新規就農に向けて開業資金、自己資金、貯金はどれくらい必要か

農業を始めるには、的なサイトを見ていると新規就農するにあたって最初に持っていた方がいい運転資金について触れられています。
少なくとも経営が軌道に乗るまで、3年くらいは生活していけるだけの生活費と農業経営費を合わせて800万円は必要だとか。
最初にビニールハウスを建てたり倉庫を建てたり、トラクターなどの農業用機械を購入するからまとまった資金が必要だとか。
1000万円とか2000万円とか。
いやいや20代には無理でしょ!みたいな金額が書かれていることも少なくありません。
というか、そんな大金を用意しなきゃ農業に参入できませんよ、みたいな意見ばかりです。

実際はどうなのか知りたいですよね。
これはどんな農業をやるのかによって大きく違ってきます。
たとえば。
農外出身者が一から酪農をするのであれば、就農支援資金を借りるとしても何千万円という初期投資が必要になります。
水稲をやっていきたいと計画しているのであれば、トラクターはもちろん田植え機やハーベスタ(収穫機)、脱穀機や乾燥機を自前で揃えることになるかもしれず、やはり多額の初期投資が必要になります。
野菜にしても、耕したり畝を立てたり種をまいたり収穫したり、出荷調整にも機械を導入するかもしれません。
それなりに投資が必要なのはたしかです。
すべて中古で揃えるのか新品で揃えるのかによっても違いますが、どんな形態をとるにしても一定の初期投資は必要です。

 

就農支援資金制度

そんなにたくさんの貯金はないなあ、と思いながらも新規就農を検討している方へちょっとしたアドバイスを。
新規就農するということは、新たに事業を興すということです。
サラリーマンの延長でやれるものではありません。
雇われる側にいた人間が、一転して雇う側の人間になるということです。
起業する、開業するというのに貯金がないとか初期資金を集められないとか、そんな甘いことをいってる場合ではありませんよ。
ないなら今の生活費をきりつめるとか、空いた時間を使ってアルバイトするとか、起業に向けて死ぬ気で資金を集めるくらいの覚悟は欲しいです。

とはいえ。
新規就農に向けて気合いを入れて勢いがついているときに、この勢いを大切にして一気に新規就農していきたいと考えているときに、何年も資金集めで時間を使ってしまうのは非常にもったいないです。
モチベーションを持続するのも大変ですし。
やりたい!と決断したのであれば、その気持ちが冷めてしまう前に行動したいですよね。
そんなときに活用したいのが、平成24年度より始まった青年就農給付金制度です。

『青年就農給付金制度』
青年給付金
青年(45歳未満)の就農意欲の喚起と就農後の定着を図るため、一定の要件を満たす方を対象として、国(農林水産省)から1人あたり年間最大で150万円の青年就農給付金が給付される事業
<内容>
就農前の研修期間中の所得を確保する給付金(準備型)と、経営が不安定な就農直後の所得を確保する給付金(経営開始型)があります。
準備型は最長2年、一人あたり年間最大で150万円支給。
経営開始型は最長5年、一人あたり年間最大で150万円支給。

ということは、すべての要件を満たせばトータルで1050万円が一人の就農者にたいして支給されるという制度なんです。
まとまった開業資金を用意できない、という理由で新規就農をためらっている人にとっては大変ありがたい制度だと思います。
アルバイトをしながら資金集めのためだけに時間を浪費してしてしまうくらいなら、この制度を利用してさっさと新規就農してしまったほうがその人のためになるでしょう。
    詳しくはarrow070_01青年就農給付金制度とは誰にとって有益なのか

 

給付金制度がない頃の就農事例

ちなみに。
私の個人的な話をすると、就農した2005年当初は青年就農給付金制度なんてものはなく、すべて自己資金でやっていかなければなりませんでした。
いまほど有機農業に対して温かい支援がなく、自治体へ農地を借りようと出向いていっても冷たくあしらわれるような時代です。
まあそれが当たり前だと思ってましたし、支援もない資金もないという就農初期の苦しい時期を乗り越える覚悟だけはありました。
極貧に耐える覚悟はありました。
そして、さきほど
「起業に向けて死ぬ気で資金を集めろ!」
と書いておきながら申し訳ないのですが、私が新規就農したときには手元に100万円あったかどうかというくらいの貯金しかありませんでした。
そんな状況なので、就農時には必要な軽トラックを含む農業機械類はすべて中古で揃え、種子やら堆肥やら、支柱やらを購入し、一年目にかかった経費は出荷関連の経費もすべて含めて約80万円ほどでした。
小さな規模で、あまり初期投資がいらないとされている野菜を選んだからこその金額と言えますが、世間一般的に言われているような大きな金額ではありません。
もちろん生活費に回せるだけの資金的な余裕もなく、日中ふつうにサラリーマンとして働いたうえで早朝と土日に農業をやるという過酷な初年度を過ごしました。
もし貯金がもうすこしあれば、もし青年就農給付金制度があれば・・・。
新規就農はもっとスムーズにラクに進められたかもしれません。
もちろん後悔はしていませんが。

給付金制度を利用することでプライドが傷つくとか、誇りを失いたくないとか、過酷な試練が好きなんですとか、そういった特別な理由がなければ青年就農給付金制度は利用すればいいと思います。
ただし、それが税金であることは忘れないでください。
 

 

まとめると。
どんな品目でどんな規模で、どんな事業形態にするのかによって初期運転資金は違います。
いくらかかります、ということは一概には言えませんが一般的に書かれているような大きな数字になることはないような気がします。
初期経費で大きなウエイトを占める機械類は、中古ですべて揃えればかなり金額を抑えることが可能です。
また、新規就農には勢いが大切なので、もし資金が足りないのであれば青年就農給付金制度を利用するのも手です。
とはいえ、やはり自己資金を自分の力で用意するくらいのやる気や計画性はあってしかるべきですし、給付金制度には頼らないというくらいの気概や覚悟があってほしいと思います。

参考になれば幸いです。

 

多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?

たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。

このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。

それは・・・

有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?

有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。

「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」

と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、

有機農業はちゃんと稼げる

ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。

ただし、条件があります。
それは・・・

つづきはこちら

 

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