多品目栽培か少品目栽培か、自身の適正から考える

ひとくちに農業といっても、育てていくものには多くの種類があります。
米、野菜、果樹、花き、畜産
大きくみてもいくつもの分類があるのに、さらに野菜だけみても何十種類という品目が存在します。
それらのなかから自分が本当にやりたい、育てたいと思う品目を見つけるのは至難です。
品目を選ぶとき。
それが儲かるから、実家でやっているから、就農する地域が推奨しているから、といった理由はあるかもしれませんが、まったくなにもない真っ白なスタートをするときに何か特定の品目を選ぶというのは難しいと思います。

このあたりの、品目を絞り込むことについては別の記事を参照していただくとして。

農業を仕事にしたい・・・けど何をつくったらいいの?

今回は。
たとえば野菜ならキャベツだけトマトだけといった単品目・少品目で農業をしていくのと、スーパーに売られている野菜はひととおり育ててます的な多品目で農業をしていくのと、自分に合った経営スタイルを事前に判別するコツについて書いていきます。

多品目でやりたいけどそもそも自分に合ったやり方なのか。
トマトだけに集中したいと考えているけど、他の野菜も育ててみたくなったりしないだろうか。
という不安が解消できると思います。
ぜひご覧ください。

 

多品目で栽培する、単品目で栽培するそれぞれの適性

野菜を何十種類と育てる。
稲作をやりながら野菜も果樹も手掛けていく。
といった多品目栽培をしている農家がいます。
ごく単純に考えてみると、ひとつのことに集中するよりも作業が分散するので効率が悪く、経営的にあまりよくないのではと思いますよね。
実際、たしかにそういう面はあります。
栽培ひとつ考えても・・・。
単作でひとつの品目をドーーンと地平線の彼方まで育てている農家に比べれば、作業効率が悪くて生産性も低いことが多いです。
生産性とか作業性とか、生産に関することだけにフォーカスすればNGなのは間違いありません。

が、それでも多品目経営をしている農家がいるのはなぜか。
それは。
販売面で有利だからです。
多品目だから、たくさんの種類の農産物を抱き合わせてセット売りができます。
取引先の都合でたとえひとつひとつの品目の販売量に制限があっても、種類があることで販売総量は多くなります。
つまり客単価が上がるということ。
ひとりの顧客に対して、たくさんの農産物を売ることができます。

そして、多くの顧客を抱える必要がありません。
客単価が高いので、特定の人たちに対してごく少数に販売するだけでも商売としてじゅうぶんに成立するからです。

というように。
経営戦略的に多品目栽培をすることにはちゃんと理由があります。
でも。
多品目栽培をしている多くの農家は、そのようなことを考えて経営しているわけではありません。
むしろまったく考えていない可能性のほうが高いくらいです。

それはなぜか。
考えていないのに長く経営していけている農家がいるのはなぜか。
多品目というジャンルが確立されているのはなぜか。

その答えはいくつかあると思いますが、ひとつの理由として
栽培には適正があるから
という答えが挙げられます。
多品目で栽培する、単品目で栽培する。
それぞれに適正があるんです。

ひと畝ごとに栽培している品目が異なるような、大きな家庭菜園といったイメージの多品目栽培。
こういう栽培が合っている人がいます。
地平線の向こうまで続くような広大な土地で、大きな農業用機械を駆使してドカンと収穫量を上げていく。
そういう栽培が合っている人がいます。

どちらがダメでどちらが正解、という話ではありません。
どちらが自分に合っているか。
そこが重要なんです。

自分に合っていなければ、そのやり方がたとえ儲かったとしても長く続けることができません。
精神的な苦痛に襲われますから。
逆に。
ぜんぜん儲からんわ~という悲しい状況であったとしても、自分に合っていれば長く続けていくことができます。
精神的に楽ですから。

というように。
自分の趣味嗜好に、性格的に、合っている農業経営をすることは非常に重要です。
せっかく一大決心をして農業の世界に飛び込もうとしているのであれば、20年30年と長く農業の世界に浸かっていたいですよね。
そのためには、まず自分を知り自分にあった経営スタイルを探すことが重要になってきます。

