自然農法の本質はどこにあるか(熱く長文)

自然農法(しぜんのうほう)とは、不耕起(耕さない)、不除草(除草しない)、不施肥(肥料を与えない)、無農薬(農薬を使用しない)を特徴とする農法。
とフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』にも書かれているとおり、不耕起・不除草・不施肥・無農薬というのが自然農法の基本的な考えです。
ですが松本自然農園では耕起することもありますし、施肥することもあります。
除草だって当たり前のようにします。
それでもやっぱり自然農法です、と言っているんです。
自然農法じゃないよ、それじゃ!
と思われる方も当然いることでしょう。

耕起・施肥・除草をしていて自然農法と名乗っているのはなぜか、整理しておこうと思います。

まず基本的な考え方は岡田茂吉氏の自然農法からきています。

【理念】 大自然を尊重し、その摂理を規範に順応する。
【原理】 生きている土の偉大な能力を発揮させる。

これが理念と原理です。
ものすごくあいまいな表現なので、良くも悪くもいろいろな解釈ができてしまうというのが正直なところ。
僕なりの解釈だと

自然の循環サイクルをお手本として、土が持っている能力を最大限に引き出す

ということですね。
木が茂り葉を落とし、地面に積もった葉が朽ちて土に還っていく、その土を養分として木がさらに育つ、という循環をお手本にしながら、そこに人間が介入することでその循環サイクルをさらに進めて豊かな土壌をつくっていくということです。
で、その人間の介入というのが草を刈ることであったり堆肥を入れることだったり耕すことだったりするわけです。
自然に任せたままにしておくと100年で1cmの土ができると言われています。
そこに人間が介入して草刈り・堆肥投入・耕耘することで、100年かかるものが1年で1cmの土ができたりします。
自然の土を100%とすると120%の力を引き出せたりします。
それが土が持っている能力を最大限に引き出すということであり、人間が自然界に果たすべき使命なのかなと思います。
自然農法における人間の役割(松本自然農園HPコラムより)

不耕起・不除草・不施肥・無農薬というやり方をとれば、土の状態は自然のそれに近くなっていきます。
ただ野菜は野草とは違って半自然な一面をもっていますから、自然の土で野菜が育つかというと必ずしも育つとは言い切れないのも事実。
人間と共存するキャベツ(松本自然農園HPコラムより)

不耕起・不除草・不施肥・無農薬にこだわるのは自然農法の本来の姿として大事なことですが、それが目的になってしまうと本質を見失ってしまいます。
あくまで手段であって目的ではないんです。

それと・・・ものすごく大事なことですが僕は農業をやっているんです。
業(なりわい)として農を実践している。
つまり理想だけを追求して野菜を栽培しているのではなく、経済性を考慮して農家として生活していくためにはどうするべきか、ということを真剣に考えています。
採れたものを売って生活の糧とするという観点を加えると、理想だけではやっていけないというのが現実です。
そこには収量性労働コストが関わってくるからです。
ある程度の収穫量があって、その野菜を消費者が買える適切な価格で販売しても採算がとれる。
こういうことがものすごく重要。
不耕起・不除草・不施肥・無農薬であっても採算があうかどうか、見極めが必要です。
見極めたうえでそれでもなお不耕起・不除草・不施肥・無農薬でOKということであれば、それをつらぬけばいいと思います。

解釈の相違からくる農法のずれ。
経済性を考慮しなければならない現代の事情。

自然農法をとりまく環境はまだまだ複雑です・・・。

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