みなさんの有機栽培農家のイメージはどのようなものでしょうか。
おそらく。
たくさんの種類の野菜や米をこまごまと育てたり、鶏などの家畜を飼っていたりして、できたものを消費者のところへ直接お届けしている。
そんなイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。
実際には。
生産量でみるとそれほど多くないかもしれませんが、有機農業のなかでは多品目栽培をして産地直送している農家はけっこう多いです。
イメージどおり。
そして新規就農を希望している人の多くも、この形態をやってみたいと考えているのではないでしょうか。
というわけで。
今回は、多品目有機栽培農家について書いていきます。
経営の特徴、メリット・デメリットなど、実際にこの形でやってきた農家の意見ですので参考になるはずです。
どうぞ最後までご覧ください。
目次
多品目有機農家の特徴
誰が言ったかわかりませんが、
年間を通して何十種類という農産物を生産し、消費者と提携して直接販売をしていく。
こういう経営スタイルを
少量多品目産消提携型農業
と呼んだりします。
まあ別にこういう堅苦しい名前は覚えなくてもかまいませんが、多くの品目を同時に育てていくということと、中間業者を通さずに消費者に直接販売していく、というところにこのスタイルの特徴があります。
栽培に関しては、大きな家庭菜園といった感じでしょうか。
畝ごとに栽培している品目が違うのは当たり前。
規模が小さいうちはひとつの畝のなかに数種類の作物が植えられていることもしばしば。
とにかくコロコロと栽培しているものが入れ替わっていくので、見ているほうは非常におもしろいですが管理しているほうは頭から煙が出るくらい栽培管理に気を遣います。
あくまで家庭菜園を大きくした感じなので、誰でもできるといえばそれは間違いではありませんが、育てるだけではなく販売も視野に入ってくると話がまったく変わってきます。
販売はたいてい野菜を10種類前後詰め合わせた野菜ボックスにすることが多いのですが、
年間とおして切らさずにセットを提供していく。
というのが非常に難しいんです。
今週は10品目あったけど、来週はたぶん7品目くらいになりそうだ。
とか、
10月は野菜の種類がそろわないので1ヶ月ほど発送を休止します。
とか、そんな不安定な売り方をしていてはお客様は離れていってしまいます。
年間を通して安定して野菜セットをつくって、安定して供給をしていく。
そのためのしっかりした栽培計画と、それを現場に反映させる実行力が必要になります。
販路開拓でつまずく農家は多い
販売先は。
おもに、家庭向けもしくは飲食店に直接お届けしている農家が多いです。
小売店や飲食店は、そこに営業をかければそこが販売先になるので分かりやすいですが、家庭向けとなると
「どうやって営業をかけたらいいんだ?」
「どうやってお客様を増やしていけばいいんだ?」
という不安要素がついてまわります。
多くの多品目有機農家は、最初は親せきや知り合いなどに買ってもらいつつ、口コミでどんどん販売先を広げていくという手法をとっているようです。
なかにはインターネットを活用してホームページから集客したり、facebookやtwitterなどのSNSから拡散されて集客に結び付くという例もありますが、全体的にはそれほど多くありません。
(ということはココが狙い目だ!という発想が大事です)
ですが。
口コミで広げていくという戦略はある程度のところで行き詰まります。
最初はいいんです。
親戚や友人、知り合いは顔見知りですしその農家のことを知ってますから。
でも、知り合いの知り合い、友人から紹介された人、またさらに紹介された人、と広がっていくと結局は他人に売るのと変わらなくなってくるんです。
もちろんクチコミや紹介による宣伝は効果が大きいですが、そこだけに頼っている有機農家は集客に行き詰ってしまうことも多いようです。
もちろん、ついつい人に教えたくなるような本当に素晴らしい商品を提供している農家であれば勝手に噂が広まっていくので問題ありませんけどね。
今はインターネットが普及しているので、それを活用して集客している農家も多くなってきています。
千人とか一万人とか大勢の人(不特定多数)に買ってもらうというよりは、百人のファン(特定少数)をつくってその人たちに対して長く売っていくというスタイルなので、農家としての想いや日常を伝えやすいインターネットは小さな農家の集客ツールとしては非常に相性がいいと思います。
でも。
ちゃんと活用していない農家が多い・・・。
ホームページをつくっただけ、ブログをちょっと更新してみたけど忙しくてやめてしまった。
そんなサイトが山のようにあふれています。
インターネットの可能性を低く見ているんでしょうか、それともネットを使わなくてもちゃんと集客できているんでしょうか。
私はこの現状を非常にもったいないと思っているんですが、そのおかげで私自身は悠々と泳がせてもらっているとも言えます。
もし新規就農してインターネットから集客を考えているのであれば、それは素晴らしいことだと思いますし、まだまだ新規参入できる余地は残されていますが、個人的には「頑張ってサイト運営する農家が増えると大変になるなぁ~」という気持ちもあります。
素直に「みなさんがんばって!」とは言えないですね。
というわけで。
多品目有機農家とは、作物をこまごまと家庭菜園のようにたくさん育てて、それを契約したお客様に直接売っていく。
多品目だから天災などのリスクに備えることができるし、定期契約をすることで安定収入を得ることができる。
そういう経営スタイルだということです。
興味がありましたらどうぞご検討ください。
次回は。
【2】有機農業の王道 多品目栽培にはメリットとデメリットがある
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・