農業といえば世襲制。
実家が農家で、それを長男もしくは兄弟のだれかが引き継いでいく。
そんなイメージが強いと思いますし、実際にそのような形で日本の農業は支えられています。
親が朝から晩まで必死に働いて農作物を育てている様子を目の当たりにしながら、あるときは家族労働力として当てにされながら、農業という世界を子どものころから触れて育ってきた人が仕事としての農業を選ぶ。
そのときに。
親の農業では生活が苦しく楽しそうにみえない、それでは跡を継ぐことを後ろ向きに考えてしまいますし、なんかがっぽり儲かっていて休みもけっこうあるなぁと感じられれば跡を継ぐことは前向きになります。
ようするに跡を継ぐかどうかは農業が魅力的に映るかどうかなんですが、そもそも実家が農家ではない人にとっては羨ましいと思える部分です。
今回は。
実家が農家でそれを引き継ぐ、いわゆる親元就農のメリット・デメリットについて。
非農家組が新規参入するときのメリット・デメリットについて書いていきます。
目次
非農家でも農業を始める時代になったとはいえ
親の農業を引く継ぐ、もしくは農家の家族構成員になる。
これはふつうに考えられる農業の形です。
サラリーマンをしていた子どもが、親の現役引退を機に会社を辞めて農業を引き継ぐ。
親が現役のまま家族構成員として一緒に働くという場合もあります。
現在の日本の農業は、世襲によって成り立っているという側面は否定できません。
そこには。
いやいやだろうが積極的だろうが、実家が農家であるというだけで半強制的に農業という道を選ばざるを得ないという事情があります。
農地という固定資産がなければ農業は成立せず、それは安易に貸し借りできないから必然的に世襲になってしまう、ともいえますが。
実家が農家ではない個人が新しく農業を始めようと思ったとき、農地を購入して所有することは法律上できません。
借りることはできるので新規参入はまったく不可能ではありませんが、ほんの数十年前までは不可能だと思ってしまうような状況でした。
いまでこそ非農家からの新規参入者は増えてきていますが、1980年くらいまではほとんどいないような状況で、非農家出身者が農業を始めるなんていう発想自体がなかったようです。
農地を借りようと行政に相談に行っても、
いや~新規参入とかやってないね~
とか言われる感じでしょうか。
いま現在は非農家組、いわゆる新規参入者はだいぶ増えています。
年間で2000人から3000人くらいが、職業選択として農業を選んでいます。
うまく統計を見つけられていないので正確な数字は分かりませんが、1980年ごろに数十人/年の新規参入があってから、年々徐々にその数字は増え続けていって、2010年ごろには2000人/年にまで増えていきました。
そして最近では、青年就農給付金制度がスタートしたことによって、新規参入者は3000人/年まで増えています。
ただし。
新しく農業を始める人全体としてもみれば、非農家組の新規参入はごく少数です。
ちょっとデータが古くて申し訳ありませんが、平成23年の新規就農者数は58120人で、そのうち非農家新規参入者数は2100人です。
農業法人などに就職する新規雇用就農者のなかには非農家組もいると思いますが、それをある程度考慮したとしても実家が農家ではない人が農業の道に進むのは
ごく少数
だということが分かります。
少しずつ事情が変わってきているとはいえ、農業を始めようとする人の多くは、
こせがれ
と呼ばれる農家生まれの人たちなんです。
親元就農者=こせがれ農家のメリットデメリット
非農家出身者が現れたことによって、親元就農組が持っているメリット・デメリットを考える機会が生まれました。
農家に生まれた人が農家になる、その道しかなかった時代には当たり前すぎて考えもしなかったことが、非農家からの就農ルートが出来たことで浮き彫りになってきたわけです。
わかりやすくいえば、農家のこせがれは
大きなアドバンテージ
があります。
先祖伝来の土地、農業技術、農業機械などの設備、既存の販路、地域での認知など。
すでに農業をしている親が持っているものを、そのまま受け継いでスタートすることができます。
