことにもなりかねないので注意が必要です。

 

新規就農者はまず知識を蓄えておくべき

とにかく情報は大切です。
就農前はもちろん、就農してからも情報を得る努力をすべき。
さきほどの例でいえば、知識と経験によって自分にとっての健康が分かってくるように、農業生産には知識と経験が欠かせません。
ずっと積み重ねていくべきものです。

ないよりはあったほうがいい、という話ではありません。
なにか判断をするときに情報が絶対に必要です。

うどんこ病が出た!
というときに、うどんこ病に関する知識があって、どのような対処法が有効かを知っていて、過去にその対策をしたときにどんな結果が出たのか経験があれば、いま目の前で起きている病気に冷静に対処できますよね。
うどんこ病を知らないとか。
対処法を知らないとか。
これまでうどんこ病に出会ったことがないとか。
知識・経験がないときの未知との遭遇ほど怖いものはありません。

判断材料をたくさん持っておくことは、いろんな場面で有利になります。
その材料は、

自分自身の経験だったり、
書籍からの知識だったり、
誰かの体験談だったり。

新規就農者にとって経験は最初から手に入らないもの。
であれば、それを補うために圧倒的な知識を持つべきです。

書籍の積み上げ

目の前で起きた現象について、原因を探るための判断材料として知識は必要不可欠でしょう。
経験が乏しいなら知識でカバーする。
新規就農者にはそういった姿勢が求められます。

就農前にはとにかく勉強しておきましょう。
経験はあとからいくらでも積めますが、就農してしまうと忙しくて勉強する暇がない、なんて普通のことですよ。


 

 

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