農業者も消費者も農薬に踊らされてはいけない

半年ほど前になりますが、日本政策金融公庫から依頼がありAFCフォーラムという冊子に寄稿させていただきました。
あちこちで目にするような冊子ではありませんので、おそらく記事をご覧になった方は少ないのではないでしょうか。

日本政策金融公庫のサイトからは冊子データをPDFファイルとしてダウンロードすることができますので、興味のある方はそちらにアクセスしてみてください。

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AFCフォーラム 2017年3月号

下記に寄稿記事を載せておきます。

 

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農業者も消費者も農薬に踊らされない
農薬は目的を達成するための手段である

農薬は人体にも環境にも危険な存在だ、という意見がある。一方で、農薬は科学的にみれば安全で問題ない、といった意見もある。

どうして正反対の主張が出るのかといえば、私は考え方の基準が違うから、という一言に尽きると思う。

農薬危険派は安全基準をかなり厳しく持っており、少しの農薬が検出されるだけでも敏感に反応し、農薬不要論を展開しようとする。

他方、農薬安全派は国が定めた基準を信じて科学的に農薬を見ている。絶対安全はない、という考え方で物事を見ているので、農薬使用によるメリット・デメリットを冷静に判断している。

つまり、危険か安全かを判断する物差しが主張する人によって違うため、結果的に意見が分かれる。ただそれだけのことである。

別の言い方をすれば、農薬の使用・不使用によって、安全性に大きな差異はなく、世間的に安全であるとの評価を受けている。そこでいわゆる有機農業は、農薬を使っていないから安全だと言うが、安全性だけでは有機農業の優位性はないと思う。

もし有機農業に優位性があるとするならば、消費者に安心を提供しているという点なのではないか。私は現状では農薬の安全性について、消費者が正しく判断しているとは言い難く、有機農産物のほうが安全であるという認識の下で安心感を得ているのではないかと思う。有機イコール安全の空気をつくり出したことが、結果的に消費者の安心につながっているのである。

本来、農薬は、安全性という指標のみでその是非を判断すべきではない。農薬を使用する目的、役割をしっかりと考えた上で多面的に判断しなければならない。

農薬は、適切に使用すれば安定生産・大量生産が可能になり、市場に農産物を安く供給することができる。そのため、見た目がきれいで安い農産物を欲しい時に欲しいだけ買いたい消費者のニーズをしっかりと満たすことができる。そこに大きな需要があるからこそ慣行農業は、農薬を使うことで目的を果たし、顧客満足を得ているのである。

一方、食の安全に対して敏感な消費者のニーズを満たすため、「危険」だといわれる農薬を使わない栽培を確立した有機農業が広がっている。現状では無農薬での栽培技術はまだまだ発展途上であり、安定して高い収量を得ることは極めてハードルが高い。そのため、見た目がきれいで安い農産物を安定供給するには至っておらず、価格は高くても安全を最優先に求める一部消費者のニーズを満たしているにとどまっている。

つまり、農産物の安さや安定供給を求める消費者には慣行農業、農産物そのものの安全や安心を求める消費者には有機農業と、それぞれのニーズを満たすために役割を分担しているだけのことであり、どちらの農業が正しいという話には決してならない、と私は思う。

もっとも大切なことは、消費者が求める良いものを生産し、消費者に安心して食べていただくことだ。味、見た目、栄養、安全性、価格、安定供給など多様なニーズを満たすために多様な農業の形で対応していく必要があるからこそ、農薬を使う慣行農業や農薬を使わない有機農業が存在している。

私の農園では農薬を使っていない。農薬は危険なものではないが、健康でおいしい野菜を育て届けるためには必要ない、と思っているからである。

農薬は便利なものではあるが、それに頼っていては栽培技術が磨かれない。ごまかしの効かない環境において、どのようにして美味しい野菜を収穫できるまでに仕上げていくのか、農薬を使わないということは、野菜と真剣に向き合う姿勢が求められていることだ。新鮮さ、栽培方法、品種、旬の四つを満たすことで野菜はおいしくなり、有機野菜を直接販売している農家はこの条件を満たしやすい環境を整えている。

安全は大事だが、安心はもっと大事だ。私は安全であることを当たり前として、その先にある無農薬野菜の価値を消費者と直接つながることで伝え、信頼関係を築いていこうと思っている。

農業者は、なぜ農薬が必要なのか、農薬を使うことで誰の悩みを解決できるのか、農薬を使わないことでどんな利益があるのか、改めて農薬と向き合ってみてはどうだろうか。農薬は目的を達成するための手段であることを忘れてはならないし、農業者も消費者も農薬に踊らされてはいけない。

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