農家は時給という指標をどのように活用すべきか

 

一般的に、学生時代にアルバイトをしたり社会人として就職したりするときには
時給や日給、月収
というものを気にすると思います。
働く目的を「お金を稼ぐため」としている人が多いことの証拠みたいなものですが、同じ時間を使って働くのであれば一円でもたくさん収入が得られたほうがいいですよね。

短い時間で効率よく稼ぎたい。
もっとたくさん収入が欲しい。

というときには時給はおおいに気になるところです。
そして高い時給で働きたい。
その欲求は健全だと思います。

ただし。
新規就農するときに農業法人に就職するとか農協の傘下に入るとか、自営業としての農業をあまり意識しないときはアルバイトの感覚で時給を考えればいいんですが、そうじゃなく独立起業して農業経営をしていくときには
時給
の捉え方で少し見方を変える必要があります。

 

被雇用者としての時給

サラリーマンとして働いている、もしくはアルバイトをしているという場合。
自分自身には時給が設定されています。
会社からは月収という尺度でしか提示されていないかもしれませんが、それは見せていないだけで裏ではおおまかな時給計算がされているはずです。
時給800円だったり時給2000円だったり。
月収24万円であれば、月160時間労働を目安にすれば時給1500円。
その時給をベースにして、何時間働いたからこれだけの給料がもらえるという計算のもとでサラリーマンは働いています。

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それは。
歩合制でないかぎり、どれだけ頑張って働いて会社の利益に貢献しても、どれだけサボって仕事が進まなくても、同じ給料がもらえるということ。
仕事の出来不出来にかかわらず一定の給料がもらえるんです。

このことを言い換えると。
先に時給という設定があって、会社へ自分の時間を切り売りしているということです。
一日24時間という天から平等に与えられている宝物(時間)を、労働という形に置き換えて会社に渡すことで代わりにお金を頂いている。
ということ。
時給が先、労働が後。
ということです。

 

自営業者としての時給

これが自営業者では逆転します。
労働が先、時給は後。
というわけです。

何時間働いたから●万円の収入になる、というものではなくて、一年なら一年という期間を働いてみて結果的に時給計算したら1000円だったという感覚。
働けば働くほど収入が多くなる、とは言えません。
頑張って仕事を効率的に進めれば収入が増えることはあります。
サボっていれば収入が減るのは、サラリーマンとは全く違いますよね。

どれだけ働いたか。
これは関係ありません。
どんな結果を出したか。
自営業ではそれがすべてです。

一生懸命がんばってキャベツを育てて、それを売ってみたら100万円の収入が得られた。
労働時間を調べてみたらだいたい1000時間くらいだった。
ということであれば時給は1000円です。
時給1000円で働いて100万円を得たのではありません。
働いた結果が時給1000円だったというだけの話です。

そこには自分の時間を切り売りしているという感覚はありません。
あくまでも結果としてついてくるもの。
一年を振り返ったときに「あーそうか」と灌漑にふける程度のものなんです。

 

農家にとって時給という指標に価値はある?

じゃあ自営業者としての農家にとって時給はなんの意味もないのかといえば、そんなことはありません。
働くときの目安として重要な指標になります。

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(画像参照:株式会社向井工業 ごんべえ

たとえば。
種を播くという作業があったとして。
その作業に年間で200時間かかってしまう、これは何か道具を使ったほうが速いんじゃないかと考えます。
そこで播種機を買おうと決めました。
いろいろと調べてみて、その播種機を使えばだいたい年間で100時間もあれば種まきが完了するということが分かったとします。
これはつまり、播種機を導入することで年間100時間の労働が短縮される可能性があるということ。

播種機の値段。
10万円。

年間100時間の労働を削ることができる播種機は、10万円を払ってでも買うべきなのか。
迷いますよね。

ここで時給という指標が活きてきます。
たとえば過去の経営から自分自身の時給は1000円だと判明していたとして。
時給1000円で100時間働けば、その労働価値は10万円です。
播種機を買うことによって作業が100時間短縮されるなら、その余った100時間を別のことに使えば10万円分の新たな収入を得られるということになりますし、播種機には10万円分の価値があるということです。

つまり。
播種機を買えば1年で元が取れる。
播種機はたった1年で壊れるような機械じゃないですから、3年5年と長く使っていけば10万円の播種機はどんどん費用対効果が高くなります。


今回は播種機という道具を例にしましたが、なにかを購入しようと検討したときに時給という指標を持っていれば、迷うことがなくなるということです。
絶対的な指標ではありませんが、物品購入での目安になると思います。

 

自分の労働価値を知っておいて損はない

農家にとって時給という指標は働くときに重要なものではありません。
アルバイトをするときのように1時間働けば●円得られるという単純なものではないからです。
でも。
自分自身の労働価値を知っておいて損はありませんし、資材購入などにおいては非常に役に立つ指標になります。

ほんの少しでいいので気にしてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

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