田舎暮らしで農業を仕事にする 自給自足は難しくない

このご時世、田舎暮らしを希望する人は決して少なくありません。
満員電車に揺られて通勤するつらさ、なんだか冷え切った人間関係、都会の生活に疲れて、サラリーマンとしての生活が辛くなってきたから田舎で農業でもやろうかと考える人は結構いるんじゃないかなと思います。
緑に囲まれてのんびりとした時間を過ごしながら、米や野菜を育てて家族みんなで楽しく生きていきたい。
自然環境に恵まれたところで、子どもたちをのびのびと育てたい。
そういう生活に憧れる気持ちはすごくよくわかります。
この時に。
自給自足というキーワードが必ずといっていいほど上がってきます。
安全な食べ物を求めて、自分たちが食べるものは自分たちで作りたい。
自分で米や野菜をつくれば食費が少なくて済むんじゃないか。
そのような考え方です。

そして。
自給自足の延長で、育てたものを売ってお金に換えていく、つまり農業を仕事にしたらいいんじゃないかという考えに行きつく。
おすそわけ感覚で農産物を売って収入を得られないかと思案します。
じつはここに問題があります。
今回は。
田舎暮らしを希望していて、なおかつ自給自足を望んでいる人たちが気をつけるべきことについて書いていきます。
田舎暮らしを否定しているわけでもなく、自給自足をやめるべきだという話でもありません。
農業を仕事にするのは、自給自足とは違うんですよという警告になります。

 

自給自足の魅力とは

田舎

都会から離れて田舎に暮らす。
貨幣経済に嫌気がさしてしまい、なんでもお金で解決しようとする考え方に疲れて、田舎に暮らしながらお金第一主義ではない自給自足的な生き方をしていきたい。
そこには農をからめていきたい。
そのように考える人はおそらく少なくありません。
田舎暮らしもしくは農的な暮らし。
田舎に暮らすということと食べ物の自給自足を切り離しで考えることはできません。
農を中心とした生活スタイルで、米・麦・野菜などを自給しつつ味噌・醤油など加工品を作って楽しみ、動物を飼ったりエネルギーを自給してみる。
自給自足というキーワードには、必ず食料自給の意味合いが強く含まれます。

いいですよね。
自分で育てたものが食卓に上がる。
作り手がわかっていて、愛情をこめて育てたものを、採れたての状態でおいしくいただく。
このうえない幸せです。

 

自給自足は難しくない

田舎暮らしで自給自足を考えたときに気になるのはやっぱり収入源。
自給自足はいいけれど、家計費に占める食費の割合なんてたかがしれているんだから、やっぱり金銭収入がなければ生活は厳しいよね。
という現実的な意見もあります。
たしかにそうです。
でも田舎に仕事はあまりない。
もちろんゼロではありませんし都市がある程度近いなら通勤することもできます。
とはいえ基本的に選べるほど仕事が豊富にないのが田舎という環境です。
だからこそ仕事としての農業を考えます。
自給自足として自分たちが食べたいものを育てる、それをちょっと手広くやって余った米や野菜を売っていけば現金収入になるのではないか。
野菜を漬物にして売ったり、大豆を育てて味噌を作って売ったり。
自給自足の延長として農業を仕事にしてもいいんじゃないかと考えます。

でもここに。
大きな落とし穴があります。

田舎の風景

自給自足は自分自身が満足すればそれでいいんです。
自分が食べたいものを、自分が満足するレベルで追求していけばいいですから、すこしくらい虫食いがあっても変な形であっても問題ありません。
でも出来たものを他人に売るとなればそうはいきません。
お金を払って農産物を買っていただくということは、その対価に見合ったものを提供する義務があるということ。
自分たちが満足すればいい、つまり自己満足の農産物ではお金を頂くのは難しいんです。

農業で生計を立てるというのは自己満足ではダメなんです。

農産物を買ってくれる人がいて、その人たちがお金を払ってくれるからこそ商売としての農業が成り立つわけで、いかにお金を払ってもらおうかという視点が欠けていると農業として成立しません。

人間関係でもそうですが、他人を自分の思い通りに動かすことはほぼ不可能です。
何となくうまくいったような気になることもありますが基本的に他人は他人。
自己満足を押し付けても、それを欲しがる人は限りなく少ないということを知ってほしいと思います。
ここに自給自足と農業との大きな差があります。
自給自足は自己満足。
農業は他人を満足させる仕事。

自給自足と農業とでは、立ち位置がまったく違います。
自分で好きなようにやって好きなように楽しめば成立する自給自足とは違って、農業には相手がいて相手が満足するように動かなければ結果が伴わない。
ということです。

そういう意味では。
自給自足は簡単、農業は難しい。
と言えるはずです。

 

自給自足だからこそビジネス思考を持つ

一応断っておきますが、自給自足そのものを否定しているわけではありません。
自給自足は素晴らしい考え方です。
素晴らしい生き方です。
もしそれを望むなら、しっかりとそれを追求すればいいと思います。
ここで言いたいのは。
自給自足だからこそ商売としての農業を考えてほしいということ。
労働効率を考え生産効率を考え、短い時間でしっかりと利益を上げていく商売としての農業を追求していけば、結果的にしっかりとした収入が得られる上に多くの時間が確保できます。
効率を上げるということは時給が上がるということだからです。

時給が上がるということは、欲しい収入を得るために少ない時間で働けばいいことになります。
そうして余った時間を、自給自足のために使えばいいんです。
収入が少ないけど自給自足で幸せ。
それは結構なことですが、
収入がある上に自給自足で幸せ。
だったら最高じゃないですか。
望む生活を最高の形で実現するためには、農業をしっかりと生業(なりわい)として見ていくことが求められます。

カネカネ言ってるのが嫌だから田舎暮らしで自給自足を望んでいるかもしれませんが、本当に社会から隔絶して生きていかないかぎりお金は必要になります。
お金を一番に考えないとしても必要なものなので、必要な分だけをきっちりと稼ぐことが大切ではないでしょうか。

 

 

 

多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?

たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。

このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。

それは・・・

有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?

有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。

「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」

と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、

有機農業はちゃんと稼げる

ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。

ただし、条件があります。
それは・・・

つづきはこちら

 

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