安全性だけをウリにする有機農家は生き残っていけない?

安全性だけをウリにする有機農家は生き残っていけない。

こんな衝撃的な意見を言う農家が出てきています。
有機農産物=安全
という世間的な認識があるなかで、
安全性をアピールポイントにするべきではない
ともとれるような発言。
これに同意しかねる農家も多いと思います。
困惑する人もいるでしょう。

無農薬栽培で、安全な農産物をつくって、それを世の中に広めていきたい。
そう考えて農業の道に進む人が多いなかで、
安全性をウリにしとったら潰れるでー
という発言。
なかなか受け入れられるものではないと思います。

ですが、私はこの意見に賛成しています。
この発言の真意は、私なりに理解できます。
今回はこのあたりを詳しく分解してお伝えしていこうかと思います。

 

・・・が、じつはあまり知られたくないという気持ちが強いです。
多くの農家がこれを聞いて、共感して、実践してしまうと、

安全性だけをウリにする有機農家は生き残っていけない。

と言った意味がなくなるからです。

差別化を強く意識する農家だけ読んでください。

 

安全神話が根づく世間の認識

食に対する不安はたしかにあります。
農薬の危険性が叫ばれているのはもちろん、産地偽装の問題があったり、衛生管理の問題があったり、食品添加物の安全性を疑うような意見もあったり。
安心して食べ物を口にできないような空気があります。

有機農産物アンケート1
平成23年度 有機農業調査事業実需者(消費者)報告書より)

そんななかで、

有機農産物は農薬を使っていないから安全

といった分かりやすい構図が生まれています。
有機=安全の真偽はともかく、安全を求めて有機農産物を買う人が多いのは事実でしょう。

つまり簡潔にいえば、消費者が有機農産物を買うときの動機は

安全だから

なんです。
だとすれば、安全性をアピールして
うちの農産物を買って下さいよ~
と売っていくのは間違っていない選択だと思います。
実際、そういう売り方で高い値段をつけても買ってくれたりしますから、安全性をウリにした有機農業は方向性としては正しいと言えるのかもしれません。

 

時代の流れを予測する

消費者アンケートをとれば、有機農産物に興味のある人はかなり多いですし、買いたいと思っている人の割合も決して少なくありません。

有機農産物アンケート2
平成23年度 有機農業調査事業実需者(消費者)報告書より)

ただし、そこには「もっと安くなれば買うよ」という意識が強くあって。
興味はあるけど高いから買わない、という消費者がたくさんいるわけです。
つまり言い換えると、安全性よりも安さのほうが優先順位が高いと。
そういう消費者が多いということです。

この価格の壁は、かなり高いですよ。
だって生産者は一円でも高く売りたいですし、高く売れるから有機農業を選んだりするわけで。
一般的な農産物と価格が同じだとしたら、リスクの高い有機農業をやらない農家は多いはずです。
高くないと価値が薄れてしまう有機農産物。

そこには深い溝があります。
安くて安全なものを買いたい消費者と、安全なものを高く売りたい生産者。
この溝が浅くならないと、有機農産物は増えていかないと思います。

 

これが意味することは。
需要がそれほど大きく変わらないということ。
需要が変わらないなかで、有機農業をやりたいという新規就農者がけっこう多いという事実があって。
(新規就農者の3割は有機農業を選ぶという統計データもあります。)
供給側は増えているわけです。

変わらない需要、増えていく供給。
これはつまり、生産者側で競争が起こるということ。
少ない需要を、多くの有機農家が取り合うという構図です。

 

安全をウリにするのは差別化ではない

有機農業に競争が生まれていくなかで。
当然ですけど、そこで生き残っていくためには有機農家も工夫が必要になってきます。
価格競争に陥らないような工夫。
作ったけど売り先がないという悲劇に陥らない工夫。
10年先も同じように農業を続けているための工夫。


