一般的に農家とは、農作物を育てる人。
生産をして、それを売って生計を立てていく一家。
という感じではないでしょうか。
たしかにそれは間違っていませんし、生産なくして農家を名乗ることはできないかもしれません。
六次産業化の例もあるので加工業もやったりする農家はいますが、基本はだいたい生産者です。
でも。
世間の認識はそれでよくても、農家自身が
農家=生産者
と思いこんでいるのは非常にもったいない。
生産者意識の、その先が見えてくると、農家としての幅が広がるし楽しくなります。
今回はこのあたり。
農家はただ食べ物をつくっているだけじゃないんだぞ、という話をしてみたいと思います。
けっこう大事なことですので是非最後までご覧ください。
目次
経営理念をつくる
生産以外に何があるんだ?
と思いますよね。
営業とか販促をやって販売まで手がけるのが農家だ、といったいつもの話とはちょっと違います。
農家は食べ物を育てていて、それを消費者に届けている。
それは間違いありません。
でも、他に届けているものはないのかを考えてみてください。
商品を売りさえすればそれでいいのか?という話です。
このことについては、例を上げたほうが分かりやすいと思います。
経営理念
という言葉をご存知でしょうか。
企業理念、経営哲学、クレドなど
いろんな呼び方がされますが、すこしずつ意味が違うとはいえおおざっぱに言えば
経営理念
とまとめてしまっていいと思います。
たとえば、トヨタ自動車の経営理念は
- 内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす
- 各国、各地域の文化、慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会の発展に貢献する
- クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む
- 様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する
- 労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる
- グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長をめざす
- 開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄を実現する
ディズニーランドを運営するオリエンタルランドの経営理念は
企業使命、経営姿勢、行動指針の3つに分かれていますが、
そのうちの企業使命をご紹介すると
自由でみずみずしい発想を原動力に
すばらしい夢と感動
ひととしての喜び
そしてやすらぎを提供します。
となっています。
ユニクロ(ファーストリテイリング)の経営理念もいくつかに分かれていますが、もっとも重要な位置づけであるステートメントでは
服を変え、常識を変え、世界を変えていく
となっています。
どれもモノを売る、サービスを提供する、といった狭い目線で理念を掲げていないことがわかります。
生産農家がもし、
美味しいものを届ける
という経営理念を掲げて活動していれば、その農家は味を追求していくしか進むべき道がないことになってしまいます。
でも、ここで経営理念を
食べる人の笑顔を引き出す
としていたらどうでしょうか。
笑顔を引き出すためなら、美味しいものを育てていくことはもちろん、パッケージで喜んでもらったり、見た目の変わった品種を採用してみたり、さまざまな取り組みをしていくことができます。
経営の幅が広がります。
経営理念は、自分は農家として何のために存在するのか、経営をどういう目的で、どのような形で行っていくのか、を示したものです。
その経営理念に沿って進めていけば、いろんなことができるようになります。
それは必ずしも収入には直結しないかもしれません。
選択肢の幅が増えてもうれしくない方もいらっしゃるかもしれません。
でも。
少なくとも農家はただ生産だけやっていればいいんだ、という狭い視野で活動することはなくなります。
自然と顧客のほうに目が向きます。
つくることしか考えてないより、結果的には顧客満足度は高くなることはお分かり頂けるでしょうか。
もしかしたら、農作物以外の商品を扱うことになるかもしれないし、商品への新しい付加価値を発見して単価が上がるかもしれない。
時代の変化に大きく左右されず、ぶれない安定を手に入れられるかもしれません。
農家=栽培といった枠から外れるためにも、ぜひ経営理念を決めてみることをお勧めします。
ちなみに。
具体的な経営理念の作り方については、インターネットで検索すればいくらでも出てきますし、書籍を探しても容易に見つかるでしょう。
小さな農家だからこそ経営理念を作る
小さな農家は、自分がたくさんの魅力を持っていることに気づいていません。
その魅力を掘り出して、磨いて、世のなかに提供していくと、顧客はたいてい喜ぶのに、農家自身がそれに気付いてないから生産だけに終始してしまっています。
非常にもったいない。
というか、生産という武器だけでは小さな農家は長く生き残っていくことができません。
小さな農家だからこその魅力を発信して、それを認めてもらうこと。
難しそうに思われるかもしれませんが、じつはそんなに難しい話ではありません。
これはちょっと考えてみればすぐに分かります。
たとえば観光農園。
その農園は農産物だけを売っているわけではありませんよね?
観光農園は、商品のほかに収穫の喜びや楽しい時間・空間を提供しています。
自分が作物を育てているところへ、お客様を呼び込んで、生産者を知ってもらいつつ栽培の様子や実際に果実が成っているところを見てもらって、それを実際に収穫してもらう。
新鮮な状態で食べてもらうのでもちろん美味しいし、収穫する楽しさを感じてもらえます。
これは間違いなく食べ物としての農産物の価値以上のものを提供していると言えるでしょう。
また別の例でいえば無農薬栽培農家。
その農家が育てた農産物を欲しがる人たちは、もちろん無農薬で育てられたものを望んでいます。
でも、それ以上にどんな生産者なのか生い立ちや性格、こだわりなどを知りたいと思っています。
多くの情報を受け取って、安心したいと思っています。
そこへ、顧客が欲しがっている情報を、望んでいる形で提供すれば、食べ物の価値以上のプラスアルファをお届けすることができます。
このようなことは、大規模農家ではなかなか難しいです。
とにかく効率的に生産を追求し、大量生産することで経営を回していく大規模農家は、付加価値がどうのこうのよりもとにかく商品そのものの品質・収量を高めるほうが手っ取り早いからです。
でも小さな農家は違います。
大規模農家と同じようなことをやっていたら、価格競争で確実に負けてしまいます。
生産力、価格といった土俵に立つのではなく、商品についてまわるたくさんの価値を掘り起こして、それをうまく利用する。
顧客を絞り込み、付加価値を創造し、自分だけの土俵で戦っていく、いわゆる差別化戦略をとっていく必要があります。
だからこそ、生産だけに目を向けるのではなく、もっと大きな視点で農家というポジションを見ていくんです。
そのための方法のひとつが、経営理念を作るということです。
自分は農家として、商品以外のなにが求められているのか。
なにが提供できるのか。
それを経営理念という形に落とし込んでみることをお勧めします。
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・