農業の世界では耳にタコができるくらいよく聞かれる言葉があります。
農業は毎年一年生だ
一年生という単語を使わなくても、同じようなニュアンスで語る農家はけっこう多いです。
この言葉に含まれている意味は、
天候や気候、土壌など同じ条件が揃うことは二度とないんだから、毎年一年生のつもりで勉強していかないといけないなぁ。
といったこと。
気象条件や土壌の状態なんてのは生産における土台ともいえる要素なので、これが安定していないのは生産そのものが安定しないのに等しいです。
毎年一年生のつもりで集中しないとやっていけないというのが正直なところでしょう。
今回は。
このような不安定な要素をかかえながら生産を続けることの面白さについて書いていきます。
新規就農を検討されている方の一定割合は、おそらく生き物を育てることに魅力を感じていると思われますのであえて言う必要もないことですが、農業はほかの仕事と比べても格段に面白くやりがいがある仕事だということが改めて理解できると思います。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
土台が変化するから不安定
農業ほど難しい仕事はない、と言われます。
農業だけしかやったことのない、農業一筋●十年といったベテラン農家が言っても説得力がありませんが、他業種を転々としてきたような人がこの言葉を発するとなんだか説得力がある言葉です。
たしかに冷静に分析してみると、農業がいかに難しい仕事なのかよく分かります。
世の中には様々な仕事があります。
そのなかでもモノづくり、いわゆる製造業と同じような立ち位置なのが農業です。
タネや肥料という原材料があって、それらを加工して商品にしていく製造業だと見ることができます。
その生産現場は、非常に不安定。
環境要因のぶれが大きいのが特徴です。
日々の気温や湿度の変化、日照や降雨などの天候に左右されます。
暖冬や冷夏など、年ごとに異なる傾向を示すこともしばしば。
土の水分量や養分量やバランスによって作物の生育状況は変わります。
土壌の物理性と化学性も作物の生長に大きく関わります。
さまざまな条件が変わりやすい屋外空間で生産活動をするうえに、生長によりどんどん変化していく生き物を扱っています。
多様な要因がからまりながら、なにひとつ同じ条件はないと言えるほど変化していく、そんななかで商品をつくっていくのが農業という仕事です。
不安定な足場に立って、お酒を飲みながらけん玉をする
農業における生産環境の変化。
モノづくりの現場としては、非常に苛酷です。
工業製品の製造であれば、工場という建物のなかに気候条件に左右されにくい環境を用意して、そこで工作機械を使いながら製品を作っていきます。
雨が当たることはもちろんありませんし、電気が強くなったり弱くなったりすることもありません。
生産のためのインフラは、ある程度しっかり固まっています。
だからからこそ安定して高品質の製品を作っていくことが可能なんです。
(画像参照:鳥取県の食情報を発信!「鳥取食録」鳥取の楽しみは食にあり!)
たとえば。
豆腐を作るときには水の温度や気温・湿度が豆腐の出来に大きく関わってくると言われています。
原材料である大豆を水に浸しておく時間が変わってくるからです。
そこには職人ともいえる世界があり、積み重ねた経験が非常に重要な要素になることがあります。
ただし。
見方を変えれば、水温・気温・湿度を管理できるのであれば豆腐は安定して一定の品質を保つことができるということです。
工場内で生産すれば、このあたりはある程度クリアできますし数値化しておけば経験がなくても大豆を水に浸す時間を比較的簡単に求められます。
変化する要因がそれほど多くなければ、その対応はけっして難しくありません。
農業の現場はほとんどが屋外です。
天候に左右されます。
それだけで生産の土台となる部分が大きく揺れ動くことになり大変なのに、扱っている商品がこれまた生きているからやっかい。
不安定な足場に立って、お酒を飲みながらけん玉をするようなものでしょうか。
うまく玉を皿に乗せることも、けん先に刺さることも非常に難易度が高いのは容易に想像がつきます。
狙った通りに進まない、1+1=2といった数式がまったく通用しないのが農業だと言えます。
モノづくり、生産現場という意味では他の追随を許さないほど条件が悪い農業ですが、なんとなく似ているものがあります。
それがスポーツ。
サッカーでも野球でも、テニスでもレスリングでもいいんですが、対戦相手がいるスポーツです。
対戦相手がいるということは、自分ひとりで集中していてはだめです。
自分の力を発揮しつつ、相手の動きをみて、それに合わせて自分も動いていく。
うまく対応して、試合の主導権を握ることができればそれが結果として勝利につながります。
相手が強くて振り回されてばかりいると、自分の思うような結果を出すことができません。
負けることもあります。
相手(外的要因)が動く、それに合わせて自分を変えていくという点ではすごく似ていると思います。
飽きないくらい面白い、終わりなき旅
難しい、だから面白い。
と思えるかどうかが、農業を仕事にしていくうえでのカギになるはずです。
何年も農業の世界で経験を積んで、それなりにいいものが作れるようになったとしても、過去の経験にないことが起きれば失敗することだってあります。
気候条件や土壌状態がうまくマッチして、偶然にも高品質のものを作り上げてしまうことだってあります。
ほんとうに毎年が一年生。
いつまでたっても終わりが見えません。
そこに。
一生楽しんでも飽きないくらいの面白さがあります。
難しいからこそ面白い。
それが農業です。
お金にならないと分かっていても、モノづくりの魅力に惹かれて参入してくる人が多いのもうなずける気がしますね。
自分の思い通りにならないことのほうが多いけれど、そこを面白いと思えるのであれば農業は本当に魅力的な仕事になります。
一生を賭ける価値がある。
そういう仕事です。
いや、もしかしたら仕事と言っちゃいけないかもしれない。
遊んでいる感覚に近いです。
遊びながらモノづくりを楽しんでいたら結果的にお金がもらえた。
スポーツをして楽しんでいるうちにお金が飛び込んできた。
そんな感覚でしょうか。
分かる人には分かる、この感覚。
味わいたければやるしかありません。
ぜひ農業の世界へ足を踏み入れてみてください。
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・