 

どのスタイルが合っているのかを判別する方法

少品目がいいのか、多品目がいいのか。
それは、あなた自身のふだんの生活から読み取ることができます。

パソコンに向かう男性

たとえば。
パソコンをやっているときのことを想像してみてください。
画面には起動しているアプリケーションがありますよね。
メールソフトとか、インターネットブラウザとか、表計算ソフトとか。
なにかをしようと思って、アプリケーションソフトを立ち上げているはずです。
そこで。
いくつもソフトを立ち上げて、同時に作業を進めていく方っておられませんか?
メールソフトを起動しておいてメールを送受信しながら、インターネットでちょっと調べものをする。
さらに表計算ソフトも立ち上げて明日の会議に使う資料のチェックをする。
複数のことを同時にこなしていくタイプです。
こういう人は、複数の品目を同時に育てていく多品目栽培が合っています。

逆に。
メールソフトを起動したら、メールの送受信にけりがつくまで他のソフトは立ちあげない。
インターネットをしているときは、それに集中する。
といった人。
ひとつひとつのことを確実に終わらせてから次の作業に移っていく人。
こういう人は、少ない品目に集中して育てていく少品目栽培が合っています。

いろんな作業をこなせるパソコンで、自分はどのように仕事を進めているのか。
それを知ることで多品目が合っているのか少品目が合っているのかを窺い知ることができます。

 

料理する男性

また別の例として。
料理をするときのことを想像してみてください。
みそ汁を作りながら、ハンバーグの仕込みをする。
煮物を作りながら、浅漬けや酢のものを仕込んでいく。
というように、いくつもの料理を同時に作っていく人。
いますよね。
まな板のうえで材料を切っているそばで、魚を焼いたり煮物を煮込んだりしている。
といった複数のメニューを同時並行して作っている人です。
これができる人、こういう料理の仕方に慣れている人は多品目栽培が合っています。
多品目栽培の煩雑さはまったく気になりません。
でも逆に。
みそ汁を作るときにはそれに集中する。
炒め物をするなら、それ以外の料理は作らないで炒め物だけに集中する。
ひとつ作ってから次の料理にかかる、という人であれば単品目もしくは少品目で育てていったほうが性に合っていると思います。

 

プロの世界は適材適所でなければ生き残れない

そもそも。
自分に合うとか合わないとか相性の問題以前に、合わないやり方をしていて結果を残すことができるのかという根本的な問題があります。
プロの世界は厳しいです。
ビジネスは生き残るのが難しい世界です。
そんな世界に飛び込むのであれば、自分の能力を最大限に活かしていくべきだとすぐに気付くはずです。

多品目がいいのか少品目がいいのか。
そこには適材適所という考え方が必要になってきます。

プロ野球

たとえばプロ野球であれば。
打順を決めるときに、足が速い選手を一番二番あたりに配置します。
走者を一掃できる長打力があれば3番4番に。
ふだん投球に集中していてバッティング力がない投手は9番に。
という配置をします。
どの選手をどの打順に配置すれば、打線がつながって一点でも多くの点を取ることができるのか。
適材適所を考えて打順を決めます。
また、守備についても同じです。
強肩で足が速い選手は外野を守らせることで能力を発揮します。
全選手のなかで最も守備がうまい選手は、守備のかなめであるショートに配置。
試合の流れを読むことができる、またはバッターとの心理戦が得意であればキャッチャーが向いています。


通常こういうのは会社組織になぞられて語られることが多いのですが、農業全体をみて自分はどのポジションにつくべきかを考えてみるといいのかなと思います。

 

 

自分で客観的に適材適所を見つけることは難しいかもしれません。
でも。
さきほど挙げたパソコンや料理の例を参考にしながら、多品目がいいのか少品目がいいのかくらいは自分で判断できると思います。
事業の方向性を決める上でも品目の絞り込みは大切です。
ぜひ参考にしてみてください。

 

 

 

多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?

たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。

このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。

それは・・・

有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?

有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。

「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」

と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、

有機農業はちゃんと稼げる

ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。

ただし、条件があります。
それは・・・

つづきはこちら

 

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