これがいかに大きなアドバンテージなのかを、こせがれ自身があまり自覚していないところもありますが、政治家を例に挙げると非常によくわかると思います。
国会議員の中にかなり多くの二世議員、三世議員がいることはみなさん御承知の通りですが、その割合は選挙ごとに変わるので違いますがだいたい3割前後くらいです。
3割ってすごいですよね。
被選挙権を持った国民であればだれでも国会議員になれるのに、その国会議員の3割は親父や祖父が議員だった家系の人なんです。
その理由ははっきりしていて。
いわゆる世襲議員には親から引き継いだ強力な支援があるため、選挙で当選しやすい利点を持っているからです。
その支援は三バンと呼ばれています。
地盤 = 親から受け継いだ後援会組織
看板 = 親が持っている知名度
カバン = 親から無税で受け継いだ選挙資金
親の強力な支援があるからこそ、まったくの新人候補であっても知名度があり票が集まり、費用のかかる選挙活動が苦にならないわけです。
こういう話は政治だけに見られるものではありません。
芸能界には二世タレントがけっこう多いですし、親が医師だという医学生はかなり多いです。
東京大学の在学生は、世帯年収950万円以上の家庭が50%を超えているというデータがありますが、これだって親の支援あってこその結果だとすれば二世高学歴と言えるのかもしれません。
日本の社会では、親の支援を受けることで有利に歩いていけるのは間違いないことだと思います。
そして農業。
世襲が当たり前になっているので気づきにくいですが、親の支援を受けることでかなり優位に新規就農をスタートさせることができます。
先祖伝来の土地、農業技術、農業機械などの設備、既存の販路、地域での認知など。
どれもこれも、非農家出身者にとってノドから手ができるほど欲しいものばかりです。
逆に言えば、非農家出身者はこれらのアドバンテージをまったく持たないでスタートしなければならないということ。
地縁がないので優良農地を借りられることはあまりないですし、栽培を一から教えてくれる師匠(親)は近くにいない、農業機械や倉庫などの大きな設備投資が必要だし、売り先の確保をゼロから始めなければならない。
就農してからのスタートダッシュがまったく違ってくることは想像に難くないでしょう。
こせがれ農家がいかに恵まれているのかは、非農家出身者が痛いほど知っています。
でも。
親元就農はメリットばかりではありません。
親のほうに強い権限が残っていれば、自分の好きなようにやっていけません。
親は稲作農家としてやっているけど自分は野菜を作りたい、と思っても叶わないかもしれません。
師匠としての親の考えに左右されるため、事業として好きなように展開することが出来ないかもしれません。
自由度の低さはデメリットになります。
ただし非農家の新規参入者からみれば、そんなのは贅沢な悩みです。
デメリットを完全に打ち消してしまうくらいの大きなメリットを持っているのが親元就農だと言えると思います。
新規参入のメリットデメリット
親元就農が有利であることは間違いありません。
親元組こせがれ農家が多くを占める農業界において、非農家の新規参入者が長く生き残っていくのはかなり大変なことです。
でも。
非農家組にはこの上ない自由があります。
どこで就農して、どんなものを育てて、どんな売り方をしていくのか。
誰にも縛られず、自分の思うように農業生活を謳歌することができます。
そのメリットを活かさなければ農業を始めてもきっと楽しくないでしょうから、非農家だけど農業をやりたいと考えているならこせがれ農家との違いをしっかりと理解すべきだと思います。
結局のところ。
どちらがいいということではありません。
自分の立ち位置をしっかりと見定めて、あるものないもの有利・不利を見極めて、どう動くべきかを考えていくべきです。
親の三バンがあるならそれを活かせばいいですし、ないなら自由度を存分に謳歌すればいい。
他人と比べるのではなく自分はどうしたいのか、どうするべきかを考えてみてほしいと思います。
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・