その工夫のひとつが、
安全性だけをウリにする有機農家は生き残っていけない。
という言葉に表れています。

多くの有機農家が安全性をアピールしているなかで、自分も同じように安全性をアピールしていくと、間違いなく競合する。
安全性を求める消費者が多いのは事実だけど、安全性以外の価値でも消費者にアピールしていこう。
競合を避ける、競争をしないために安全性というウリをあえて避けよう。

ということです。

 

たとえば、
自分の住んでいる地域の人たちに有機野菜を売っていこうと思ったときに
自分は選ばれるだろうか?
自分以外の有機農家から買われるのではないか?
という可能性を考えなきゃいけないですよね。

そこに有機農産物があり、同じように安全性をアピールしている農家がいくつもあれば、ほかの有機農家にお客さんをすべて持っていかれる可能性があります。

そこには競争があり、安全性という価値が横並びなら、当然だけど安いものが買われていきますからね。
もしかしたら、そこから価格競争が起きるかもしれません。
有機農家が乱立して、需要よりも供給が大きくなれば、安売り競争が始まります。
当たり前の市場原理です。

 

風が吹けば飛んでいってしまうような小さな農家は、競争を避けなければなりません。

ビジネスの世界で広く利用されているランチェスター戦略(第一法則)では、
もっとも重要な戦略は戦わないこと
と言っています。
これは非常に重要で、厳密には自分よりも強い相手とは戦わないんですが、戦って勝てる相手とだけやりあうことで生き残っていけるという考え方です。

これをもうすこし具体的にいえば、差別化をして、勝てる場所と勝てる相手を選び、一点集中突破でNo.1になる、ということ。

さきほどからの有機農業でいえば、
戦って勝てなそうな有機農家が安全性をウリにしている。
だったら自分は安全性以外のところをウリにしていく。
安全性もアピールするけど、新鮮さや美味しさ、情報公開による透明性もウリにして差別化していく。

ということです。

ウリを重ねていくことが、差別化になる。
安全性だけをウリにしないで、差別化で有機農家は強い個性を発揮するべき。

これが冒頭の言葉に隠された真相です。

ビジネス感覚の弱い農業では、この意識を採用するだけで一歩前に抜き出すことができます。
最初に、多くの人に知られたくないと書きましたが、その意味がわかりますか?
多くの有機農家が安全性だけをウリにしているからこそ、自分がそれ以外のウリも重ねてアピールすると差別化が生まれるんです。
みんなが同じことをしたら、差別化にならないですよね。
だから知られたくない。
ほとんどの有機農家が安全性アピールしていたほうが、同業者としてはありがたいわけです。

 

差別化のヒント

差別化は人それぞれ考えるべきものです。
その人の能力や個性、置かれている状況、競合相手や立地条件によって違います。
だからここであれこれ書くことはできません。

でも考えるきっかけを提供することはできます。
下記の質問を考えてみてください。
じっくりと時間をかけて、頭をひねってみてください。


あなたの最大のアピールポイントは本当に安全性ですか?

あなたの提供できる価値はほかにありませんか?

それらの価値を欲しい人はいますか?

周りにいる同業者との違いははっきりしていますか?

 

もし、必死に頭をひねったけど自分で答えを出せないとか
もっとヒントが欲しいのであれば、
こちらを参考にしてみてください。
価値の創造や差別化のポイントについて多く触れています。
  →https://nouest.com/five-times/

 

 

 

多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?

たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。

このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。

それは・・・

有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?

有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。

「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」

と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、

有機農業はちゃんと稼げる

ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。

ただし、条件があります。
それは・・・

つづきはこちら

 

関連記事

  1. 【4】有機農業の王道 少量多品目&直販型定期宅配 産消提携のメリットデメリット

  2. 有機JASと特別栽培農産物について徹底解説。有機野菜は国家保証?無農薬野菜という表現はNG?

  3. 有機農業の優位性はどこにあるのか 環境負荷?美味しさ?

  4. 【6】有機農業の王道 少量多品目&直販型定期宅配はビジネスモデルとして優秀なのか

  5. 小さな農家が有機農業で収入を倍増させる秘訣

  6. ビニールマルチの役割はけっこう大きい 旬を広げる効果とは