安全神話に頼り切った農家は綱渡りをしているようなもの

世のなかの風潮として、安全な食材を求めている事実はたしかにあります。
消費者として食の安全にこだわっていたという背景をかかえて生産者になった人はいるでしょうし、安全が求められているなら有機野菜を作れば高く売れるんじゃないかと商売目線をもって農業へ参入した人もいるでしょう。
ここで共通して言えるのは、

安全性

というキーワードを軸に考えていること。
安全な食べ物が求められているから安全をウリにした食べ物を生産する。
それはある意味では正解かもしれませんが、現代社会はそれほど単純な思考では動いていません。
もっと多様なニーズがあり、そこにむけて多様な商品を提供していかなければならないんです。
今回はそのあたり。
多様なニーズに応えていくことの重要性、消費者は本当に安全を求めているのかという問いを含めて考えてみたいと思います。

 

自動車のラインナップはなぜあんなに多様なのか

スポーツカー

いきなりですが農業以外の例で考えてみます。
自動車、というと様々な形、色、装備、性能がありますよね。
ワンボックスもあればセダンタイプもある、スポーツタイプもあればトラックもある。
さらには、乗り心地が違ったり走行性能が違ったり、燃費が違ったり輸送能力が違ったり。
車種ごとにグレードがあり装備オプションが数多くラインナップされていたり。
とにかく自動車を購入するときには目移りして迷ってしまうくらい選択肢が多く用意されています。
それはなぜか。

高級車が欲しい人がいるから?
軽自動車が欲しい人がいるから?
スポーツカーが欲しい人がいるから?

もちろん特定の車種を名指しで欲しがる人もいますが、多くの人は欲しいと思っている目的に合わせて車を選んでいます。

走行性能や乗り心地には目をつぶって燃費を最重要視したいから軽自動車を選ぶ。
趣味としてドライブを快適に楽しみたいから燃費や居住性は無視してスポーツカーを選ぶ。
ステータスとして優越感を味わいたいからちょっと高いけど高級車を選ぶ。

まず目的があって、乗り心地・居住性・燃費・走行性能・価格などに優先順位をつけながら、自分に合った車種を探し出していきます。
だからこそ自動車メーカーは、この車種はなにをウリにしているのか、なにを優先して作られている車なのかを明確に提示しますし、様々なニーズに対応するために多くのラインナップを用意しているんです。

 

自分の商品は誰のどんな目的を達成できるのか

農産物だって同じことだと思いませんか?
有機農産物だから安全をウリにして、安全を気にする人に売ればいい。
そんな単純なものではないんですよ。

たしかに安全性に対するニーズは強いです。
そこにフォーカスして安全性を前面に打ち出していく売り方は間違っていないと思います。
でも。
農産物に求められているニーズは、安全性だけではないことを忘れないでください。

価格というニーズはもちろんあります。
新鮮さも求められています。
栄養価や美容効果を気にする消費者も多いです。
見た目が悪いと買ってもらえません。
とにかく味にこだわる消費者だっています。
珍しさや希少性を求める場合だってあるんです。
もちろんステータスとしてブランド価値にも需要はあります。
健康のために、という強いニーズがあるのもたしかです。

とにかく農産物に求められている価値はたくさんあって、消費者はこれらの価値基準に優先順位をつけて商品を買うんです。
とにかく価格を優先する人もいれば、ちょっと高いけど安全性を重視する人もいる。
味さえよければ見た目は気にしない人もいるし、健康のためなら出費を惜しまない人もいます。

だとしたら。
売り込み方はひとつじゃない、ということがお分かり頂けるでしょうか。

消費者が強く求めているものを、生産者が意識して提示する。
そういう売り込みは必要だと思います。

有機農産物のブランドを気にする人にはイメージで。
安全をとにかく気にする人には科学的データで。
健康を手に入れたい人には栄養価や効用を。

この農産物があなたの願いを叶えてくれますよ、という売り込みはあって当然ではないでしょうか。
有機農産物だから安全性、一般的な農産物は安さ。
みたいな風潮はあまりにも単純に考えすぎていると思いますよ。

 

こういう話はマーケティングではセグメントという言葉で表現されます。
セグメント・・・市場の中で、共通の顧客属性を持っている集団

農業の世界にももちろんマーケティングは必要です。
顧客をセグメント化する、つまりセグメンテーションはたとえ家族経営の小さな農家であっても行うべきマーケティングのひとつになります。
こんなカタカナ用語は知らなくてもいいですが、

買ってくれるお客様はいったい何を最重要視しているのだろうか?

という視点は常に持っておいてほしいと思います。

 

多くの切り口を持っている農家は強い

綱渡り2

有機=安全性
慣行=安さ

そのようなワンパターンで売り込むしか切り口がないと、一本の細い糸を綱渡りしているようなものでかなり危険です。
無農薬=安全
という安全神話が崩れたときに、一緒に崩れていくことになるからです。


農産物には多くの価値があり、消費者は無意識かもしれないけど価値に優先順位をつけて自分に合った農産物を選んでいる。

自分の育てている農産物は、誰のどんな望みを叶えるための商品なのか。
改めて考えてみてください。

 

 

 

多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?

たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。

このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。

それは・・・

有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?

有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。

「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」

と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、

有機農業はちゃんと稼げる

ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。

ただし、条件があります。
それは・・・

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