全国農業会議所の調査によると、新規就農を希望している人のじつに93%が
有機農業に興味がある、もしくはやりたい
と答えています。
そして、たしかに世間はそのような方向に動いています。
有機農産物に対する認知は年々高まっていますし、有機農業に対する行政の支援や地域の理解なども以前とは比べものにならないほど高くなっています。
有機農業を始めるにはじゅうぶんな環境が整いつつあると言ってもいいほどです。
でも待ってください。
一度立ち止まってください。
農業をやりたいと思ったときにまず最初に考えなければならないのは、有機農業をやりたいというような農法の選択ではありません。
全く別の視点から考えるべきことがあります。
農業を始めるということは、
農業 ⇒ 農を生業(なりわい)とする
つまりは農産物をつくって売っていく商売をするということです。
モノを売ってお金に換えていく商売をするときに、まず最初に考えなければならないのは
誰に対して売りたいのか
ということであって、どのようにして商品をつくるかではありません。
まず商品があって、それを誰に売っていこうかと考えているようでは遅いんです。
商品を誰に売りたいのかが明確になっていないと、どのような商品をつくっていいのかが分からない、つまり誰に向けた商品なのかがはっきりしていないピンボケ商品になってしまいます。
その商品を買ってくれるお客様がいてはじめて商売は成り立つのですから、そのお客様が買いたいと思うものを提供していくことが結果として利益につながっていきます。
だから、農業を始めようと考えてまず最初に決めるべきことは
自分がつくった農産物を誰に売りたいのか
ということなんです。
たとえば。
あなたが有機栽培でピーマンをつくりたいと思っているとします。
それは誰に売りたいと思っているピーマンですか?
農協に卸したいと考えているのであれば、あなたのお客様は農協です。
農協が欲しいと思っているピーマンを育てる必要があります。
もしかしたら有機栽培を望んでいないかもしれません。
そうではなくて、高級レストランに直接売り込みたいと考えているのであれば、どこにでも売っているような普通のピーマンは望まれていないかもしれません。
高級レストランのシェフが望んでいるのは、京野菜の万願寺とうがらしだったり、真っ黒なピーマンやクリーム色のピーマン、などユニークな種類のピーマンかもしれません。
また、小さな子どもに食べてほしいと思っているのであれば、苦みが少なくて一口サイズの小さなピーマンを、安全や安心を重視した有機栽培でつくる必要があるでしょう。
同じピーマンを育てるにしても、誰に食べてほしいのか、誰に買ってほしいのかによって栽培方法も品種選びも変わってくるんです。
このように、まず有機農業がやりたいとか有機栽培で野菜を育てたいという商品に関することが先に来るのではなく、誰のための農産物をつくりたいのかというターゲット設定が先にくるべきです。
あなたは自分が育てた米や野菜を、誰に食べてほしいですか?
まず考えるべきはそこからです。
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・