農産物の魅力を伝えて農家=生産者の枠を超えよう

自分は生産だけに集中したい。
栽培をとにかく楽しみたい。
そんな農家になりたいなら、農協出荷型の農家になればいい。
でも。
自分でつくったものを自分で売っていきたい、といった自営業としての農家になるなら、栽培だけではなく販売も考える必要があります。

このとき、商売するんだという意識をもたなければ、農家としてやっていくとはできません。
販売に足を踏み入れることは、生産だけやっているのとは点と地ほどの差があるからです。

そして販売は難しい
ただたんに値段をつけて売ればいいというものではありません。
いろんなことを調べて、考えて、やってみて、失敗して。
いやらしい話、いかにして一円でも多く売上を増やすかを思考錯誤していかなければならないんです。
今回はそんな販売の話。
・・・といっても販売という活動のなかの一部、商品の魅力を伝えることの重要性について書いていきます。

 

100点の伝え方

農家にとって、生産は仕事の中心になる大切なものですし、作物を育てることが好きで農業をやっている人も多いと思います。
そして、栽培には終わりがありません。
完璧にできたと思っても、それが100点というわけではなく、もっとたくさん収穫したい、もっと美味しく育てたい、など目指すべき目標はいくらでも見つかります。
おそらくここが栽培の醍醐味のひとつでしょう。
目標としていたところに到達した。
思っていた以上の品質のものができた。
これはものすごい喜びですが、そこからさらに高みがあることが、栽培を追求する意欲をかきたてています。

では、栽培を追求していった結果、100点をとれたとして。
自分以外の誰がその点数を理解できるでしょうか。
100点の商品だからといって、いつもの1.5倍の価格で買ってくれる人がどれくらいいるでしょうか。
以前より10倍美味しくなった、と思っていてもそれは自己評価にすぎない。
間違いなく品質は2割増しでアップした、と自画自賛したところで購入者がそこに気づくとはかぎりません。

大切なのは、

100点の商品が100点であるのを伝えること

それが100点であることを伝えられなければ、70点にしか見えないことだってあります。
買ってくれた人が満足できないことだってあり得るんです。

 

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たとえば。
とにかく甘いトマトをつくりたいという想いで、あれこれ勉強して、栽培で独自の工夫をして、ふつうならやらないような手間をかけて、ようやく思い描いた100点のトマトができたとします。
そのトマトを売るときに。
食べてくれさえすれば分かるんだ、と何も記載せずにふつうに包装してふつうの値段で売っていたらどうでしょうか。
あー甘い!
と感動して何度も買ってくれるお客様はいるでしょう。
気に入ってリピート購入してくれることもあるでしょう。
でもここで。
「糖度15度!」
と記載して売ったらどうでしょう。
もちろん売れます。
15度のすごさを知っている人は確実に手を伸ばしてくれると思います。
反響を呼ぶ可能性だってあります。
じゃあ。
「スイカよりも甘い!」
と表現を変えたら?
糖度15度をイメージ出来ない人にも手に取ってもらえる可能性が高まります。

自分のこだわりをいかにして伝えるのか。
商品の価値をどれだけ分かりやすく伝えるのか。
栽培で100点を目指すのと同時に、その点数をしっかりと理解してもらえるような伝え方も追求しなければ、せっかくのこだわりが無駄になってしまいます。

 

点数以上の価値を提供する

もっと極端なことをいえば、たとえ70点の商品でも、その魅力をうまく伝えてよく見せることができれば、買った人は100点に感じるかもしれないということです。

これはなにも悪徳商売をしなさいと言っているわけではありません。
受け取った人が満足することが最重要だと言いたいんです。

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(画像参照:株式会社 精工

たとえば。
丹精込めて育てたトマトを、つやつや透明のビニール袋に詰めて、口をテープできゅっと留めて出荷する。
ふつうですよね。
そこにラベルを貼ってアピールすることはあるかもしれませんが、どこでも見られるふつうのトマトです。
でもここで。
トマトを、桐箱にふわふわの綿を敷き詰めたところに入れる。
プレミアム・トマトなどと名前をつける。
1個1000円という高値をつける。
これでどうでしょう?
大切に育てられた特別なトマトであるように見えませんか?

中身はどちらも同じトマトです。
でも見せ方を変えるだけで受け取る側の印象はずいぶんと違ってきますし、そこから得られる価値も違ったものになります。
ここでのプレミアム・トマトは、かなり高級なだけにおそらく購入する側にも特別な思い入れが生まれるはずです。
お世話になった方へのお礼として、自分へのご褒美として、このトマトを買うのかもしれませんよね。
そのときに。
プレミアムな演出をされたトマトに価値を感じて、購入したことで大満足する可能性があります。
プレゼントとして受け取った人が、その高級感に満足するかもしれません。
食べたときの感動はもちろん必要ですが、味だけではないトータルでの価値に満足していれば、そのトマトの価値としてはじゅうぶんじゃないでしょうか。

 

商品の価値を決めるのは、生産者ではなく消費者である。
トマトという食べ物を売るだけではなく、トマトを通して感動を売ることができることも知っておいてほしいと思います。

 

商品を構成するのは見た目や味だけじゃない

農家は食べ物を生産していると思われるかもしれませんが、それはひとつの側面にすぎません。
商品が持っている価値はかなりたくさんあるんです。

新鮮さ、珍しさ
食感、味
価格
見た目、パッケージ
生産者情報、栽培履歴
ストーリー

販売を他人に委ねるなら、新鮮さや価格を気にするだけでいいかもしれません。
でも、自分で販売までやるなら、さまざまなことを考慮して商品の価値を伝える責任があります。
自分が育てている農産物にはどんな魅力があって、どんな価値をもっていて、誰を喜ばせることができるのか。
それを考えて、うまく表現して伝えていくことで農家の商売へプラスに働きます。
農家=生産者の枠をぜひ飛び越えてみてほしいと思います。

参考になれば幸いです。


 

 

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